立教開宗

真言密教は、インドにおいて大変栄えました。また、ネパールやチベット方面にも広く流行し、中国においても一時は全盛をきわめました。しかし、これらの国々では独立した一宗として認められませんでした。
弘法大師が第八祖目の祖師となり、日本に帰られてからのことです。弘法大師は釈迦如来がお説きになった教えを顕教(けんぎょう)と位置付け、大日如来のお説きになった教えを密教(みっきょう)として、その区別をハッキリと定められました。それから、人間の宗教心が進歩向上していく過程を大日経の節にもとづいて十の段階に分類し、その最高位にある即身成仏(そくしんじょうぶつ)の法が真実の教えであると主張されました。これにより、大同2年に朝廷より立教開宗の勅許を得られたのです。それから千年以上経過した現在に至っております。
真言宗という宗名の拠りどころは、大日如来がお説きになった「分別聖位経(ふんべつしょういきょう)」の中に、真言陀羅尼宗(しんごんだらにしゅう)と単語があるのからとって宗名とされたものです。宗という字は旨(むね)、または源(みなもと)という意味ですから、真言陀羅尼経をよりどころとし、それを本源としているのです。
その真言は、大日如来がお説きになったお言葉であり、誤りも偽りもない真実の教えなのです。また、陀羅尼は総持(そうじ)ということで、あらゆる善根功徳が含まれているのであるから、それには不思議な神秘力がこもっています。よって、心でそれを観じ、口でそれを称えると、こころがはればれとして世の中が明るくなり、生活環境が清められてきます。その一字一字に、千も万もの道理がこもっておりますので、この身このまま仏になれると弘法大師はお示し下さいました。

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