
水路清掃
いづみ橋の前を流れる用水路の掃除をしました。ポイ捨てというより確信犯的なもの、例えば布団や電化製品などが埋まっていて非常に寂しい気分でした。しかし、そんなゴミだらけの水路でも生物たちが細々と生きているその逞しさには脱帽です。中でも驚いたのは結構な数の蜆(しじみ)が今も生息していること。この辺りでは昔、タニシ、蜆、ドジョウなど獲って食べていたようです。大雨で川の水位が上がると用水路に鯉や鰻の大物が迷い込んでくるので楽しみだったという話も聞きました。一度に昔のようにすることは難しいとは思いますが、ゴミを捨てないことは当たり前のルールですよね。みんなの少しの心掛けで子供達が遊べる水辺にしたいですね。
2004.04.16
海老名耕地という名前
主食用の米では玄米の八分搗き、つまり8%を削った米を食べているのですが、酒米は半分近くまで精米しています。昔、水車を動力に使っていた時代は三割五分削るのが精一杯でしたが、今では六割五分まで磨くことが出来ます。お米の中心三分の一だけ使うのです。確かに米を磨けば磨くほど雑味のない澄んだ味の酒になります。しかしそういうお酒ばかりではつまらないし、手塩にかけて育てた山田錦を半分以上磨いてしまうのは勿体無いので、いづみ橋では最近低精白の酒も造るようになりました。80%精白のお酒は米の旨味たっぷりで、その昔相模の国の穀倉地帯だった海老名の呼び名「海老名耕地」を名前付けました。業界的にも珍しい存在ですが、地元でとれた良い米だからこそ醸し出せる自然の恵みです。
2004.04.30
苗の成長
酒米の苗は去年の収穫の中からとっておいた種籾から育てます。種は土に蒔かれると安心したように一斉に芽を出し始めます。発芽を促すために密閉し日を遮り、言うなれば暗闇サウナ状態にしてやると、モヤシのように白い芽と根っこがぐんぐん伸び二センチ程になったら、苗はようやくお日様とご対面。太陽を浴びると植物は光合成を始めるので、ようやく早苗らしい緑の葉っぱがでてきますが、その伸びる勢いときたら驚かされるばかりです。種まき後10日でなんと10センチ以上になりました。これから田圃に水が入ると、また再び生き物達の絶好のすみかになることでしょう。産卵を控えた蛙が待ち遠しそうに鳴いています。
2004.05.21
仕込み水
「水をさす」という言葉は、邪魔をするという良くない意味で使われますが、お酒を飲むときには、合間合間にときどき水を飲むと深酔いを防げます。ゆっくり楽しむために、一休みしながら、というのがスマートな飲み方ですね。日本酒は約六割近くが水なので、水が酒の個性を左右する一要素とも言えます。神奈川県内15蔵の使う仕込み水は、ほとんどが丹沢山系の伏流水ですが、その水脈の地域によっても違いがあるようで、仕込み水を飲み比べてみるのも面白いです。不思議なもので微妙な違いでも自分の蔵の仕込み水を口にした時が一番すっとのどを通るように感じます。やはり普段飲み慣れた自分の蔵の酒と水の味は五感にしみこんでいるのでしょうね。
2004.06.04
田植えの起こり
梅雨の晴れ間、田んぼの水面に青空が映りとても綺麗です。鴨が泳ぎまわり、まだ小さなオタマジャクシの姿もみえます。ほっと一息つきたいところですが、そろそろ雑草も出てくる頃です。もともと田植えの起こりは、雑草と区別をつけて稲だけを育てる為に考えられたものです。直に種籾を蒔いても芽が出て育ちますが、それでは生長の早い他の雑草に負けてしまうので、予め稲をある程度まで大きくしてから田んぼに植え付ける、田植えが考えられたのです。雑草の生長は恐ろしく早く、しかも草取りをしづらい稲の株の周りにぴったりと寄り添って、なんとか除去されないように知恵を働かせているようです。大事に育てられている稲に対抗して逞しく生きているのでしょうね。
2004.06.18
真夏の燗酒
夏は生酒をきりっと冷やして、ガラスの器などでいただくと見た目に涼しい気分になりますよね。でも人間の味覚は冷たすぎると鈍くなるのです。アイスクリームが溶けて液体になると、甘すぎてとても飲めませんが、凍っているとあまり甘さを感じないからおいしく感じますよね。お酒の場合も冷やし過ぎは味も香りも半減させてしまいます。冷酒としていただく場合も、直前に冷蔵庫から出して少し温度を上げる、もし可能であれば片口などの酒器に移し変えて少し空気に触れさせると、香りも味もよりよく感じられます。聞いただけで暑くなりそうですが、「真夏の燗酒」も血液循環を良くしてくれるのでオススメですよ。
2004.07.02
江戸の酒の消費
時代劇では、人々が往来を行きかい、飲食店、小売店が立ち並ぶ江戸の町並みが映し出されています。本当にそうだったのかと疑問に思いましたが、実はかなり実際に近いものだったようです。現代では外食に困らないある意味便利な時代ですが、江戸の外食産業もなかなか発展していたようで、今ではおなじみの居酒屋も当時から存在していました。外で酒を飲む習慣も今以上に定着していたようです。
酒はハレの時だけの特別なものから、時代の変遷と共に庶民の嗜好品にまで広まり、その消費量も飲酒人口一人当たり一日三合という説もありその飲みっぷりには驚きです。時代劇中エキストラ演じる昼間の酔っ払いも実際にいたのでしょうね。
2004.07.16
小学生の酒蔵見学
酒蔵見学というとお酒の飲める大人の楽しみと思いますが、小学生のお客様も多いのです。この辺では田んぼがあるので、田植えの時期には子供たちが田んぼの泥に奮闘している姿を見かけます。近くに田んぼがなくてもバケツで稲を作ったりしている都心の学校も多いと聞いています。米を育てた関連で、お米は食用以外にどう使われるのかを調べにお酒の飲めない子供たちが酒蔵へ調べにくるのです。学校で米作りをして、酒の造り方を調べたと聞くと年配の方にとってはそれは勉強なのかと驚かれると思います。これも食に対する教育が改めて必要な時代においてひとつの勉強なのでしょう。昔酒蔵を見たことがあるな、と大人になって思い出してくれればいいなと思いつつ説明しています。
2004.08.06
稲の花と台風
飯米の稲の花が咲き始めました。穂が出ると同時に開花します。花びらはなくおしべが六本、開花はたった数時間です。雨が降っていると花は咲きません。晴れた日の午前中、環境の良い時を選んで咲きます。お盆をはさんだこの時期は稲にとって実をつけるために受粉をする大切な時期です。
山田錦など晩生の品種はまだまだ花の時期ではなく、いまだ伸び盛り。この頃から酒米の背丈が普通の米をぐんと追い越し大きくなっていきます。先般の台風では、夏子の酒のモデルとなった酒蔵が甚大な被害をうけたそうです。きっと周りの稲にも影響があることでしょう。自然は人知の及ばぬところ、これから台風の季節なんとか無事に育って欲しいと願うばかりです。
2004.08.20
秋の気配
残暑の中にも時折秋の気配を感じられるようになってきました。たんぼでは夏の間日差しを十分に浴びた稲が順調に育っています。早稲の「亀の尾」はすでにかなり実をつけ頭を垂れ、一方晩稲の「山田錦・雄町」はようやく花の時期を迎えたところです。
この時期の田んぼは早稲と晩稲の生長の差が歴然としていて面白い光景です。田んぼを散歩している人々が「あの色の違う稲はなんだろうね」といっているのを聞くと説明したくなるのを我慢しています。
今年も恒例「今泉地区かかしまつり」が開催されますのでかかしを見がてら酒米の様子も覗きに来て下さいね。
2004.09.03
風情のある燗酒
最近、燗酒を見直そう、ということを蔵内やお客様とよく話をしています。
よく居酒屋さんでお燗のお酒を注文するととても熱い燗酒が出てきたり、好みのお酒を燗でオーダーするとこの酒は冷酒用と言われ燗して頂けなかったりと、燗酒が少し粗末に扱われているような気がします。
昔は居酒屋にはお燗番の方が必ずいたそうですが、お燗をするときの温度にも日本らしい綺麗な言葉があるようです。温度が低いほうから、日向燗(30度)、人肌燗(35度)、ぬる燗(40度)、上燗(45度)、あつ燗(50度)、飛び切り燗(55度以上)とあるそうです。こんな風情のある言葉で美味しい燗酒を楽しみたいものですね。
2004.09.14
10月1日は日本酒の日
今日10月1日は「日本酒の日」です。
語呂が合うわけではないし何故?と思いますよね。十月は十二支の十番目・酉の月、「酉」の字はお酒を表す象形文字であることから、十月がお酒の月、10月1日が日本酒の日となりました。この時期は新米が収穫されて、蔵人たちも集まりいよいよ酒造りの始まりという気分も盛り上がります。この時期は新酒誕生から半年、夏を越えてまろやかさが増し、酒の味が上がるいい頃合です。
この時期の晴れ渡った青空を「秋晴れ」といいますが、お酒の味が良くなることは「秋上がり」と呼びます。秋の味覚に旨い酒、秋の夜長を日本酒で楽しんで下さい。
2004.10.01
台風とたんぼの有難さ
酒米の収穫間近というところで直撃台風が来てしまいました。山田錦、雄町はかろうじてたっている状態のものもありますが、台風後の天気が回復すれば稲穂も乾き倒れずにすむので、立て続けの台風や長い秋雨がないことを祈るばかりです。
大雨の時、田んぼには水がなみなみと満ちて、用水路は物凄い勢いで水がながれていました。アスファルトの地面では水は染み込まないので、高きから低きに流れ、水が集中し冠水する被害が都市部にはよくみられます。米を収穫するという事以外にも、田んぼには様々な機能や恩恵があると言われていますが、今回の台風では水害を防いでくれる田んぼのありがたさを切実に感じました。2004.10.15
ハレルヤの会〜稲刈り〜
十月の終わり、ハレルヤの会の稲刈りが行われました。秋の薄日射す中、総勢200人、みんなで六月に一本一本植えた稲を、今度は大きくなった株ごとに鎌を入れて行きます。小さな苗が大きく育ち立派に実った様子に、収穫の喜び実感しながら夢中で作業をしました。
年々大きくなってゆくこの栽培会にうれしい悲鳴を上げているのは、お昼を担当しているスタッフ。お昼に豚汁と新米のおにぎりを用意するのですが、炊いた米はナント一斗九升!ちょっと想像つかない量ですよね。家庭の一升炊きの電気釜なら19回分の量です。
収穫の満足感、田んぼの生物たちに喜ぶ子供達の歓声、ほろ酔い気分の笑い声、とてもよい秋の一日でした。
2004.10.30
もうすぐ新酒です
もうすぐ今年初めての新酒が上がります。初物好きな日本人の例にもれず、いまかいまかと待ち遠しくカレンダーを眺めています。最初にでる「おり酒」(にごり酒ともいわれます)は、もろみがそのままにかなり近い状態なので、中では酵母がまだ生き残っています。シュワっとあがる細かな気泡の正体は、酵母がアルコールを出す際に同時に排出した二酸化炭素。生きた酵母の息遣いが感じられるようです。このように生のまま、酵母が生きている濁り酒のことを、特に活性清酒と呼びます。ほのかな甘みとピリットした炭酸。蔵でタンクの中のもろみを味わうのと同じ感覚です。
2004.11.16
杉玉
師走の声を聞いて幾分寒くくなってきました。寒いのは苦手ですが、やっと酒造りの季節らしくなってきたなと安心しています。
ところで、造り酒屋の軒先の丸い大きな玉、見たことありますか?あれは「杉玉」といって杉の葉で作った玉で「酒林」とも呼ばれますが、新酒が出来た際に、緑の新しいものに付け替えるのが昔からの慣わしです。今年も手作りの杉玉がなんとか新酒発売に間に合いました。この意味を知っていて、通りすがりに新酒を求めて来られる方もあり、作った甲斐があって嬉しいです。
ちなみに、去年はこの時期の杉にはまだ花芽は付いていなかったのですが、今年の杉の葉は蕾がすでに膨らんでいました。きっと飛び始めも早いかもしれないですね。
2004.12.03
いづみ橋の手造り
昔は朝の蒸米作業のために薪を燃していたので、釜屋さんは夜中三時ごろから火を焚き蒸気を上げて準備していたそうです。今ではバーナーを使っているので早朝5時30分のスイッチひとつで着火です。便利さという点では、日常生活同様、酒造りもさまざまな機械が導入されていますが、やはり大事な部分は昔ながらの手法にこだわっています。
いづみ橋では酒を絞る方法も、昔ながらの袋絞りで行っています。袋で絞ったお酒は酒袋の布目を通り抜けた細かい粕の粒子が混ざっているので、霞が漂うように薄く濁っています。このままビンに詰めて、皆さんに蔵で味わう新酒を体験してもらおうと、「えびな吟醸 うすにごり」発売中です。
2004.12.17
山廃仕込み
お酒の元となる酒母つくりの段階で重要な働きをするのが乳酸菌です。乳酸菌は他の菌に脅かされないよう酵母を守る働きをします。昔ながらの「山廃仕込」ではまず天然の乳酸が発生するのを待ち、安全な環境が整った所で酵母を投入するので、通常の倍、約ひと月もの日数がかかります。手間のかかる方法ですがじっくりと待った分、酵母がいっぱい増えてコクのある力強い酒になるので、最近見直されています。2005年いづみ橋も「山廃仕込」を取り入れました。古きへの新しい試みです。
2005.01.12
冷酒と親の小言
冷酒と親の小言は後から効く、と昔からよく言います。口当たりがいいから勢いよく飲んでしまって、酔いを感じた頃にはかなりの量を飲んでしまっていた、なんて経験はお酒を飲む人ならば一度や二度あるのでは。江戸時代の医学論者・貝原益軒は、「およそ酒は温めて飲むべし」と記しています。ぬる燗は「腸を助け、気を巡らせる」と燗酒の効果を的確に説明しています。人肌程度の温度が一番胃で吸収されやすいので、すぐにお酒の酔いを感じ、飲みすぎ防止にはよい飲み方なのです。少し気が早いですが、夜桜見物は冷え込むので、ポットに燗酒を携えていくのも粋な計らいですね。
2005.03.08