彼 岸(ひがん)
太陽は東から昇り西に沈みます。昼と夜の長さが一定となる日を仏教では彼岸の中日(ひがんのちゅうにち)といいます。日本では春と秋に二回あり、これらを春分の日・秋分の日とよんでおります。この中日をはさんで前後3日間、合計7日間を彼岸(ひがん)といいます。
彼岸、すなわち｢かの岸｣に対して｢この岸｣のことを此岸(しがん)といいます。迷いの現世を出発して､完成の未来に向けてすすむ、その出発点を此岸というのに対して、その目的地を彼岸というのです。すなわち､此岸とは私たちのこの現世であり、彼岸とは仏さまのあの世という意味です。
此岸から彼岸にいくとき、すなわち亡くなったとき、できるだけ楽に、できるだけ速やかにいきたいのが誰しもの願いです。そのために、この彼岸の間に普段からできない清らかな気持ちになって修行をして､私たちの普段の生活を振り返り反省しましょうという期間が春と秋に1週間ずつあるのです。これが彼岸の意義なのです。
亡くなったご先祖中心の行事がお盆の行事であるならば､生きている私たち中心の行事が彼岸であるともいえると思います。
一週間をどのように過ごすのかという方法に六波羅蜜(ろくはらみつ)の教えがあります。
六波羅蜜(ろくはらみつ)
①布施(ふせ)
与えること。それには財施ざいせ(衣服などを施すこと)法施ほっせ(真理を教えること)無畏施むいせ(恐怖を除き､安心を与えること)の三種類があります。お坊さんにわたすお布施はここからきております。
②持戒(じかい)
戒律(かいりつ)を守ること。
③忍辱(にんにく)
苦難に耐えしのぶこと。
④精進(しょうじん)
真実の道をそれることなく実践すること。
⑤禅定(ぜんじょう)
精神を統一し、安定させること。
⑥智慧(ちえ)
真実の智慧を得ること。
以上、六つの教えを守りながら一週間を過ごしましょうという期間が彼岸なのです。
これらを行動にあらわしたひとつが、ご先祖を敬う、大切にするということで｢彼岸にはお墓参りにいく｣という習慣があるのです。