本尊

真言宗の本尊は、大日如来(だいにちにょらい)といいます。万物を生み出す宇宙生命の本体を霊格とした仏さまです。この大日如来は、仏教の教主である釈迦如来が、無上のさとりを成しとげられたところの法身仏(ほっしんぶつ)であります。世の中の暗(やみ)を取り除く光明には、陰(かげ)と日向(ひなた)とがなく、永遠に消滅したり変化したりすることがありません。遍く世界を照らし、すべての生物に熱を与えて発育させ、あらゆる作業を成就させる霊徳があります。
この大日如来の徳を私たちにわかりやすく図絵であらわしたものが両部の曼荼羅(りょうぶのまんだら)です。曼荼羅というのは、「宇宙の本質が欠けることなく、円満に具備されている」という意味です。曼荼羅には金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)と胎蔵法曼荼羅(たいぞうほうまんだら)があります。

金剛界曼荼羅
智(ち)の曼荼羅であり、金剛(ダイヤモンド)のように堅固(かたい)な心を持った仏さまの集まりです。
胎蔵法曼荼羅
理(り)の曼荼羅であり、蓮華(れんげ)のように清浄な心を持った仏さまの集まりです。

大日如来は、この理と智との二つの徳を具備されています。この両部の曼荼羅の中には如来、菩薩、明王などのたくさんの仏さまがおられます。それで真言宗の寺院や在家のお仏壇には、薬師如来(やくしにょらい)や阿弥陀如来(あみだにょらい)、観世音菩薩や地蔵菩薩など、いろいろな仏さまがおまつりされいるのです。しかし、どの仏さまも大日如来と同体であります。大日如来が変化(へんげ)されたお姿であるのです。
例えば病気の人には薬壺を持った薬師如来に、迷っている人には剣と綱を持った不動明王に、それぞれのニーズに応えて、大日如来が変化されるのです。

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