落語の鉄人 at 東京・中野

怪しい番頭さん

2000年3月11日(土)

一席めは『胴乱の幸助』。

パンフレットによれば、「雀三郎十八番の演目です。『胴乱』とは、薬・印・煙草・銭などを入れて腰に下げる小物入れのことで……『胴乱の幸助』と呼ばれているこの男(主人公)は喧嘩の仲裁が好きで好きでしようがないという変な男、ある時、浄瑠璃の話を現実の話と勘違いして、大阪から京都まで仲裁に出かけてゆくという、とてもけったいな噺で……リズム感のあるおかしさを堪能できる古典落語です」

パンフレットの言うとおり、つかみ(?)の、幸助を引っかけて酒をおごらせようというハシっこい男とトッポいアホの二人組の掛け合いから快調なリズム! ぐいぐい引き込まれました。そして、この二人にだまされているとも知らず、仲裁ができて悦に入る幸助が実にかわいい!! 雀さんならでは、と思いました。メインストーリーに入ってからも浄瑠璃の稽古場などの聞かせどころもあり、文字どおり“堪能”させてもらいました。

中入り後の席は新作の「浪の人」。

ある学校で、生徒達に観せる“文化的な芸能”に何を選ぶかという職員会議から始まって、古典にこだわるじいさん、新劇がよろしいと主張する若手、ミュージカルがいいわと言う女先生(逆やったかな)がからみ……結局、その三つを兼ね備えている(?)という浪曲が選ばれて、という浪曲をネタにした噺です。ギャグとしては充分おもしろかったのですが、「幸助」みたいな雀さんならではの人となりのよさがもっと出るところがあれば……と、ちょっと残念でした。ないものねだりみたいですんません。

ちなみに、浪曲というのは内容的に忠君愛国とかお涙頂戴とかが多いので敬遠されがちですが、純粋に音楽的に聞くと相当洗練された芸だと思います。埋もれさせるには惜しい芸ですから、内容さえ工夫すれば……。今回のゲストの国本武春(若手浪曲師)さんも、浪曲を聴くとき客のとるべき反応というのを自分のテープを流しながらやってみせ、次には無理やり(?)客に実際にやらせてしまうという粋な演出で、ばっちり笑いを取ってました。

次の『落語の鉄人』、楽しみにしています。
(次回は2000年9月10日だと聞いています。「雀三郎ニュース」にまた載せますのでチェックをお忘れなく!)


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