白木の位牌と塗りの位牌(しらきのいはい と ぬりのいはい)
人が亡くなれば白木の位牌に戒名を墨で書きます。この白木の位牌は、49日間仏壇の中にはいれず外の祭壇でおまつりします。そして、満中陰(まんちゅういん)をむかえると黒色や金色の塗りの位牌を用意します。満中陰から以降は塗りの位牌を仏壇でおまつりいたします。
白木の位牌から塗りの位牌にかえるという風習は近年にはじまったことと思いますが、ひとつの解釈の仕方に次のようなものがあります。
私たちお坊さんも最初から法衣(ほうい)がつけれたわけではありません。お坊さんになる第一歩として得度(とくど)という儀式があります。お坊さんになるためこれから修行をしますと仏さまに誓いをする儀式ですが、その時はお坊さんが衣の下に着ている白い着物(白衣
はくえ)のままで儀式を受けるのです。最初から黒や色のついた衣が着れたわけではないのです。それと同じで、仏さまの世界にいくにも最初は白衣を着て修行をするという意味で白木の位牌なのです。
そして、満中陰をむかえ一人前の仏さまの位(くらい)になって衣が授かる、すなわち塗りの位牌に変わるという意味があります。
ちなみに、白木の位牌に戒名を書く場合、戒名の一番下(居士・大姉・信士・信女など)の文字の下に位(くらい)という文字を付けなければなりませんが、あえて付けません。塗りの位牌に変わるときにはじめて付け加えます。これは、満中陰までは修行期間ですから、まだその位にはいたっておられない。修行が満ちましたときにはじめてその位にいたられるので塗りの位牌に変わるときに位という一字を付け加えるという説があります。