人 間
わたしたちが通常「人間」ということばを使うときは、「ひと」「人類」を意味して「人間」という。しかし、文字そのものから考えれば「人の間」と書くから「人の住むところ」「世の中」をさす。
仏教経典で「人間」と漢訳された原語は「マヌシヤ・ローカ」ということばである。「マヌシヤ」は「ひと」、「ローカ」は「世界」であるから「人間の世界」という意味になる。
西洋思想において「人間」は、自然と対立するものとしてとらえられたり、神に従属するものとして把握されたりした。しかし、インド思想においての「人間」は、神や自然や動物などと対立的なものとしてとらえられなかった。神々は人間よりもすぐれた存在とはされたものの人間を超越するものではなかった。
仏教思想も、このようなインド思想一般のながれにあり、「人間」は自分の業(ごう)によって、神にも動物にも虫けらにも生まれ変わるというように考えられた。
このような思想のもとに「人間」は「人間」であるために善行を積まなければならないという思想が生れたのである。
日本人の思惟は、仏教思想の大きな影響をうけ、「人間」は、自然や動物と調和しながら、その歩みを続けてきたのである。しかし、残念なことに現在は、大気を汚染し、山を崩し海を埋め立てて自然を我がもの顔で破壊している。このまますすめば「人間」自体の壊滅を招くことにならざるを得ない。
今一度、「人間」とは何かということを根本的に見つめなおさなければならない。


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