葬儀・法事のあれこれ
法事編

仏教に説く追善供養の意味
日本の神道での「死」に対する考え方(亡くなれば汚れた世界にいき、神格化されるまでにかなり永い時間を要する)に対して、仏教では死後の霊は、ある手立てをほどこせば浄土に向かうことができると教えました。この教えによって、それまでの日本的な発想は逆転してしまったのです。亡くなれば汚れた世界に落ちるのではなく、逆にもっと望ましい世界に成仏するのだと・・・
亡くなればどうなるのかという考え方には2通りあります。1つは仏さまになって私たちを守っていただく位に至られるという見方です。もう1つは、成仏できずに迷って、私たちに障害をあたえる魔性のものになっているという見方です。病気や災難が起これば、そのものたちの仕業ではないかとの発想がそういう見方です。
しかし、実際にご先祖が成仏して仏さまの世界で楽しく暮らしておられるのかどうかは私たちにはわかりません。成仏してよい世界にいってほしい・・・そういう願いがいろいろな追善供養という形としてあらわれたものなのです。

追善供養は故人のためだけではなく生きているもののためにある
古来より "七分獲一" という言葉があります。これは亡くなった人に対して生きているものが一生懸命に供養をしても、その功徳(くどく)というものは亡くなった人には七分の一しか届かないといわれます。残りの七分の六はどこにいくのかといいますと、生きている私たち、供養をした私たちにかえってくるという意味です。
亡くなってから人に功徳を届けようとしてもたいへん難しいもので、むしろ生きている間に善いことをして功徳を積むことが大切であるということなのです。
追善供養をするということは、亡くなった先祖の供養をするということであるとともに、生きているものに対して功徳がかえってきているということなのです。ご先祖は亡くなったあと、残された私たちを見守り、力を貸してくれるものなのです。


最大の供養とは

供養とは、もともと困っている人に対して物質を供給するという意味で、それが年忌の法事の一つとして行うものです。お参りの人々に食事を差し上げたり、お坊さんにお経を拝んでもらったり、そういうことを自分が主催しておこなうことによって、施主(せしゅ)自身の中に仏さまの心が育まれて、一段一段と成長して一段一段と成長していくのです。自分がそういった内面的に成長することが功徳となり、その功徳が大きなお供えとなってご先祖がその姿を見て喜ばれるのです。これが大切であると仏教では説いています。
また、法事に参加した人たちも、そういった施主の姿・心にふれて、お互いに成長していくことができるのです。目には見えないことですが、大きな供養になるのです。
法事でどれだけの食事を出したとか、どれだけのお供えをしたとか、あの家に勝った、負けたという考え方ではかえってマイナスになります。もちろん、自分にできる範囲のことはしなければなりませんが、形よりも大切なものは心なのです。

法事の日を早めるのはいいの?二霊以上の法事はいいの?
法事は命日よりも早めてもよいが遅れてはいけないとよくいいます。これは、法事をする意味に次の仏さまの世界にいくために関所を通過するわけですから、法事を遅らせるとそこでの通過も遅れるということになるからです。
逆に早めるということについても、極端に早めるのもどんなものかと思います。理想は命日の一日前がよいと思いますが、昨今では生きているものの都合にあわせますから日曜・祭日に法事を行われる家が増えてきました。そういった事情を考慮すれば一〜二週間程度早めるというのも差し支えないことでしょう。
法事の折に命日の近いご先祖が二人以上重なったときは、命日の早いご先祖に合わせます。しかし、一年先・ニ年先に法事があたるご先祖も一緒に・・・というのは考えものですが・・・


法事の粗供養・お供え
粗供養としてお参りいただいた方に持って帰っていただきますが、あとあと利用してもらえるもの、故人が偲ばれる品物を選びます。
法事に招かれた側もお供えを持っていきますが、地方によってはそのお供え物をお参りの人数分に分けておさがりとするところがありますから、分けられるものが好まれるようです。また、昨今ではお金をお供えとして包むことが多いようです。


お坊さんのわからないお経・・・
法事でお坊さんのわからないお経をじーっと聞いているのも楽ではないと思います。足はしびれてくるし、何を言っているのかわからないし・・・実際わたしがお坊さんではなく一般在家のもので法事に招かれ、そんな状態で1時間なり座らされたら嫌だと思います・・・普段聞くことのないお経を聞けると楽しみにされている人も中にはおられるかもしれませんが・・・
せっかく仏事にふれるチャンスですから、お坊さんも、お参りの方もお互いにこのチャンスを生かす努力が必要と思います。たとえば、お坊さんの方は簡単なお経を、お参りの方と一緒に読めるようにするとか、お参りの人もこの機会に普段考えない仏教のことを考えるとか・・・せっかくの機会ですから、有意義な時間を過ごしたいものです。


焼香の仕方
焼香の仕方については先の章でふれましたので参考にしてください。

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