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Case 宅建建託は、宝パレス42号室を非業者の不動氏 に売却する際に、 不動氏から代金額の5割に相当する手付金*を受け取った。
また、同パレス96号室 を業者の剛田氏 に売却する際にも、剛田氏から代金額の5割に相当する手付金を受け取った。
代金額の5割も手付をとってしまうのは、法に違反しないのだろうか。
| * |
手付 契約締結の際、契約をした証拠として買主から交付される金銭等。手付授受の際合意した手付の効力についての契約を、手付契約という。 |
|

一般消費者が買主のときは、売主業者に特別な制限
業者が売主で、業者以外の一般消費者が買主のときは、売主業者に比べ、経験も情報も不足する買主を保護するため、売主業者に8種類の特別の規制をかける。
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業者が売主でも、買主も業者という場合は、力関係は対等なので、特に規制はかけない。 |

6-1 業者が売主の場合の8種類の規制の概略-イメージをつかんでおこう
| ① |
自己所有に属しない物件の売却制限
業者は、自分のものでない物件を、原則として、売ってはならない。
|
| ② |
クーリング・オフ
落ち着いて考えられない場所でした買受の申し込みや契約は、買主の頭が冷えたら(クーリング)やめられる(オフ)。 |
| ③ |
損害賠償額の予定等の制限
契約違反で契約をやめにする場合の損害賠償額と罰金についての特約は、合計して代金額の2割を超えては定められない。 |
| ④ |
手付の額等の制限
手付は、すべて解約手付の効力*を与える。その手付は代金額の2割を超えては受け取れない。
*解約手付の効力=手付だけの損を覚悟すれば契約をやめられる。 |
| ⑤ |
瑕疵担保責任の特約制限
欠陥物件について負う売主の品質保証責任は、責任追及期間を除き、民法の定めより買主に不利にしてはならない。 |
| ⑥ |
手付金等保全措置
引渡し前に一定を超える代金充当金を受け取ろうとするなら、その前に受け取る代金充当金を保全する措置を講じなければならない。 |
| ⑦⑧ |
割賦販売規制(解除等の制限・所有権留保等の禁止)
割賦販売(1年以上の期間にわたる分割払いの売買)では、賦払い金(一回あたりの支払い金)の支払いが遅れても、書面で催告(催促)して30日以上支払いがなかった場合でなければ契約を解除(やめる)できない。
また、代金額3割超の額を受ける前に登記は移さなければならない。 |
|
暗記お経 業者自ら売主規制は、項目をおぼえておくとよい。
①自己所有に属しない、②事務所等*を、③予定して、④手付を打ったが、⑤瑕疵があり、⑥ぼーぜん(保全)自失で、 ⑦⑧カップ(割賦)を落とした。
| * |
事務所等はクーリング・オフをあらわす(事務所等で契約した場合はクーリング・オフできない)。
|

Caseの答 業者が売主で買主が非業者のときは、手付は代金額の2割を超えてはならない(④の制限)。買主が業者のときは、この制限はない。

非業者不動氏から代金額5割の手付を受け取るのは違反だが、 業者剛田氏から代金額5割の手付を受け取るのは違反でない。
|
それでは、業者自ら売主規制を一つ一つ見ていこう。
Ⅰ自己所有に属しない物件の売買契約締結の制限
Case 「社長、宝パレス42号室を、不動氏 が買いたいと言っています。」
「宝パレス42号室は、館さん 所有の物件なので、我が社が売るわけにはいかないじゃないか。」
「館さんとは交渉中で、来週にでも館さんから我社に売ってもらえる見込みなんですよ。」
「そういう見込みなら問題なかろう。不動氏と明日にでも契約しよう。」
本当に問題ないのか。 |

自己所有に属しない物件とは、下記の①②である。
|
|
*未完成物件:宅地造成工事又は建築工事が未完成で、完成物件が存在しない状態 |

いずれも適法に売れる。他人所有物件なら、その他人から物件を買ってきて、買主に引き渡せば、何ら問題ないからだ。また、未完成物件なら工事を完成させて、買主に引き渡せば、何ら問題ないからだ。
しかし、他人所有物件で、現所有者が売ってくれなければ、売主は物件を取得できない。また、未完成物件では、工事をしている業者が倒産でもしてしまうと、工事を完成させられない。いずれの場合も、買主に物件を引き渡すことができなくなる。
このように、自己所有に属しない物件は、結局買主に引き渡せないこともある危険な物件 なのだ。

そこで、経験も情報も乏しい一般消費者を危険な目にあわせてはかわいそうなので、一般消費者が買主の場合は、原則的には、売ることを禁止した。禁止される契約には、予約*も含む。 ただし、例外的に売ってもよいこととした。
*
|
予約とは、予約者が、一方的に「本契約を成立させる」と意思表示すれば本契約が成立する契約をいう。したがって、予約をしたということは本契約をしたのとそう変わらない。 |
6-2 自分のものでない物件の売却制限(33条の2)
原
則 |
業者は、自己所有に属しない
物件は売れない(予約もダメ) |
例
外 |
① 他人所有物件 取得契約(予約はよいが、条件付きはダメ)をしていれば売れる |
| ②未完成物件(工事完了前の物件) 手付金等保全措置を講じてあれば売れる |
違反に罰則はないが、監督処分の業務停止処分を受けることがある。
本規制は、業者間取引には、適用されない。 |
例外①のせつめい
他人所有物件は、業者が、その他人から物件を取得する契約をしていれば、売ることができる。取得する契約をした以上、その物件を売主が取得し、買主に権利を移転できるからだ。
取得契約は、予約でもよい。また、代金を支払ったとか引渡しや登記を受けたということまでは必要ない。取得契約をしてさえすればよい。
ただし、取得契約が停止条件付*の場合は、取得できるかどうかがはっきりしないので、その物件の売却は、なお禁止される。たとえば、「今場所白鵬が優勝したら、私の土地を売ろう。」と約束(契約)するのが、停止条件付売買だ。白鵬が、優勝するかどうかはわからないので、買主が権利を取得できるかどうかもわからない。取得契約は、不確かなものではダメなのだ。
*
|
条件とは、「今場所白鵬が優勝したら」のように将来発生するかどうかわからない事情をいう。その条件に契約の効力発生をかからせた場合を停止条件という。 |
例外②のせつめい
未完成物件は、手付金等保全措置*を講じてあれば売ることができる。
未完成の場合、まだ存在しない完成物件を買主に引渡すことはできない。そこで、少なくとも、引き渡せないときには、支払い済みの代金充当金を返還できる手付金等保全措置を講じた後ならば、売ってもよいこととした。
| * |
手付金等保全措置 売主業者が倒産でもして物件の引き渡しができなくなったときに、すでに受け取った代金充当金を保全して、買主に返せるようにしておく措置(6-9)。 |

Caseの答 宝パレス42号室は、まだ館氏所有の物件で宅建建託のものではない。いくら、館氏から購入できる見込みであるからといって、館氏との購入契約をする前に不動氏に売ってしまうことは違反 となる。 |
Ⅱ クーリング・オフ-法37条の2による申込みの撤回又は契約の解除
Case 「社長、宝パレス42号室の購入契約をされた不動氏ですが、やはり墓地を見下ろす景観 が気になるので、クーーリング・オフしたいと言っているようです。」
「不動氏との契約は、申込みが、我社と知り合いの業者館氏の事務所で行われ、契約の締結は、不動氏のご自宅で行われたな。これはクーリング・オフできないのではないか。どうかね、大地君。」
うーん、どうだろうか。 |

1 落ち着いて考えられない場所では、ク・オフできる
業者と話をした場所が、訪問販売を受けた自宅や喫茶店では、こちらに十分な心構えができておらず、つい、うっかり買い受けの申込みや契約の締結をしてしまうことがある。しかし、不動産のような大きな買い物で、一般消費者が、軽率な申込み等に拘束されてはかわいそうだ。そこで

6-3 クーリング・オフ (37条の2)
| 業者自ら売主となる宅地・建物の売買契約で、落ち着いて考えられない場所で、業者以外の者が買受け申込みや売買契約を締結した場合には、一定期間内に、無条件で、申込みの撤回*又は契約の解除※ができる。 |
*撤回 なかったことにすること
※契約の解除 契約をやめにすること
つまり
落ち着いて考えられない場所で、買受け申込みや契約締結をしてしまった場合は、頭を冷やして(クーリング)申し込みの撤回(オフ)又は契約解除をできるようにした。
では、落ち着いて考えられる場所と落ち着いて考えられない場所とは、どんな場所だろう 。

2 ク・オフできない場所とできる場所
6-4 クーリング・オフできない場所とできる場所(37条の2)
Ⅰクーリング・オフできない場所=事務所等
| 1 |
事務所☆ |
正常な業務場所 |
落ち着いて考えられた

クオフ
できない |
| 2 |
契約行為*をする案内所等※☆ |
| 3 |
申込者・買主が、説明を受ける旨を申し出た
場合の自宅又は勤務先 |
いわば申込者等の
ホームグラウンド |
| * |
契約行為=宅地建物取引にかかる契約〔予約を含む〕をし、又は、契約申込みを受ける。 |
| ※ |
案内所等=継続的業務施設、分譲の案内所・分譲の代理・媒介の案内所、催し実施場所。ただし、土地に定着した建物内に設置されたものに限る
⇒ |
モデルルームはクオフできない が、
テント張り案内所はクオフできる  |
|
|
| ☆ |
事務所・契約行為をする案内所等は、売主業者のもののほか売主業者から代理・媒介の依頼を受けた他の業者のものも含む。
ただし、Caseのように単に 知り合いの業者の事務所等であるという場合は、含まない。 |
 |
自宅・勤務先は、申込者等から説明を受ける旨申し出た場合のみ、クオフできない場所となる。 |
Ⅱクーリング・オフできる場所1~3以外の場所=事務所等以外
⇒落ち着いて考えられない⇒クオフできる |
本規制は、業者間取引には、適用されない。 |
1・2のこころ
事務所、契約行為をする案内所等は、正常な業務場所なので、落ち着いて考えられる。
また、申込み者等が説明を受ける旨申し出た自宅又は勤務先は、いわば自分のホームグラウンドなので、落ち着いて考えられる。よって、これらの場所でした申込み等はクーリング・オフできない。
これに対して事務所等以外の場所は、落ち着いて考えられないおそれがある。よって、事務所等以外の場所での申込み等は、クーリング・オフできる。

申込み場所と契約締結場所が異なる場合は、どうなるのかしら。
申込み場所と契約締結場所が異なる場合は、申込みが決定的に重要なので*、
申込み場所を基準にクーリング・オフできるかどうかを決める。
| * |
申込みがあれば、業者の承諾により契約は成立してしまうので、申し込みが決定的に重要なのである。 |

たとえば、
キャバレーで申込み⇒事務所で契約 ⇒クオフできる
事務所で申込み⇒キャバレーで契約 ⇒クオフできない |

Caseの答 Caseは、申込み場所と契約締結の場所が異なるが、この場合は申し込み場所を基準にクオフできるかどうかを決める。
申込み場所は、売主業者の知り合いの事務所だが、事務所は売主業者のものか、売主業者から代理・媒介の依頼を受けた業者のものなら正常な業務場所と言えるが、単に売主業者の知り合いの事務所というだけでは正常な業務場所とは言えない。よって、Caseの不動氏は、クーリング・オフできる。 |
3 クーリング・オフできなくなる場合
クーリング・オフできる場所でした買受け申込み等も、次のいずれかの事由があるとクーリング・オフできなくなる。

6-5 クーリング・オフできなくなる場合 (37条の2)
| ① |
業者が買主に、<クーリング・オフできる旨とその方法>を書面で告知した場合は、告知日から起算して8日経過したとき  |
たとえば 告知日月曜(1日)の場合、 |
月
1 |
火
2 |
水
3 |
木
4 |
金
5 |
土
6 |
日
7 |
月
8 |
火
9 |
水
10 |
|
翌週月曜(8日)までなら クオフできる。
火曜(9日)はできない。 |
| ② |
買主が、物件の引渡しを受け、代金の全額を支払ったとき |
|
①のこころ 8日の間には必ず休日が入り、冷静に考えられたはず。
②のこころ 引渡しを受け、自分の方からも代金全額を払ったということは、冷静に考えたうえでのはず。 |

4 クーリング・オフの方法と効力
クーリング・オフの方法と効力は、次のとおりだ。
6-6 クーリング・オフの方法と効力
1
|
クーリング・オフは書面で行わなければならない。
|
| 2 |
申込み者等が、その書面を発したとき
に、クーリング・オフの効力が生じる。 |
| 3 |
業者は、クオフされたことによって、損害賠償や違約金の請求はできない。
すでに手付金等を受け取っていた場合、速やかに返還しなければならない。
以上の規定に反する特約で、申込者等に不利なものは無効とする。 |
|
1のこころ
書面で行うのは、証拠として残すため。
書面発信で効力を発生させるのは、業者がクオフ通知を受け取ったにもかかわらず、「そんなの知らないよ」などととぼけても、通知発信を内容証明郵便で証明し、速やかに紛争の決着をつけられるようにするため。
3のたとえば
書面告知後5日以内ならクオフできる、という特約は、書面告知後8日以内ならクオフできる、という法の定めより買主に不利なので無効である。無効の場合は、法の定めどおり、 書面告知後8日以内ならクオフできることになる。
書面告知後10日以内ならクオフできる、という特約は、法の定めより買主に有利なので有効である。
|
Ⅲ 損害賠償額の予定等の制限
Case 宅建建託が売主として、業者でない買主不動氏と宅地 (価格5,000万円) の売買契約 を締結した際に、「契約違反で契約をやめにする場合の損害賠償額と罰金は、それぞれ1000万円とする。」と定めた。

この定めは、有効だろうか。
有効でないとしたらどういう効力があるだろう。 |

契約違反=債務不履行*をされたら、相手方は契約を解除し、そのことによって生じた損害の賠償を請求できる。 しかし、損害賠償を請求するためには、損害があったことと損害額を、損害賠償を請求する側で証明しなければならない。しかし、この証明はかなり面倒だ。
| * |
債務不履行の例 引き渡す約束をした宅地を引き渡さなかったり、
支払うと約束した代金を支払わなかったりなど。 |

そこで、損害賠償が問題になった場合はこの額で決着をつけようという特約をすることが多い。それが、Caseの《契約違反で契約をやめにする場合の損害賠償額についての特約》だ。法律条文の用語では《債務不履行解除に伴う損害賠償額の予定》※という。また、同時に、契約違反があった時に損害賠償とは別に罰金を取るという特約をすることもある。これが、Caseの《罰金についての特約》だ。法律条文では《違約金》という。
| ※ |
損害賠償額の予定 契約違反(債務不履行)の事実さえ証明すれば、損害があったことや損害額を証明しなくても、予定した額を損害賠償として請求できるという特約。権利5-5 |

しかし、どのような名目せよ、多額の金銭を一般消費者の買主から取るのは不当なので、これらについても制限を設けた。
6-7 損害賠償額の予定等の制限(38条)
業者自ら売主で、買主が業者以外の場合に、債務不履行解除に伴う損害賠償額の予定と違約金は、合算して代金額の10分の2を超えることとなる定めをしてはならない。
超えた場合は、超える部分は無効となる。 |
超えた場合は、全面的に無効ではなく、超える部分のみ無効となる。

Caseの答 Caseの約定は、損害賠償の予定額と違約金の額をそれぞれ1,000万円とするが、1000万円は代金額5000万円の2割であり、合計すると4割となる。そのうち2割を超える部分は無効となるので、損害賠償の予定額と違約金の額の合計が2割、1,000万円の約定としての効力があることになる。 |
Ⅳ 手付の額の制限等
Case 剛田氏は手付金30万円を支払って、宅建建託と墓地を見下ろす宝パレス42号室 の売買契約を締結した。ところが、 翌日、館不動産が売り出した海を見下ろすシーサイドパレス77号室 をすっかり気に入り、こちらに乗り換えたいと思っている。
剛田氏が、宅建建託との宝パレス42号室の契約をやめにするにはどうしたらよいのだろう。 |

契約は守らなければならない。契約をした以上、相手方が契約違反をしていないのに、契約を解除することはできないのが原則だ。
ただし、解除できる旨特約をしておけば解除できる。
解約手付はその特約の一つだ。
解約手付とは、《一定時点までは、手付だけの損を覚悟すれば、気が変わったというだけで契約を解除できる》特約だ。
民法では、契約締結の際に手付の授受があった場合、解約手付ではないという定めをしない限り、解約手付と扱う(権利5-13)。*

宅建業法では、それを一歩進め、業者自ら売主で買主が業者以外のときは、手付はすべて解約手付と扱うことにした。
また、手付として受け取れる額も代金額2割までとした。※
6-8 手付の額の制限等 (39条)
| 1 |
業者自ら売主で、買主が業者以外の場合に、売主業者が手付を受領したときは、すべて解約手付の効力*を与える。
| * |
解約手付の効力とは、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して(=あげてしまって)、売主はその2倍を返して、契約を解除できるというもの。
履行の着手の具体的な時点は、

 |
売主の履行の着手<物件の引渡しと登記の準備ができたことを買主に伝えた時点>⇒その時まで、買主は手付を放棄し契約を解除できる。
買主の履行の着手<手付以外に代金に充当する金銭を支払ったとき>⇒その時まで、売主は手付の2倍を返して契約を解除できる。
自分が履行に着手していても相手方が履行に着手していなければ、手付による解除はできる、ことに注意。
買主が手付放棄で契約を解除するときは、その旨意思表示するだけでよいが、売主が手付倍返しで契約を解除する場合は、その旨意思表示するだけでは足らず、手付の倍額の金銭を現実に提供しなければならない(判例)。 |
|
|
2
3 |
業者自ら売主で、買主が業者以外の場合に、代金額(消費税込)10分の2をこえる額の手付を受領することはできない。
1・2に反して、買主に不利な特約は、無効。 |
|
1は、つまり
手付を授受した以上、この手付は解約手付ではないと特約しても、解約手付の効力を与える。
そのこころ
一般消費者の買主が、手付だけの損を覚悟すれば、簡単に契約を解除できるようにする。
2のこころ
手付をたくさん取られてしまうと、手付による解除がしにくくなってしまう。
3のたとえば
<売主業者は、手付を返せば解除できる>という特約は、売主からの解除は手付倍返しが必要である解約手付より買主に不利だから無効。
<買主は手付の半額を放棄すれば解除できる>という特約は、買主からの解除は手付全額を放棄しなければならない解約手付より買主に有利だから有効である。
Caseの答 不動氏が宅建建託に支払った手付は、解約手付と扱われるので、契約を解除したい不動氏は、宅建建託が履行に着手する前に「手付は放棄するから、契約は解除する。」と宅建建託に意思表示をすればよい。
|
Ⅴ 手付金等の保全義務
Case 「さなえさん、OJT(職場内研修)だ。この間、不動氏から宝パレス42号室をご購入いただいたろう。その取引の流れは次のとおりだ。これについて、不動氏が心配ないように、適正な扱いをするためには、いつの時点で、何を対象に手付金等保全措置をとらなければならないかね。」 |
宝パレス42号室(未完成物件 価格5、000万円)
《取引の流れ》  |
申込み
▽
申込み証拠金50万円支払い |
 |
契約締結
▽
手付金200万円支払い、かつ
申込み証拠金 を代金充当扱い |
 |
宝パレス上棟式 ▽
中間金
2000万円支払い |
 |
引渡し・登記
▽
残代金(2750万円)支払い
|
|

業者が売主の不動産売買では、物件の引き渡し前に手付・中間金等代金に充当する金銭を支払わせることが多い。この場合、売主業者が倒産でもしてしまうと、物件の引き渡しどころか、すでに支払った代金充当金すら戻ってこなくなってしまう。

そこで、買主が非業者の場合には、売主業者が倒産等して買主が契約を解除したときに、すでに支払った代金充当金が、必ず戻ってくる措置(手付金等保全措置)を講じなければならないとした。
6-9 手付金等(代金充当金*)の保全措置(41条・41条の2)
1
2
|
未完成物件 引渡し前に、代金額5%、又は1000万円超の代金充当金*を受け取ろうとするなら、その前に保全措置※を講じなければならない。
完成物件 引渡し前に、代金額10%、又は1000万円超の代金充当金を受け取ろうとするなら、その前に保全措置※を講じなければならない。
*
※
|
保全措置の対象となる代金充当金とは、手付、内金、一時金等名目のいかんを問わない。契約締結前に受け取った申込み証拠金も、契約を締結し代金充当扱いにすれば保全措置の対象となる。
保全措置は、既に受け取った代金充当金と受け取ろうとする代金充当金の全額につき講じなければならない。
|
|
| 3 |
保全措置を講ずべきときに講じない場合には、買主は、手付金等を支払う約束をしていたときでも、支払わないことができる(41条4項等)。 |
|

Caseの答 代金額の5%=250万円は1000万円より低いので、250万円を超える代金充当金を受け取る前に、保全措置を講じなければならない。
契約締結時点では、代金充当扱いをした申込み証拠金と手付金200万円の合計が250万円で、ここまでは保全措置なしに受け取れる。しかし、これ以上受け取るには保全措置が必要で、従って、中間金を受け取る前に保全措置を講じなければならない。
保全措置の対象は、既に受け取った250万円と受け取ろうとする2000万円の合計2250万円だ。
なお、保全措置要否の基準となる代金額は、消費税込の額である。 |

保全措置とは、具体的には次の措置だ。
6-10 保全措置の方法-未完成物件では保管の方法は取れない(41条・41条の2)
保全措置には
| |
①銀行等による保証
②保険事業者による保険
③指定保管機関による保管 |
|
の方法がある。 |
完成物件では、どの方法も取れるが、未完成物件では、③指定保管機関による保管の方法は、とれない。 |
各方法の具体的内容
①銀行等による保証
業者が受領した手付金等を返さなければならなくなった場合に、銀行等にその債務を連帯して保証(権利Part8)してもらう方法。業者が、銀行等に保証委託契約をし、その契約に基づき銀行等が手付金等の連帯保証を約する書面を買主に交付する。
②保険事業者による保険
保険会社に、業者が受領した手付金等を返せなくなった場合に、買主に生じた損害を埋めてもらう方法。業者と保険事業者の間で保証保険契約を結び、かつ、保険証券を買主に交付する。
③指定保管機関による保管
売主業者に代わり、保管機関*が手付金等を預かり、業者が倒産等した場合には、保管機関が買主に返す方法。業者が指定保管機関と、業者に代わって手付金等を受領・保管してもらう契約(手付金等寄託契約)を結び、かつ、買主と、寄託金の返還を目的とする債権につき質権設定契約を結び、手付金等寄託契約と質権設定契約を証明した書面を買主に交付する。
* 保管機関には、宅地建物取引業保証協会などが指定されている。
未完成物件では保管の方法はとれない理由
未完成物件では手付金等を当てにして工事を完成させることもあるので、手付金等が引き渡しまで業者のもとに一度も渡らない③の方法は、未完成物件にはなじまない。

6-11 保全措置を講じておく期間(41条・41条の2)
| 保全措置は、買主が登記をするまで講じておかなければならない。保全措置を講じていた場合は、買主が登記をすれば、その保全措置を解除してもよい。 |
|
Ⅵ 瑕疵担保責任の特約制限
Case 「さなえさん、OJT(職場内研修)第2弾だ。宅建業法では、売主業者は買主が非業者の場合、瑕疵担保責任=欠陥物件の品質保証責任につき、責任追及期間を除き、民法の定めより買主に不利にしてはならない、としています。では、『瑕疵があっても、売主は修繕する義務はない。』と特約した場合ははどうなりますか。」 |

民法では、売買目的物に隠れた*瑕疵※があるとき、 その瑕疵を知りえなかった(善意・無過失)買主は、 瑕疵を発見してから1年以内に、
| |
① 損害賠償の請求ができ、
② 契約目的を達成できないときは契約を解除できる。
③ 売主は無過失でも責任を負う(無過失責任) |
|
旨を定めている。この責任を、売主の瑕疵担保責任※という。
*
|
隠れたとは、注意を払っても発見できなかった、ということだ。そして、法律用語で、注意を払っていたことを過失がない、また、知らないことを善意というので、隠れたとは、買主が瑕疵につき善意・無過失と言い換えられる。 |
| ※ |
瑕疵とは欠陥のこと。欠陥には、シロアリに食われていたとか手抜き工事だったとかの物理的欠陥のほか、道路予定地になっており宅地として使えないとか、事故物件(自殺者等が出た物件、当然安く評価される)であるという無形の欠陥も含む。 |
| ☆ |
担保責任とは品質保証責任という意味。 |
たとえば、売買目的物が手抜き工事で耐震強度が基準に満たない場合には、隠れた瑕疵といえるので、その欠陥を発見してから1年以内に、
①
②
③ |
欠陥により生じた損害=補強工事の費用相当額、の賠償=埋め合わせ、を請求できる。
住み続けられないような重大な欠陥である場合は、契約を解除=やめにすることもできる。
そして、売主が負うこの責任は、価格に見合っただけの品質保証責任なので、売主に過失がなくても負わなければならない。たとえば、手抜き工事が請負業者に全面的に責任がある場合でも、売主は担保責任=品質保証責任を負わなければならない。 |
ところで、民法は対等な当事者間の駆け引きを前提とするので、この定めは、特約で自由に変えられるのが原則だ。 しかし、業者が売主で買主が非業者の場合は、経験・情報で売主業者が圧倒的に有利なのだから、売主業者は民法の定めた責任ぐらいは負うべきだ。

そこで、
6-12 瑕疵担保責任の特約制限 (40条)
1
2
3 |
業者自ら売主で、買主が業者以外の場合に、瑕疵担保責任に関して民法の規定より買主に不利な特約をしてはならない。
ただし、売主が、担保責任を引渡しの日から2年以上の期間で負うという特約は(民法の規定より買主に不利となるが)定めてよい。*
上記に反して、買主に不利となる特約は無効とする。 |
|
2のこころ
責任追及期間は、民法では、瑕疵を発見してから1年以内だが、この責任期間は、瑕疵が発見されない限りスタートしないから、売主に厳しすぎる場合がある。たとえば瑕疵が、引き渡しから10年後に発見された場合も責任を負わされる。

そこで、引渡し日から2年以上の期間であるならば、責任期間の起点が固定化されている点で、民法より不利であるが、定めることができることにした。
 |
ただし、引渡し日から2年以上は責任を負わなければならないから、引渡し日から1年責任を負うとか、契約日から2年責任を負うという特約では無効となる。 無効となった場合は、民法の原則どおり、瑕疵発見から1年以内の責任となる。 |
契約 引渡し 2年 瑕疵発見
↓ ▽ ▼ ※
             
▽
↓
※ |
引渡しから2年以上の期間で売主が担保責任を負うという特約は有効、2年でもよい。
契約から2年では、少し短いから無効となる。 民法の定めは※から1年。
瑕疵発見からでは、瑕疵発見が、いつ起こるかわからないから、売主に厳しい。 |
|
3のたとえば
隠れた瑕疵がある場合、
①損害賠償だけ請求できる、
②契約の解除だけできる、
③売主に過失があるときだけ責任を負う、
という特約は民法より買主に不利となるので、無効となる。 もちろん、
<瑕疵担保責任は一切負いません>という特約は、無効だ。
これに対して、民法では認めていない瑕疵を修理する義務を売主に課す特約は、民法より買主に有利で有効である。

Caseの答 民法の瑕疵担保責任は、売主に修繕義務を認めていない。民法と同じことを認めたのだから、とくに買主に不利ということはなく、そのまま有効である。
|
Ⅶ 割賦販売における解除等の制限
Case 宅建建託は、非業者の剛田氏に宝パレス42号室を分譲する際、剛田氏の要請で、5年間の割賦販売契約をした。その際、
<賦払い金の支払いが遅延した場合は、宅建建託は、催告なしで直ちに契約を解除できる>
という定め(特約)をした。そして、賦払金の支払いが開始されて1年目に、賦払金の支払いが遅延した。宅建建託は、特約のとおり、直ちに契約を解除できるだろうか。
| * |
割賦販売 代金を1年以上にわたり、2回以上に分割して支払う販売。
なお、今日、分割払いにするときは、銀行等で住宅ローンを組んで、業者には一括して支払うのがほとんどで、業者が直接割賦販売をすることはほとんどない。試験でも、割賦販売規制は、あまり出題されない。 |
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割賦販売において、売主業者は、確実に払ってもらえるよう、賦払金(分割金)の支払いがないときは、「直ちに契約を解除できる」とか、「残金を一挙に請求できる」という定めをすることがある。しかし、これを文字どおり適用しては、買主に酷なので、これらの特約にも制限をした。
6-13 割賦販売における解除等の制限(42条)
売主業者は、非業者との宅地建物の割賦販売で、賦払金(分割金)の支払いがないときは、「直ちに契約を解除できる」とか、「残金を一挙に請求できる」という定めがあるときでも、
賦払金の支払いがないときに、①30日以上の期間を定めてその支払いを書面で催告(催促)し、②その期間内にその義務が履行されないときでなければ、
契約を解除したり、期限の到来していない賦払金の支払いを一挙に請求することはできない。
割賦金の
支払いがない |
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書面で
催告 |
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30日以上の相当期間 |
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契約の解除
残額の請求
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Caseの答 賦払い金の支払いが遅延した場合は、催告なしで直ちに契約を解除できるという定めは、文字どおりの効力は認められない。
宅建建託が賦払金の支払いがないことを理由に契約を解除するためには、①30日以上の期間を定めてその支払いを書面で催告(催促)し、②その期間内にその義務が履行されないことが必要である。
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Ⅷ 割賦販売等における所有権留保等の制限
Case 宅建建託は、非業者の剛田氏に宝パレス42号室を分譲する際、5年間の割賦販売契約を締結(代金3,000万円)し、当該42号室を引き渡した。
賦払い金の支払いスケジュールは下記のとおりだが、宅建建託では、いつの時点で同42号室の所有権登記を宅建建託から剛田氏に移すべきだろうか。
契約締結
A時点
支払い金額
頭金700万円 |
B時点
支払い金額
100万円 |
C時点
支払い金額
100万円 |
D時点
支払い金額
100万円 |
E時点
支払い金額
100万円 |
              |

割賦販売の売主業者は物件を引き渡しても、残代金支払いの確実な担保とするため、登記を移さないことがある。これを所有権留保という。
しかし、登記がないと、売主業者が倒産でもした場合は、業者の債権者に対して、引き渡しを受けた物件を自分のものだと主張できず取り上げられてしまう。それはかわいそうなので、所有権留保に次の制限をした。

6-14 割賦販売等における所有権留保と譲渡担保の制限
1
2
3
|
割賦販売の売主業者は、物件を引き渡し、かつ、代金額の3割を超える額の支払いを受けるまでに、登記*等の売主の義務を履行しなければならない。
ただし、買主が、登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権※等の登記を申請し、又はこれを保証する保証人☆を立てる見込みがないときは、この限りでない。
割賦販売の売主業者は、物件を引き渡し、かつ、3割を超える支払いを受けたら、担保目的で物件を譲り受けてはならない。
提携ローン付き販売の場合も、実質支払い(業者に直接支払った頭金+ローン返済額)が3割を超えたら、所有権留保と譲渡担保をしてはならない。 |
*
※
☆ |
登記について 不動産を買った場合に、そのことを登記しておかないと売主以外の者には、自己が権利者だという主張ができない。その結果、売主が倒産でもして売主の債権者がその不動産を差し押さえてくるような場合も、その不動産は自己のものだという主張ができず、取り上げられてしまうことになる。このように未登記の不動産の権利者は、極めて不安定な立場にある。権利6-2
抵当権 債務を弁済しないときは、抵当権をつけた不動産を競売して、債務の弁済に当たられる権利。権利Part8
保証人 本来の債務者が返済をしないときに代わりに返済をしなければならない義務を負う人。権利Part8 |
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せつめい
| 1の |
登記等の売主の義務とは、登記(所有権移転の登記または所有権保存の登記)の申請に協力することを指している。
代金の支払額が3割以下の場合は、業者としても登記をするのが不安であろうから、登記をしなくてもよいこととした。また、登記をした場合に、買主が残代金債務を担保する抵当権等の登記申請に協力しないこと又は保証人を立てないことが明らかなときも、登記をしなくてもよいこととした。 |
| 2の |
担保目的で物件を譲り受けるとは、いったん買主に登記をするが、残債務の支払いを確実にしてもらうように、売主業者に登記を戻してしまうことをいう。しかし、これは、はじめから所有権留保をするのと変わらない。そこで、代金額3割を超える支払いを受けたら、これをしてはならないとした。 |
| 3の |
提携ローン付き販売とは、買主が銀行等からローンを組み、業者に代金を支払ってしまうのだが、買主の銀行への返済につき、支払いを受けた業者が保証人となっているものをいう。この場合は割賦販売ではないのだが、業者が買主の保証人になっているので、買主のローン返済がないときのリスクは業者がかぶる。そのため、業者は、1・2の場合と同じく所有権留保や譲渡担保をしたくなるので、これらに対する制限をした。 |

Caseの答 代金額の3割=900万円を超える額を受け取るまでに登記を移さなければならないのだから、D時点の前に登記を移さなければならない。 |
以上で、みずから売主規制は終わりだ。みずから売主規制は、業者間取引には適用されない。ここがよく出るので、8種類のみずから売主規制の項目を覚えておこう。
①自己所有に属しない、②事務所等を、③予定して、 ④手付を打ったが、 ⑤瑕疵があり 、⑥ぼーぜん(保全)自失で、⑦⑧カップ(割賦)を落とした 。 なお、事務所等はクーリング・オフをあらわす(事務所等で契約をした場合はクーリング・オフできない)。 |
|
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Ⅸ 住宅瑕疵担保履行法
| Case 宅建建託では、新築のマンション30戸を分譲することになった。物件に瑕疵があった場合に備えて、宅建建託では、何をしておかなければならないだろうか。 |
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民法は、売買目的物に隠れた瑕疵があるときには、
《責任期間を瑕疵発見から1年以内》として、
《売主に損害賠償義務》と《買主からの契約の解除》 |
を認めている(権利6-21)。
しかし、この責任は、新築住宅の買主の保護に薄いことから、住宅品質確保促進法*は、新築住宅の売主業者に対して、民法上の責任より重い、特定住宅販売瑕疵担保責任を定めた。※
*
※ |
住宅の品質確保の促進等に関する法律
特定住宅販売瑕疵担保責任 新築住宅の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に隠れた瑕疵があるとき、売主業者に損害賠償義務と買主からの契約の解除のほか、瑕疵部分の修繕義務を認めており、責任期間も引渡しから原則として10年に延長された(94・95条)。
なお、特定住宅販売瑕疵担保責任の対象となるのは、住宅品質確保法の対象となる瑕疵、すなわち構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の隠れた瑕疵である。 |

せっかく定めたこの責任をきちんと履行してもらうため、住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)が、新築住宅の売主業者にあらかじめ資力確保措置をとることを義務付けた。
| |
| (注)本法が新築住宅の売主業者に義務付けた資力確保措置は、宅建業法上の業者自ら売主規制ではないが、売主業者にのみ課される、また業者間取引には適用がないという点で、業者自ら売主規制と共通点があるので、ここで取り上げることにする。 |
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資力確保措置には、
《住宅販売瑕疵担保保証金を供託する》 特定住宅瑕疵担保責任の問題が生じた場合、賠償金等に充てる資金を供託しておく方法

《国土交通大臣指定の保険法人の保険に加入する》 特定住宅販売瑕疵担保責任の履行によって生じた損害について保険金を支払ってくれる保険に加入する方法 |
がある。

住宅販売瑕疵担保保証金を供託する方法を選択した宅地建物取引業者は、次のとおり供託をしなければならない。
6-15 住宅販売瑕疵担保保証金の供託等(11条)
自ら売主となって新築住宅を宅地建物取引業者でない買主 に引き渡した宅地建物取引業者は、
当該基準日*において、
その引渡戸数(保険の方法による資力確保措置をとった新築住宅を除く※)に応じた額以上の住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない。
|

*
※ |
資力確保措置は、買主も業者の業者間取引の場合には必要ない。
基準日は、毎年3月31日と9月30日である。
供託金算定の基準となる引渡戸数から、保険の方法による資力確保措置をとった新築住宅が除かれているのは、供託の方法をとらないのならば、保険の方法による資力確保措置を講じておかなければならないことを意味する。 |

供託を選択した業者は、契約締結前に供託所の所在地等に関する説明をしなければならない。
6-16 供託宅地建物取引業者の供託所の所在地等に関する説明(15条)
供託業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、
当該新築住宅の売買契約を締結するまでに、
その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地及び表示等を記載した書面を交付して説明しなければならない。 |

資力確保措置のもうひとつの方法である、保険法人の保険に加入する場合の保険は、次のようなものでなければならない。
6-17 住宅販売瑕疵担保責任保険契約(2条5項)
1
|
宅地建物取引業者が保険料を支払うことを約するものであること。 |
| 2 |
構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に隠れた瑕疵があった場合に、業者が当該特定住宅販売瑕疵担保責任*を履行したときは業者の請求に基づき、業者が同責任を履行しないときは買主の請求に基づき、損害を填補するものであること。
|
| 3 |
損害をてん補するための保険金額が2000万円以上であること。 |
| 4 |
買主が引渡しを受けた時から10年以上有効であること。 |
| * |
特定住宅販売瑕疵担保責任の対象となるのは、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の隠れた瑕疵である。 |
|
| 5 国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、変更又は解除をすることができない。 |

供託をしても保険加入をしても、次の届出をしなければならない。
6-18 資力確保措置の状況についての届出(12条)
自ら売主として新築住宅を業者でない買主に引き渡した業者は、
基準日から3週間以内に、
当該基準日に係る資力確保措置(住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結)の状況について、免許権者(免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事)に届け出なければならない。 |

6-19 資力確保措置の状況についての届出を怠ると(41・13・39条)
1
2 |
50万円以下の罰金に処せられる。
当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後においては、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならないこととされる。
⇒これに違反すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金又は併科に処せられる。 |
|
|

この章からは、クーリング・オフは、1問出題されます。
手付関連の規制も1問以上出題されます。
その他の保全措置、自己所有に属しない物件の売却制限、瑕疵担保責任の特約制限等からも1・2問は出題されます。
なお、割賦販売がらみの規制は、ほとんど出題されません。
住宅瑕疵担保履行法は、45番で出題されます。 |
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