その15  まゆ毛



ある日、人間の顔のなかで会議が開かれました。会議に参加したものは目、鼻、口、耳、髪の毛、まつ毛、まゆ毛でした。きょうの議題は、自分達の役割についてでした。お互いに自分が顔の中でどのような役割をしているかを確認するという内容でした。
そんな中で寂しそうに小さな声で発言したものがありました。まゆ毛です。
「皆さんはいいよね・・・目さんはものを見る役割。鼻さんは臭いをかぐ役割。口さんはものを食べ、そして話をする役割。耳さんは音を聞く役割。髪の毛さんは頭を守る役割。まつ毛さんは目にゴミが入るのを防ぐ役割。それぞれ大きな役割をもっているのに、わたしは何もありません・・・」
その話を聞いて全員腕を組んで黙り込んでしまいました。
「ウーン・・・」
しばらく沈黙が続きました。しばらくして目が大きな声で笑い出しました。
「ハッハッハッ・・・いやいや失礼。確かにわたしの中にゴミが入るのを防いでくれているのはまつ毛さんだ。別にまゆ毛さんがなくてもゴミは入らないよ。だけど、まゆ毛のない顔を想像してごらん。おかしくてふきだしてしまうよ。見るとか聞くとか、そういった役割ではなく、まゆ毛さんは全体のバランスをとる役割をしているんだよ。だから大切な役割を持っているんだよ」
笑い話ですが、この世の中に不必要のものはないというお話です。すべてのものが必要あって存在し、生きているのです。人間も男性・女性があって若者・年寄りがあるのです。それぞれの役割があって生かされているのです。不必要なものはひとつもありません。

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