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Ⅰ宅地建物取引士とは |
Case 「社長、あすの剛田氏に対する重要事項の説明ですが、急用ができたので、代わっていただけませんか。社長は宅建士じゃないですが、剛田氏 も了承してくれているんですよ。」
「剛田さんが、それでいいというなら問題なかろう。心おきなく、急用をすませない。」宅建建拓恒例の月曜ミーティンでの会話。
が、本当にそれでいいのか。 |

2-1 宅地建物取引士とは
宅地建物取引士とは、
① 都道府県知事の行う宅地建物取引資格士試験に合格し、
② その都道府県知事の登録を受け、
③ その知事から宅地建物取引士証の交付を受けた者だ。 |

この宅建士でないとできない仕事が、定められている。
2-2 宅地建物取引士しかできない仕事
1 ①重要事項の説明と、②同書面への記名押印
2 契約内容を記載した書面(37条書面)への記名押印 |
宅地建物取引業者は、契約前に、買主等に、契約上重要な事柄につき、書面に基づいて説明しなければならないのだが、この重要事項の説明と説明書面への記名押印が宅建士だけができることだ。*
| * |
宅建士でない者に、 重要事項の説明をさせた場合、罰則はないが、監督処分として事務禁止処分の事由である。したがって、情状が重ければ免許取消処分もある。7-2 |

また、契約が成立すれば、契約当事者に契約内容を記載した書面を交付するが、その書面への記名押印も宅建士しかできないことだ。

Caseの答 宅地建物取引士でない宅社長が重要事項説明をすることは、違反となる。相手方の剛田氏が了承していても、違反である。

宅建士は、宅地建物取引業者の業務中、重要な業務を担うので、宅地建物取引士の業務処理の原則とその責務が定められている。
2-3 業務処理の原則とその責務
1
2 |
宅地建物取引士の業務処理の原則(15条)
宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。
宅地建物取引士の責務
(1)信用失墜行為の禁止(15条の2)
宅地建物取引士は、宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない。
(2)知識及び能力の維持向上(15条の3)
宅地建物取引士は、宅地又は建物の取引に係る事務に必要な知識及び能力の維持向上に努めなければならない。 |
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1は、公正かつ誠実な業務処理と宅建業に関連する業務の関係者との連携の努力義務である。
2(1)の宅地建物取引士の信用を傷つけるような行為とは、宅地建物取引士の職責に反し、または職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為で、宅地建物取引士としての職業倫理に反するような行為である。職務として行われるもののほか、職務に必ずしも直接関係しない行為や私的な行為も含まれる。
2(2)は、努力義務である。
Ⅱ 宅建士資格登録
1 合格したら知事の登録を受ける
宅地建物取引士になるには、宅地建物取引士資格試験に合格し、試験を行った知事の登録を受けなければならない。
登録を受けるためには、2年以上の実務経験を有するか、国土交通大臣が実務経験者と同等以上の能力を有すると認めたことが必要だ。
2-4 登録には実務経験か国交大臣の実務経験同等認定が必要(18条1項)
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合格+2年以上の実務経験又は国交大臣が実務経験者と同等以上の能力を有すると認めた(国交大臣の登録実務講習修了) ⇒登録。 |
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登録を受けた者を宅地建物取引士資格者という。
ただし、登録欠格事由に該当すると登録は受けられない。
登録は義務ではない。
試験合格後何年経っても受けられる。
2以上の都道府県で試験に合格しても、一の都道府県の登録しか受けられない。
登録には、有効期間はない。

2 不適格者は登録を受けられない
①成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ないもの
②悪質な免許取消処分*を受け、5年経過していない者
| * |
悪質な免許取消処分 ⅰ不正手段により免許を受けた、又は ⅱ業務停止処分の事由に該当し情状が特に重い、もしくは ⅲ業務停止処分に違反したことによる免許取消処分 |
| ②-1 |
法人が悪質な免許取消処分を受けた場合の、処分の聴聞公示日前60日以内の法人役員〔支配力ある者〕で、処分の日から5年経過しない者(聴聞公示日前60日以内の法人役員) |
| ②-2 |
悪質な免許取消処分の聴聞期日場所の公示があってから、解散又は廃業の届出があった者で、廃業等の届出の日から5年経過しない者 (廃業等による処分逃れ) |
| ②-3 |
悪質な免許取消処分のための聴聞の期日場所の公示があってから、合併消滅又は廃業等の届出があった法人の、処分の聴聞公示日前60日以内の法人役員で、廃業等の届出等の日から5年経過しない者(処分逃れ法人の役員) |
| ③ |
懲役又は禁錮刑に処せられ執行終了等してから5年経過していない |
| ④ |
業法違反・暴力犯・背任罪で罰金刑に処せられ執行終了等してから5年経過していない者 |
|
※ただし、③④は執行猶予期間が無事経過すれば、直ちに受けられる |
| ⑤ |
暴力団員又は暴力団員でなくなってから5年経過していない者 |
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2)登録の欠格事由②―登録独自の欠格事由
次に登録を受ける場合だけの欠格事由だ。
《宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者(ただの子供)18条1項1号》は、登録を受けられない。
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*
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営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者とは、法定代理人から宅建業に関して営業許可を受けておらず、また婚姻もしていない普通の未成年者、つまり、ただの子供だ。 |
そのこころ
免許の場合は、宅地建物の取引が代理人でもできることから、ただの子供もその法定代理人が免許の欠格事由に該当しなければ免許を受けられた。これに対して、宅建士が行う重要事項の説明等は、試験に合格して、それらをできる専門知識があると認められた者しかすることができない。代理人が、代わってするわけにはいかないのだ。そこで、いくら試験に受かったとはいえ、ただの子供にこのような重要な仕事をまかすわけにはいかないので、ただの子供は登録を受けられないことにした。
この反面として、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する未成年者は、登録を受けることができる。
登録独自の欠格事由の2番目は、5年続く欠格事由だ。
《悪質な登録消除処分*を受け、5年を経過していない者》
は、登録を受けられない。
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*
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悪質な登録消除処分とは、
ⅰ不正手段により登録又は宅建士証の交付を受けたこと
ⅱ宅建士として事務の禁止処分の事由に該当し、情状が特に重いこと、
ⅲ事務の禁止処分に違反したこと、又は
ⅳ宅地建物取引士資格者(2-3)が宅建士としての事務を行い、情状が特に重いことを理由とする
登録の消除処分(登録を消す処分)だ。 |

さらに、《悪質な登録消除処分・逃れ*をして、5年を経過していない者》も、登録を受けられない。
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*
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悪質な登録処分・逃れとは、上記のⅰ~ⅳのいずれかに当たるとして、登録の消除の処分の聴聞の期日及び場所が公示された日後、登録の消除の申請*をして、当該登録を消除させることだ。 |
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*
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登録の消除の申請 登録は本人の申請によっても消除できるが、これをされてしまうと、監督処分としての消除処分ができなくなってしまうので、処分逃れとなる。 |

登録独自の欠格事由の3番目は、事務禁止処分*中の再登録を拒む基準だ。
《宅建士として事務の禁止の処分を受け、その禁止の期間中に登録の消除の申請をした者で、その登録が消除され、まだ事務禁止の期間が満了しない者》は、再登録は受けられない。
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*
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事務禁止処分 1年以内の期間を定めて、宅建士ができる事務(2-2)を禁止する監督処分
|
たとえば
事務禁止処分を受けた不動君が、事務禁止期間が明けるのを待ちきれず、申請により登録を消除して再登録を申請しても、事務の禁止期間中は再登録を許さない。当然のことだ。ここで再登録を許しては、何のための事務禁止かわからなくなる。
なお、この場合は、事務禁止期間が満了すれば、登録を受けられる。5年間登録が受けられないのではないことに注意。

登録独自の欠格事由をまとめておこう
2-6 登録の欠格事由2・・登録を受ける場合だけの欠格事由
①
② |
宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者(ただの子供)
悪質な登録消除処分*を受け、5年を経過していない者 |
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*
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悪質な登録消除処分
ⅰ不正手段により登録又は宅建士証の交付を受けたこと
ⅱ宅建士として事務の禁止処分の事由に該当し、情状が特に重いこと、
ⅲ事務の禁止処分に違反したこと、又は
ⅳ宅地建物取引士資格者(2-3)が宅建士としての事務を行い、情状が特に重いことを理由とする
登録の消除処分(登録した者の登録を消す処分)。 |
| ③ |
悪質な登録消除処分逃れ※をして、5年を経過していない者 |
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※
|
悪質な登録処分逃れとは、上記の②ⅰ~ⅳのいずれかに当たるとして、登録の消除の処分の聴聞の期日及び場所が公示された日後、登録の消除の申請をして、当該登録を消除させること |
| ④ |
宅建士として事務の禁止の処分を受け、その禁止の期間中に登録の消除の申請をした者で、その登録が消除され、まだその期間が満了しない者 |
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ただの子供に悪質登録消除処分とその処分逃れは登録欠格
事務禁止期間中は再登録できない。
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Ⅲ宅地建物取引士証
1 登録をしたら宅地建物取引士証の交付を受ける
宅地建物取引士資格者は、宅地建物取引士証の交付を受けて、宅地建物取引士となれる。宅地建物取引士証の交付申請は、登録を受けた知事に、写真(6か月以内撮影)を添付して行う。
この申請も、義務ではない。
登録後何年経過しても申請できる。
ただし、

2-7 合格後1年超の交付申請には知事指定講習(22条の2)
| 試験合格後、1年を超えてから交付を受けようとする者は、登録知事が指定する講習*で、交付申請前6月以内に行われるものを受講しなければならない。 |
| * |
この講習は、宅建士として必要な知識や法改正の内容を確認するためのものだから合格した日から1年以内に交付を受ける場合、最新の知識が備わっているので、受講の必要はない。 |
実務経験同等講習は大臣登録講習(2-3)、宅建士証の交付は知事指定講習。

交付された宅建士証には、次の事項が記載されている。
2-8 宅建士証の記載事項(規則14条の11)
氏名、住所、生年月日
写真 登録番号及び登録年月日、交付年月日、有効期間の満了日 |
従事業者の商号名称は、記載事項ではない
宅建士証の有効期間は5年だ。引き続き仕事をするには、更新が必要となる。
2 宅建士証の有効期間の更新
2-9 宅建士証の有効期間(5年)の更新(22条の3)
更新を受けようとする者は、登録をしている知事が指定する講習で、更新申請前6月以内に行われるものを受講しなければならない。
・新宅建士証の交付は、旧証と引換えに行う。 |

宅建士証は、重要なので、取り扱いの要領が定められている。
3 宅建士証の取り扱い
2-10 宅建士証の取り扱い-提出・返納は交付受けた知事に
1
2
3
4
5
6 |
氏名・住所変更⇒変更の登録(2-8)と宅建士証の書換交付を申請しなければならない。書換られた宅建士証は従前宅建士証と引き換え交付される。
宅建士証を紛失・汚損・毀損⇒登録知事に再交付申請ができる。その後、紛失宅建士証を発見⇒速やかに交付受けた知事に返納の義務。
登録消除又は宅建士証が失効⇒速やかに交付受けた知事に返納の義務。
事務の禁止処分を受けた⇒速やかに交付受けた知事に提出の義務。
⇒知事は、事務の禁止期間満了後、提出者から返還請求があれば返還する。
取引関係者から提示の請求⇒提示しなければならない。
重要事項の説明を行うとき⇒請求がなくても、提示しなければならない。 |
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従事業者を変更した場合は、変更の登録申請は必要だが、宅建士証の書換交付申請は必要ない。
4は、交付を受けた知事へ提出。処分をした知事へ提出、ではない。 |
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Ⅳ 登録に付随する各種申請
1 登録事項に変更あれば、遅滞なく変更の登録申請
Case 「今日からお世話になる不動孝太です。先週まで、スッキリ不動産にお世話になっていました。」
宅建建拓の月曜ミーティングに新顔登場だ。即戦力になる現役宅建士の不動孝太君(東京都知事登録)を急きょ採用したのだ。宅建士が、従事業者を変えた場合は、なにか手続が必要だろうか。 |

宅建士資格者登録簿には、下記事項が登録される。そして、登録事項に変更があれば、変更の登録を申請しなければならない。
2-11 登録事項と変更の登録申請(18条2項、20条)
①氏名、生年月日 ②住所
③本籍(日本国籍を有しない者は、その者の国籍)
及び性別
④宅地建物取引業者の業務に従事する者にあっては、
当該宅地建物取引業者の商号又は名称及び免許証番号 等

登録事項に変更があれば、遅滞なく 変更の登録を申請しなければならない。 |

 |
免許証番号 従事業者を変えた場合には、当然免許証番号も変わるが、従事業者が免許換えをしただけの場合も、免許証番号は変わる。
変更の登録には、申請期限はなく、遅滞なくすればよいことに注意。 |

Caseの答 不動君は④の従事業者の商号と免許証番号が変更したので、遅滞なく、東京都知事に変更の登録を申請しなければならない。 なお、宅建建拓は、不動君を専任の宅建士としたのであれば、30日以内に、業者名簿の変更の届出をしなければならない(1-15)。
2 登録の移転
Case 「大地大阪新支店長。大阪に根をはやすつもりで、赴任してください。」と月曜ミーティングでの宅社長の激励。
「とおっしゃられても、宅建士証の更新手続きで、来月にも戻ってこなければならないかも・・、」と大地氏。
というのも、大地氏の宅建士証(東京都知事登録) の有効期間はあと3か月しか残っていないのだ。東京に戻ってこないで更新手続をする方法は、ないだろうか。 |

登録した都道府県以外の都道府県の事務所で業務に従事していたり、これから従事しようとするときは、勤務先の都道府県に登録を移せる登録の移転という制度がある。登録を移せば、更新手続も移転先の都道府県でできることになる。

2-12 登録の移転―義務ではない (19条の2)
登録都道府県以外の都道府県の事務所に従事している、又は従事しようとするときは、 登録知事経由で、その事務所を管轄する知事に対して、 登録の移転と宅建士証の交付*を申請することができる。
| * |
登録の移転により、従前の宅建士証は効力を失う。

そこで、登録の移転申請とともに、
移転先の知事に宅建士証の交付申請もできることになっている。

宅建士証の交付申請に対し、移転先知事は従前宅建士証と引換えに、 従前宅建士証の残存期間を有効期間とする宅建士証を交付する。 |
ただし、事務の禁止期間中はできない。 |
ただしのこころ
その期間中は宅建士の仕事はできないはずだからだ。
 |
登録の移転は、義務ではない。 宅建士証の交付申請をするときは、知事指定の講習(2-8)を受講する必要はない(講習は5年に1度でよい)。 |

Caseの答 大地氏は、大阪支店に赴任前に、東京都知事を経由して、大阪府知事に登録の移転と宅建士証の交付請求をしておくとよい。そうすれば、大阪に赴任したときに大阪府知事から従前宅建士証と引換えに、従前宅建士証の残存期間を有効期間とする宅建士証を交付してもらえる。そして、次の更新手続も大阪でできる。 |
3 登録欠格該当の届出
Case 張り切って仕事をしていたかにみえた不動孝太君、 スッキリハウジング時代にギャンブルにこってできた多重債務を整理するため、このほど自己破産の手続 をとってしまった。 宅建業法上も何か手続きが必要だろうか。 |

登録を受けている者が、次に事由にあたることとなった場合、その日から(死亡のときは、その事実を知った日から)30日以内に、登録を受けた都道府県知事に届け出なければならない。
2-13 死亡・登録後に登録欠格該当の場合は30日以内に届出の義務(21条)
| 届出が必要な場合 |
届出義務者 |
| 死亡 |
相続人 |
| 登録欠格事由*に該当 |
本人(後見開始の審判のときは、後見人・保佐開始の審判のときは、保佐人※) |
◎届出期限 その日から(死亡のときは、知った日から)30日以内
*
※
|
登録欠格事由 ①成年後見開始・保佐開始の審判、破産手続開始の決定 ②悪質な免許取消処分(①不正手段により免許を受けた、又は②業務停止処分の事由に該当し情状が特に重い、もしくは業務停止処分に違反したことによる免許取消処分)関連 ③懲役又は禁錮刑④業法違反・暴力犯・背任罪で罰金刑、暴力団員等。
後見人は、制限行為能力者の成年被後見人につけられる保護者、保佐人は被保佐人につけられる保護者。
業者が破産手続開始の決定を受けた場合は、破産管財人に届出義務(1-17)が課されるが、登録者が破産手続開始の決定を受けた場合は本人に届出義務が課される。 |

Caseの答 ●不動君は、破産手続開始の決定があった日から30日以内に、東京都知事に、その旨届け出なければならない。

死亡・登録欠格該当の届出があると、登録は消除される。 また、届出がなくても、その旨の事実が判明すると登録は消除される。さらに、登録は本人の申請によっても消除される。

2-14 申請又は死亡・登録後に登録欠格該当⇒登録消除(22条・68条の2)
都道府県知事は、次の一つに当たる場合、登録を消除しなければならない。
① 本人から登録の消除の申請があったとき
② 死亡又は登録後の登録欠格該当の届出があったとき
③ 死亡の届出がなくとも、その事実が判明したとき
④ 登録後に登録欠格該当の事実が生じたとき
⑤ 不正手段により受験し、合格の決定を取り消されたとき
なお ④の登録の消除は、監督処分としての登録消除(7-4)だから、事前に聴聞が必要である。
*不正手段による受験の場合、3年以内の期間を定めて受験が禁止される。 |
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Ⅴ 専任の宅建士の設置義務
Case 宅建建拓東京本店では、4月に3名入社し、社長を含めて、社員は15名になった。そのうち、宅建士は、大地部長と早苗さんの2人だ。また、神奈川県の分譲案内所には、不動君はじめ、運転手、受付嬢等9名の社員が従事している。そのうち、宅建士は、不動君だけだ。
宅建建拓は、専任の宅建士の設置義務をみたしているのだろうか。 |

宅地建物取引業者は、事務所と契約行為*をする案内所等※には、一定数の宅建士を専任で置かなければならない。
| * |
契約行為=宅地建物取引にかかる契約〔予約を含む〕をし、又は、契約申込みを受ける。 |
| ※ |
案内所等=継続的業務施設、分譲の案内所・分譲の代理・媒介の案内所、催し実施場所 |
2-15 業者の専任の宅建士の設置義務(15条、規則6の3)
1
2
3 |
宅地建物取引業者は、その事務所に、業務従事者5人に1人以上の割合で、成年者である専任の宅建士を、置かなければならない。 事務所以外でも、契約行為をする案内所等には、1人以上の成年者である専任の宅建士を、置かなければならない。
宅建士の退職や一般従業員の増加により、専任の宅建士の数が既定の数を下回ったときは、業者は2週間以内に適合措置を取らなければならない。 |
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専任とは、当該事務所に常勤して、専ら宅地建物取引業の業務に従事するということだ。 その専任を、事務所では、業務従事者5人に1人以上、たとえば、業務従事者が6人であれば専任を2人以上、従業者が16人であれば4人以上置かなければならない。 事務所以外の案内所等では、そこで契約行為を行う場合のみ、従業者が何人であっても、1人以上の専任の宅建士を置けばよい。
専任になれるのは成年者に限られるので未成年者が法定代理人から営業許可を得て宅建士になったとしても(2-5)専任にはなれない。 ただし、未成年者でも婚姻をすれば成年者とみなされるから(権利2-1)、婚姻をした未成年者は専任になれる。
さらに
2-16 みなし専任(15条2項)
業者本人又は法人の役員(業務執行役員、取締役又はこれらの準ずる者*)が宅地建物取引士であるときは、その者が主として業務に従事する事務所等では、成年者である専任の宅地建物取引士とみなされる。
| * |
みなし専任における役員には、監査役は含まない。監査役は、法律上業務執行権がないからだ。 |
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この規定は、未成年者にも適用されるため、未成年者でも、<宅地建物取引士>であり、かつ、<業者本人又は法人業者の役員>であるときは、成年者である専任の宅地建物取引士とみなされる。
□未成年者の扱いの比較□
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ただの子供(営業に関し成年者と同一の能力を有しない) |
営業に関し成年者と同一の行為能力を有する |
| 営業許可受けた未成年者 |
婚姻未成年者 |
| 業者免許 |
○受けられる |
○受けられる |
○受けられる  |
| 宅建士 |
×なれない  |
○なれる |
○なれる |
| 専任の宅建士 |
×なれない  |
△みなされることはある |
○なれる |

専任の宅地建物取引士が、規定の数を下回った場合は、適合措置をとらなければならない。
適合措置とは、専任の宅建士を雇うか一般従業員の数を減らすことによって、専任の宅建士の数を法適合状態にすることだ。
専任の宅建士を雇った場合には、雇ってから30日以内に業者名簿の変更の届出(1-14)も必要になる。
なお、専任の宅建士の設置義務に違反(規定数の専任の宅建士を置かない又は規定数を下回り2週間以内に適合措置をとらなかった)した場合には、業務停止処分の事由にあたり、また、100万円以下の罰金刑に処せられる(7-)。
Caseの答 東京本店の社員数は15名で、宅建士は2名。宅建士の増員で適合措置をとる場合は、あと2人以上の宅建士を専任で雇わなければならない(1人では、社員総数が16名になるので、なお1人足りない)。宅建士でない従業員を減らすのなら、5名以上減らさなければならない。
専任の宅建士を増員した場合は、専任にしてから30日以内に業者名簿の変更の届出(1-14)も必要になる。
分譲案内所は1人以上置けばよいので、宅建士の不動君の存在で、法適合状態になっている。
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(一問一答問題にチャレンジ)
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