平成13年 

【問 2】 Aが、Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。



1 Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、売買契約は錯誤によって無効であると主張できる。



2 売買契約に要素の錯誤があった場合は、Bに代金を貸し付けたCは、Bがその錯誤を認めず、無効を主張する意思がないときでも、Aに対し、Bに代位して、無効を主張することができる。



3 Aが、今なら課税されないと信じていたが、これをBに話さないで売却した場合、後に課税されたとしても、Aは、この売買契約が錯誤によって無効であるとはいえない。



4 Bは、代金をローンで支払うと定めて契約したが、Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合、Bは、錯誤による売買契約の無効を主張することはできない。


【解答及び解説】
【問 2】 正解 2
1 正しい。本肢は、地下に空洞があるので、法律行為の要素に錯誤があり、また買主はAや媒介業者の説明をよく聞いており、重過失もないことから、意思表示の無効を主張することができる。
民法95条

2 誤り。錯誤による無効は、表意者を保護するためであるから、原則として第三者から無効を主張することはできない。
民法95条

3 正しい。Aは今なら課税されないと信じていることから、動機の錯誤がある。動機の錯誤は、その動機が表示され意思表示の内容となっているときは、無効となる。本肢では、その動機(課税されないこと)をBに話していないので、その動機が表示されたとはいえない。したがって、Aは売買契約の無効を主張することはできない。
民法95条

4 正しい。肢1で述べたように、錯誤無効を主張するには、表意者に重大な過失がないことが必要である。Bは重大な過失によりローン融資を受けることができなかったわけであるから、Bは売買契約の無効を主張することはできない。
民法95条



【解法のポイント】肢3の動機の錯誤とは、意思表示をする動機に錯誤がある場合です。本肢でいうと、「今なら課税されないから」(動機)売ろう! ということです。
 
 

【問 8】 Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。



1 Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。



2 Aが、買主Dから虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、Bがその事情を知りつつAに対してDとの契約を指図したものであるときには、BからDに対する詐欺による取消はできない。



3 Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第三者に修繕させた場合、Bには、修繕代金を負担する義務はない。



4 Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。



【解答及び解説】


【問 8】 正解 2
1 誤り。代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、本人に効果が帰属する。したがって、本肢は、CはBが売主であることを知っていたわけであるから、売買契約はBC間で成立する
*民法100条

2 正しい。意思表示の効力が詐欺等によって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するのが原則である。ただ、特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本肢では、Bは詐欺の事情を知りながら、Aに対してDとの契約を指図したものである以上、BはDに対して詐欺による取消をすることはできない。
*民法101条2項


3 誤り。本肢のAの代理権の範囲は、建物の売却と、それに伴う保存行為を含むとされており、破損した建物の一部の修繕は保存行為にあたるので、Bが第三者に修繕させた行為の効果は、本人であるBに対して及ぶ。
*民法99条1項

4 誤り。任意代理人は、原則として復代理人を選任することができないが、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときは、例外的に復代理人を選任することができる。
*民法104条



【解法のポイント】この問題は、代理の問題としては基本的な問題といえると思います。
 



【問 39】 宅地建物取引業者が、宅地又は建物の売買の媒介に際して相手方に交付する必要のある書面に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、この問において、「重要事項説明書」又は「契約書面」とは、それぞれ同法第35条又は同法第37条の規定に基づく書面をいう。

1 契約の解除については、特に定めをしなかったため、重要事項説明書にはその旨記載し内容を説明したが、契約書面には記載しなかった。

2 代金の額及びその支払の時期については、重要事項説明書に記載し内容を説明したが、契約書面には記載しなかった。

3 宅地及び建物の引渡しの時期については、特に定めをしなかったため、重要事項説明書にはその旨記載し内容を説明したが、契約書面には記載しなかった。

4 移転登記の申請の時期については、特に定めをしなかったため、重要事項説明書にはその旨記載し内容を説明したが、契約書面には記載しなかった。


【解答及び解説】


【問 39】 正解 1
1 正しい。契約の解除に関する事項は35条書面の記載事項であり、特に定めをしなかった場合は、定めがない旨の説明をしなければならない。それに対し、37条書面において、解除に関する事項は任意的記載事項であり、定めがあったときだけ記載すればよい。
*宅地建物取引業法35条1項8号、37条1項7号

2 誤り。代金の額及びその支払時期は、35条書面の記載事項ではないが、37条書面においては必要的記載事項であり、必ず記載しなければならない。
*宅地建物取引業法35条1項、37条1項3号

3 誤り。引渡しの時期は、35条書面の記載事項ではないが、37条書面の必要的記載事項であり、必ず記載しなければならない。
*宅地建物取引業法35条1項、37条1項4号

4 誤り。移転登記の申請時期は、35条書面の記載事項ではないが、37条書面の必要的記載事項であり、必ず記載しなければならない。
*宅地建物取引業法35条1項、37条1項5号



【解法のポイント】本問の肢2(代金等)、肢3(引渡し時期)、肢4(移転登記の申請時期)は、契約が成立して初めて決まることなので、重要事項の説明の対象となっていないが、37条書面においては、「必要的」記載事項となっている。この3つはセットで覚えておいた方がよい。