鷲林寺地区のお月見

お月見の夜、鷲林寺地区の子供たちは手にビニール袋をもって数十件の家を順番にまわります。各家庭では人数分のお菓子を用意して待っています。数十件の家をまわり終えた子供たちのビニール袋はお菓子で一杯になります。子供たちの一年に一度の楽しみでもあります。
鷲林寺地区ではこのようなほほえましい光景がむかしから見られました。しかし、むかしは少し様子がちがったようです。子供たちは手に袋は持っていますが、堂々と家をまわるのではなく、垣根のかげなどにかくれて家の中の様子をうかがうのです。家の人が中に入ったすきを見て、お月さまにお供えしてある団子を盗むのです。そしてその団子を袋の中に入れて次の家にすすみます。そりゃ、泥棒やがな・・・??
これはむかしの鷲林寺地区の伝統行事でありました。むかしの子供たちは楽しみがあまりなかったというところから月見の夜は団子を盗んでもよいということになったようです。もちろん、家の人に見つかれば当然叱られます。子供たちはかくれながら団子をねらうのです。家の大人たちも子供たちの様子を見計らいながらわざと家の中に入って身をかくしたり、ときには大声で怒鳴ったり・・・子供たちは真剣に泥棒に励むのです。一年に一度の公式の「泥棒ごっこ」なのです。
それが、かたちをかえて今のようなものになりました。泥棒は当然いけないことですが、ひとつのほほえましい風物詩であったのです。

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