その14 母というもの


「お父さんとお母さん、どっちが好き??」
こんな質問を小さな子供にすると大抵の子供は
「お母さん」
と答えます。お父さんよりもお母さんの方が接している時間が多いから仕方ありませんね。しかし、逆に嫌いな分も多く持っています。お父さんは笑ってすみますがお母さんはすぐに泣きます。うれしくても悲しくてもすぐに泣きます。平均して男性は女性に比べてあっさりしているといわれます。お父さんが子供を叱るとき、大声で
「バカモノ!!」
とひと言いえばそれで終わりですが、お母さんは結構ながく文句を言います。ある人は子供のあとついて文句を言います。しかし、母親はありがたいものです。
大学1回生のとき、大病をわずらい三ヶ月ほど入院しました。生命に危険のある大病でした。大学が高野山大学だったので、かつぎこまれた病院は高野山から比較的近い和歌山市内の病院でした。すぐに両親が駆けつけてくれましたが、長い間意識不明が続き本当に心配をかけました。
父は仕事があるので原則的に母が付き添いをしてくれました。意識が回復しない息子の顔をながめながら
「なんでこの子だけがこんなことになったんやろ・・・」
と何度も思ったと聞かされました。週に一度、父が休みのとき母と交代してくれ、母は実家に戻ります。実家は兵庫県西宮市にあり、和歌山市の病院から電車を乗り継いで帰るのです。充分な睡眠もとれず、ろくろく風呂にも入れず、看病で疲れきった体を電車の座席にうずめると、自分の前には楽しそうに話をしている学生さんがおられたそうです。年恰好は息子と同じくらい。なんであの子だけが・・・そう思うと涙が出てきて、電車の中で何度も泣いたことか・・・今から思うと、まわりの人が不思議がっていたと思うわ・・・と聞かされました。
母が子を思う気持ちは、子が母を思う気持ちの数十倍とも数百倍とも数千倍ともいわれます。そんな母の言葉を思い出すと、本当にありがたいと思うのです。

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