業(ごう)
業ということばはあまりよいイメージを持っていない。「業が深い」「自業自得」など、悪い意味で使われている。業とはサンスクリット語のカルマンで、単に「行為」という意味である。古代インドでは、人間が良いことをすれば、現世や来世で良いことが起き、悪いことをすれば悪いことが起ると信じられていた。そして、現世における幸福や不幸は前世における善行や悪行に左右されていると考えられた。
良い行いをすれば来世は良いことがあるということで、この業思想は人間に道徳的な行為を勧める役割を果たすことになる。しかし一方では、人間の運命は前世の行為の善悪によって決定されるのならば、いくら努力しても報われないという消極的な宿命論に発展していくのである。
このように、インド文化一般では業思想は多大な影響を及ぼしつづけた。そして、積極的な一面と消極的な一面が相反する性格をあわせ持ち、その思想は仏教にも取り入れられるようになっていくのである。


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