【酒千一夜話】 1996.7〜1997.7

 酒蔵の季節感、蔵内での出来事、そして、耳よりな情報をお届けするエッセイ集です。是非ご覧下さい。 隔週更新。

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第1話〜30話

第 1話 大和の地酒『泉の森』 第16話 「お不動さま」のはなし
第 2話 大和産の米で醸造 第17話 甑(こしき)倒し
第 3話 酒の五味と人の五み 第18話 皆造検査
第 4話 口で噛んで発酵 第19話 「吟の泉」が優等賞
第 5話 江戸のベンチャービジネス 第20話 酒米の種蒔
第 6話 丹波山系の伏流水を使用 第21話 八丈島の島酒
第 7話 もろみを味わう「おり酒」 第22話 2年目の田植え会
第 8話 純米酒にも苦難の時 第23話 古酒の話(その1)
第 9話 「杜氏集団」 第24話 古酒の話(その2)
第10話 ものをつくる喜び 第25話 仕込みの水のはなし
第11話 日本酒の種類 第26話 有機栽培の力強い味方
第12話 酒造の見学 第27話 おいしい粕漬けのつくり方
第13話 女性の研修生 第28話 「お燗」で楽しむ酒
第14話 酒の名前 第29話 大和の酒米と水から誕生
第15話 あなたの酒を造ろう 第30話 稲刈りと芋煮会

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第1話

大和の地酒『泉の森』


 はじめまして、「泉橋酒造」です。当社は安政4年(1857)の創業以来、地元の土と水と空気の中で育まれた酒を皆様にお届けしています。今回はその中の一つ、『吟醸大和泉の森』を紹介いたします。

 大和を代表する公園「泉の森」をモチーフにしたこのお酒は、神奈川県産酒造好適米「若水」を厳寒の一月に選び、高度な精白と低温発酵の技術を駆使し、ゆっくりと手塩にかけて造りあげたものです。

まさに手造りでしか造り得ない、お酒の芸術品として自信を持っています。自然あふれる泉の森にふさわしい豊か香りと優しい口当たりを持ち、心やすらぐひとときの最高の友となります。『泉の森』の味わいをぜひお楽しみください。

 また、お中元やお土産に、大和で生まれ育った地酒としてもご利用を。大和市内の酒店のみで販売しています。

 1996.7.11

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第2話

大和産の米で醸造


 「吟醸 大和泉の森」は大和の泉の森をモチーフに、昨秋、大和市で限定販売されている純米酒です。その原料米が、今春、市内の農家で作付けされました。関水博行さんと荒井隆雄さんが生産する酒米「日本晴」です。

 酒の命は水と米。創業140年の伝統の中で培われた技を駆使して、丹沢の豊富な湧水と地元で丹精込めて育てられた酒米で造られる「吟醸 大和泉の森」は、名実ともに大和特産の地酒となります。

 口あたりの優しさと芳醇な香りに人気のある「泉の森」を、ワイン感覚でぜひお楽しみください。大和市内の酒店限定販売です。

 1996.7.25

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第3話

酒の五味と人の五み


 「甘口」「辛口」ということがお酒ではよく言われます。お酒には甘・酸・苦・渋・辛の五味があり、この五味のバランスによって甘口、辛口が作られます。どちらのタイプであっても、この五味がほど良く調和しているものが良いお酒となります。

 前回紹介した大和市限定販売の「吟醸大和泉の森」は、甘と酸にポイントをおいた口当たりのさわやかさが特徴となっています。

ところで人には、そねみ・ねたみ・うらやみ・やっかみ・ひがみの五みがあるそうです。複雑な人間関係の中にあって、日本酒の深い味わいは、ますます生きてくるようです。

 1996.8.8

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第4話

口で噛んで発酵


 日本で最も古い酒の痕跡は、約5千年前の縄文時代中期の遺跡から発見された土器にあります。この土器の底にはヤマブドウの種が付いており、ヤマブドウを仕込んで果実酒を作ったと考えられています。

 水稲農耕が定着した弥生時代に、米で作る酒が登場します。この頃は、加熱した穀物を口でよく噛み、唾液の酵素(ジアスターゼ)で糖化したものを、野性酵母によって発酵させる「口噛み」という方法で酒を作りました。酒を作ることを「醸す(かもす)」といいますが、語源は「噛む」からきていると言われます。

 酒の登場は、おそらく偶然の発見なのでしょうが、人の心をまたたく間にとらえ、何千年にわたり人々の生活に潤いを与えてきたのでしょう。

 1996.8.29

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第5話

江戸のベンチャービジネス


 当社は1857年(江戸安政4年)に営業を始めました。このころは米の豊作が相次ぎ、江戸幕府が米を造ることを奨励した時期だったそうです。
 創業者の橋場友八(はしばともはち)は、親の反対にもかかわらず造り酒屋を始めました。当時の世の中から考えると、酒造りを始めるということは現代に置き換えると最先端のバイオ産業に参入することであり、酒を腐らせる率も高く失敗の危険を伴う商売でした。当社のスタートはまさにベンチャービジネスだったようです。

 今では老舗といわれ、伝統の技術を守り続けていますが、一方、時代に応える新しい製品の開発や技術を導入し、ベンチャーの精神は失っていないと自負しています。

 1996.9.12

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第6話

丹波山系の伏流水を使用


 酒造りで最も重要な要素の一つが「水」です。
 交通網の発達した現代では米や人間(杜氏たち)は簡単に移動できますが、大量に使い、質を問われる水はそうはいきません。どの酒蔵も酒の八割を占める水が酒造りの基本となります。

 海老名市は丹沢山系の地層を通過して豊富に湧出する伏流水があります。この伏流水を地下75mから汲み上げた泉橋の水は、まさに当社の命です。
 複雑な地層を通過しているため鉄分などの酒にとっての有害な成分もなく、カルシウム、マグネシウムを適度に含んだ軟水(硬度8)で、当社の特長である「辛口に造っても辛く感じさせない、ソフトでまろやかな味」の源になっています。

 1996.9.26

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第7話

もろみを味わう「おり酒」


 現在当社では酒質の異なる15タイプの清酒を出荷しています。その中の一つ、1967年(昭和42年)から出荷しているちょっと変わり種の「おり酒」(活性清酒)を紹介します。

 酒の仕込み中に口に含む「もろみ」は非常に美味なものです。
 この「もろみ」の味わいを楽しんでもらいたいと、杜氏に相談してこの製品を考え出しました。しかし火入れをしない「もろみ」のまま市場へ出荷するため、管理の悪い酒販店では、発酵したガスで栓が飛んでしまうことが相次ぎました。

 現在では発生する炭酸量を押さえる技術開発に成功し、また補足としてビンの栓にガス抜き穴をつける工夫で、ほぼ解決することができました。
 発売以来、30年なまのまま出荷しています。

 1996.10.10

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第8話

「純米酒」にも苦難の時


 米と米麹だけでつくる「純米酒」は、コクと深い味わいのあるお酒として、昨今すっかり人気ものになっています。当社でも全生産量の半分が純米酒です。
 しかしこの純米酒にも苦難の時がありました。1973年(昭和48年)、販売を始め、新聞に広告を入れ注目は浴びたのですが、まだ珍しい純米酒を消費者に認知してもらえず、それほど売れませんでした。

 純米酒として造った酒の80%は普通酒のラベルを貼って、涙をのんで出荷しました。現在はもちろん当社の立派な定番商品に育っています。
 昭和60年には吟醸造り(米の表層部の40%以上を磨いて造る酒)に変更しています。

  1996.10.24

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第9話

「杜氏集団」


 酒造りの現場で、その工程を仕切り、一切の責任を負うのは「杜氏(とうじ)」です。杜氏のもとには「杜氏集団」と呼ばれる各分野の専門家「頭」「麹屋」「モト屋」「釜屋」がいます。頭はもろみの管理と杜氏の補佐役、麹屋は室内での麹造りの責任者、モト屋は酒母造りの責任者、釜屋は洗米と蒸きょうの専門家です。

 当社では、南部杜氏発祥の地である岩手県石鳥谷町から小原彦人さんを杜氏として迎えています。
 酒は麹菌や酵母といった微生物を操って醸すもので、その年の米のできや水、天候によっても影響を受けます。このような状況の中で良い酒を造るには、どんなに醸造工程が機械化されていても、杜氏集団の長年の経験と勘が重要です。当社の酒も5人の杜氏集団の手で支えられています。

 1996.11.14

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第10話

ものをつくる喜び


 当社の杜氏、現在53歳の小原彦人さんが酒造りの世界に足を踏み入れたのは21歳の時。雑用係でスタートして、31歳で杜氏選考試験に受かり、あるメーカーに勤めたとのこと。

 仕事に物足りなさを感じていたときに、東京竜野川の醸造試験所に入所したのが36歳。ここでは東大卒のエリート達が、まだ珍しかった大吟醸(酒造好適米だけを使い、米の表層部を70%以上磨いて造る酒)の研究に取り組んでいて、毎日毎晩が造りと研究、そして大意見交換会。

 小原さんはここで「もの(大吟醸)をつくる喜び」を感じたそうです。ここでの先生方の研究が、現在の大吟醸の普及の基礎となっているのですが、小原さんはその場に居合わせた幸運をつくづく語ってくれます。

 1996.11.28

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第11話

日本酒の種類


 師走の寒空には日本酒がよく似合う。今回は日本酒あれこれです。

吟醸酒 酒造りに最も適するという米だけを40%以上も磨いて造ったお酒で、新鮮な果実にも似た味と香りが軽やかです。

純米酒 日本酒の原点とも言える米と米麹だけで造ったお酒で、コクのある深い味わいを楽しめます。

本醸造酒 米と米麹に味の調整のための醸造アルコールを加えたスッキリとした味わいが特徴のお酒です。

普通酒 糖類を加えるなどそれぞれの蔵元によりバラエティーに富んだ味が楽しめます。

生酒・生貯蔵酒 一般的な清酒が二回の加熱雑菌処理をしているのに対し、加熱処理を全くしないのが生酒、ビン詰の際に加熱処理をするのが生貯蔵酒。搾りたての風味が生きます。

 あれこれ考えながら飲み比べるとお酒もついつい進みますね。

 1996.12.12

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第12話

酒造の見学


 今回は、よく問い合わせがあります酒造りの見学についてです。

 一年中見学は受け付けているのですが、特にこの時期は仕込みの真っ最中だけに見学にいらっしゃる方たちも気合いが入っています。

 皆さんがよく驚かれるのは、半分以上に精米された真珠のようなお米、杉の香りが心地よい麹室、酵母が呼吸している姿を実感できるもろみタンク、そしてふなくちで味わう搾りたてのお酒などです。

 興味あるかたは前もってお電話ください。
 一度に見学可能な人数は30人くらいです。場所は国道246号の下今泉交差点の北側で、高い煙突が目印になると思います。
 (問)0462-31-1338

 1997.1.17

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第13話

女性の研修生


 少し前のことですが、泉橋に東京農大・醸造学科の研修生がきました。
無骨な男子学生と勝手に想像していた蔵人(くらびと)は、やってきたかわいい二人のお嬢さんにびっくり。学校では2リットル程度の小さいバケツを仕込みタンクに見立てて酒を造ったそうです。

 実際の造りは6000リットルのタンクですからスケールが違います。
2週間の研修期間の終わりには1日泊まり込み、夜も酒母(しゅぼ)の温度を測ったり、朝5時半から米を蒸したりと、蔵人の生活そのままを体験していました。

 彼女たちの研修レポートは我が社のホームページで紹介する予定です。

 1997.1.30

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第14話

「酒」の名前


 酒の蔵元は全国に約1700軒余あり、そこから約5000程の銘柄が発売されています。
どんな名前が多く使われているのかをみると、1位「山」2位「鶴」3位「正」4位「宗」5位「菊」となります。皆さんおなじみの銘柄にも使われていますね。泉橋の「泉」は8位、137銘柄に使われているそうです。

 ちなみに「いづみ橋」の由来ですが、下今泉に昔「泉川」という川が流れていて、その船着き場(橋場)辺りにあったためだと言われています。また「下今泉村の橋場酒造店」という意味でもあったようです。まさに地域に密着した地酒というわけですね。

 1997.2.20

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第15話

あなたの酒を造ろう


 「あなたの酒を造ろう」との呼びかけで集まった仲間と一緒に、初夏に田植えをし、秋に稲刈りをした酒米の仕込みが始まりました。

 収穫後出番を待っていた「日本晴」は52%に磨かれ、1月22日に米洗いを行い、現在醪(もろみ)になって約1週間経ちました。醪タンクの中でふつふつと盛んに泡を出し、力強く呼吸しています。

 見慣れた光景ですが、大騒ぎしながら泥まみれになった事、稲穂を手にした嬉しそうな笑顔が思い出されて特別な思いがします。

 これから30日後には、上槽を終えます。それまでに名前を決めるのですが、子供の名前を決めるのと同様難しく、苦戦中です。

 1997.2.27

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第16話

「お不動さま」のはなし


 この辺りで、古くから近所で続く行事の1つに「不動講」があります。お不動様は火の神様で、講のメンバーの家に順番に1カ月滞在し、毎月27日に皆で当番の家に集まり講を開くのです。

 全員が拍子木のようなものをカチカチと鳴らしながらお経を唱えます。講の後は近所の井戸端会議で楽しい時間です。

 講という言葉を聞いてなんと古めかしいと思いましたが、中を覗いてみれば、身近な神様を近所の仲間で信仰するという楽しみの1つだったのではないかと思います。

 各地である講も、消えつつあるようですが、気軽に楽しく続けていければいいですね。

 1997.3.13

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第17話

甑(こしき)倒し

 今年の酒の仕込みもいよいよ終わりに近づき、米を蒸すのに使う「甑(こしき)」を使う作業も3月15日で最後となりました。この甑をまた来年つかうまで横に倒しておくことから、この日に「甑倒し」のお祝いをします。

 今年の造りの無事を酒の神様・松尾様に感謝し、今年出来た酒を皆で楽しむ昔からある蔵の行事です。私にとって今年の造りの間は、新しく「酒友館」がオープンした事、多くの見学の方に来て頂いた事が、とても貴重な出会い・経験となりました。

 松尾様には、このことも含め、今年もおいしいお酒がいっぱいできたことを感謝したいと思います。


 1997.3.27

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第18話

皆造検査

 4月に入ると蔵での作業もほぼ終わりです。この時期、蔵では「皆造検査(かいぞうけんさ)」が行われます。これは文字どおりすべての造りが終わった時に行われる税務署による検査です。酒がどのくらいの量造られたかのかを主に検査するもので、酒の良し悪しをみるものではありません。これが終わるとやっと秋から続いた緊張が解けるようです。

 みんなで田植えから始めたお酒は、順調に製品かされ、参加者たちへのお披露目会を待っています。このお酒を飲んでみたい人は泉橋酒造「酒友館」で試飲かできます。

 1997.4.10

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第19話

「吟の泉」が優等賞

 酒造りも終わり、蔵人も皆故郷に帰り、蔵もひっそりとした雰囲気です。そのなか我が社の大吟醸「吟の泉」が今年も東京国税局の新酒鑑評会で「優等賞」を頂いたという嬉しい知らせが届きました。いいお酒を造ったという自信はあるものの、やはり賞として認められる事は嬉しいものです。

 毎年この時期発表ですが、いつ発表と決められている訳ではないため、来るかどうかわからない知らせを待つ事になり、落ちつきません。鑑評会出品酒は、先日瓶詰めされて出荷開始となりました。瓶詰めをしているときはいつも酒の香りが工場に漂っていますが、この大吟醸を詰めているときは、「あっ、今日は大吟醸をつめているな」とすぐにわかる程特別いい香りでした。


 1997.5.8

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第20話

酒米の種蒔


 5日のこどもの日に酒米の種蒔きをしました。今では稲の苗というと大体、機械で植えるための箱苗(機械にセットできるように長方形に揃えてあるもの)がおもですが、うちの酒米の田植えは人の手で行うので地面に苗床を作り、直接種を蒔きます。これは酒米は普通の米よりも粒が大きくなるため、丈夫な稲に育てなければせっかく実っても倒伏してしまうからです。

 台風の風雨にも負けないしっかりした根茎になるように一本一本手で植えるのです。昨年初めて自分たちで作った米からお酒をつくるという試みを行いましたが、予想以上に美味しい吟醸酒ができ、今年もいい米を作り、いい酒を造ろうと意気込んでいます。来月8日が田植えの予定です。それまでお日様の光をいっぱい浴びてすくすくと伸びることを祈って。

 1997.5.15

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第21話

八丈島の島酒


 先日私の母親の実家で結婚式があり、八丈島へ行ってきました。海産物の豊かな八丈島では「島寿司」といってわさびの代わりに和辛子を使った独特のお寿司や、また、島酒(しまざけ)という愛称で呼ばれる麦焼酎が私達を迎えてくれました。

 島内には日本酒の蔵はないけれど6つの焼酎蔵があるとのことです。もちろん、披露宴のお酒もこの島酒で、最近の披露宴には見られないくらい沢山のお酒を楽しんでいました。

 帰りの機中で叔父達が誇りをもって話してくれた島酒がちょっと羨ましく思えました。

 1997.6.12

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第22話

2年目の田植え会


 6月8日、2年目の「あなたの酒を造ろう」企画の田植え会が行われました。昨年を上回るほどの参加者が集まり、良いお天気にも恵まれ無事に酒米の植え付けが終わりました。

 田んぼの泥の感触は、その辺の土の感触とは違って粒子が細かくとても滑らかで、丁度エステで使う泥パックのような感じです。あの感触は2度と忘れられない何ともいえない気持ちよさだったと初めての田植え体験を語ってくれた方もいました。

 今年も有機栽培で稲を育ててゆくのですが、自然の環境に強く根を張り、豊かに実ることを祈りながら楽しい1日を過ごしました。

 1997.6.26

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第23話


古酒の話(その1)



 泉橋には市販されていない秘蔵の「12年古酒」があります。古酒というのは3年以上長期熟成させたお酒のことです。

 日本酒は一般的にフレッシュなものが好まれる傾向にあるようですが、古酒のファンも近年増えてきています。ある蔵では、一升5万円の15年古酒の予約が、造る前から入るそうです。随分気の長い話しですね。

 わが社の古酒は、12年前大吟醸を一升瓶から四合瓶に商品規格を変更した際、既に一升瓶に詰まっていた大吟醸酒をそのまま残し、今に至るものです。 長い年月を経て熟成された幅広い旨みを持つ、とても素晴らしい酒です

 1997.7.10

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第24話


古酒の話(その2)


 古酒は一般に普通の酒よりも色が濃く、褐色がかった色をしており、香りも強く、味は重厚で程よい苦みがあります。あえて例えるなら、シェリー酒や紹興酒といった感じでしょうか。熟成方法についてはまだ研究途中のようで、これからが楽しみな分野です。

 私も古酒にはまってしまった1人で古酒を見るとつい買ってしまいます。気に入った味に出会えたときは、うっとりするほどの幸せです。

 我が家では昨年、娘が生れた年の金賞受賞大吟醸を長期熟成用にとってあります。娘が20歳になった時にお祝いにプレゼントするつもりです。

 1997.7.17

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第25話

仕込みの水のはなし


 暑い日が続くとまた昨年の様な水不足が心配ですね。お酒の原料は主に米と水ですが、泉橋の仕込み水は丹沢山系の伏流水を地下75メートルから汲み上げた天然ミネラル水です。水は仕込みの他に洗米にも使うため、冬は1日に40トンもの大量の水を使用します。

 よく硬水、軟水という言葉を耳にすると思いますが、これはカルシウムやマグネシウムの含有量の違いで、多く含むと硬水、少ないと軟水に分類されます。泉橋の地下水は軟水に属し、軟水で仕込んだ酒はソフトで、新酒の頃から味が開くと言われています。逆に硬水の場合は、夏を越した秋上がりの酒が旨いとされます。

 1997.8.7

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第26話

有機栽培の力強い味方


 8月10日、田んぼの草とり会を行いました。皆で作る酒米は有機栽培で育てるので雑草とりも除草剤をまかずに人の手で取り除いてゆきます。

 泉橋で契約して「玉栄」という酒造好適米を作って頂いている滋賀県の農家では、有機栽培米を専門に行っていて、そこでは害虫・雑草対策に鴨に一役買ってもらっています。

 鴨は田んぼに生息するいろいろな害虫、どんどん生えてくる雑草を、その旺盛な食欲で処分してくれる上、稲は食べないのだそうです。稲作にこんなにも都合のよい適役が身近に存在するなんて不思議ですね。

1997.8.28

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第27話

おいしい粕漬けのつくり方


 今年も「ねり粕」の出荷の時期です。ねり粕はどのように使うのかという質問が多いので紹介します。 甘酒にする白い酒粕とは違い、ねり粕は、夏を越して発酵が進み、漬物に丁度良い風味になるのです。きゅうりや大根などの野菜を塩で揉んでしんなりさせ、粕の中に入れるだけで簡単にできます。

 好みで粕に砂糖を加えたり、漬けておく期間はご家庭によっていろいろのようです。我が家では野菜漬けよりも、鮭や鱈を漬けることが多いです。深めの容器に切り身と粕を平たく交互に重ねていきます。一週間位がちょうど食べ頃です。

1997.9.11

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第28話

「お燗」で楽しむ酒


 そろそろお燗(かん)が恋しくなる季節ですね。「燗」は世界でも珍しい飲み方です。燗の温度により、人肌燗、ぬる燗、あつ燗、そして度以上のとびきり燗と言われますが、どんな酒でも温めればよいという訳ではありません。お燗に適したお酒は、純米酒、本醸造、吟醸などで、いずれの場合も、人肌またはぬる燗がよいでしょう。

 お燗の仕方としては、電子レンジは急激な温度上昇で、お酒本来の味香を損なうため、面倒でも湯煎がいいようです。熱湯に一分半くらいで飲み頃のぬる燗酒の出来上がりです。日本酒はワイン等に比べて飲用温度が幅広いので、いろいろ楽しめます。

1997.9.25

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第29話

大和の酒米と水から誕生


 十月一日から吟醸「大和泉の森」が発売になりました。泉橋酒造で泉の森を出荷するのは今年で三年目ですが、今年は大和市の下和田地区で収穫した酒米「日本晴」を100パーセント使用している点が大きな特徴です。

 大和の米といってもあまりピンとこないかもしれませんが、きれいな水をたっぷりと使って稲を育てるために、何と地下百五メートルからの地下水を使っている気合いの入った田んぼで収穫されたもの。

 収穫した米は五〇パーセント精米され、昨年の冬に仕込まれたお酒に生まれ変わった後、半年間熟成されました。旨みを増した秋上がりの酒に仕上がり、自信を持って大和の地酒といえる味です。


1997.10.9

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第30話

稲刈りと芋煮会


 みんなで育ててきた酒米「日本晴」もいよいよ収穫の時期を迎え、十月十九日に稲刈りと芋煮会が行われました。参加者たちは自分で植えた苗が成長し、穂をたくさん実らせている様子に感激しながら、稲を鎌で1株づつ刈っていきます。収穫の後は芋煮会です。今日の収穫がどんな酒になるかそれぞれ思い描きながら、みんなで賑やかに鍋を囲んでたのしい時を過ごしました。

 十月より発売の吟醸「大和泉の森」の原料となっている酒米も、昨年に引き続き地元大和市内で生産されています。丁寧に育てられた稲の収穫は上々。これで来年もおいしいお酒が期待できそうです。


1997.10.23

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