勝沼土蔵長屋門

山梨県勝沼町、ぶどう畑が見渡せる小高い場所に広大な屋敷を持つ旧家辻家があります。
敷地内には大きな母屋があり、別棟に付属の建物のほか、古い土蔵が2棟ある。
今回、復元されたのは屋敷入口の梁間3.0間、桁行き13間の土蔵長屋門の復元工事である。
建築年数は辻家の方も良く分らない位古い建物で、何度もの修復を経ており、築150年以上と思われる。。

復元工事は長野県伊那市の且O心さんが担当され、
私共は埼玉から日帰りでこの後、工程の要所毎に講習方々復元の終わりまでお世話になる事になった。

平成16年冬、丸竹を縄で絡む木舞掻きから大きな長屋門の復元工事が始まった。
一度解体され、腐食部分の根継ぎ等があり、再度組み立てが終わり冬の寒い時期から木舞掻き作業が始まった。
同時に荒打ち用の土も作られ、藁の発酵を促すため、敷地内に囲いを作りプールされていた。
埼玉県の もの作り大学の生徒さん達も大勢参加されていた、
伝統ある工法を後世に残すために、建築家でもある辻ご夫妻の考え方は、我々職人だけでなく生徒たちのこれ以上ない教材になっていた。

四月に入り、凍る心配がなくなった時点で泥団子を打ちつけて下げ縄で押さえていく荒打ちが30人規模で二日間にわたり
賑やかに行われた。
NHK山梨のテレビカメラが工事の最初から取材に入っており、建物の要所と木舞作りの様子、荒打ちの様子など昔ながらの
工法で行われている珍しい復元の様子を撮影、後日全国ネットでその様子が放映された。

荒打ちが終わってから、約半年後、壁全体に縄を等間隔に巻きつけ、竹釘で絞めていくるタル巻き作業が行われ、
鉢巻き、水切り、飾り窓、入口兜型等の中塗り形成も順次行われ、少しずつ長屋門の形を成していった。
同時に建物に付属して屋敷を取り巻いている塀の仕上げ段取りがスムースに進行していった。
且O心さんのスタッフは、伝統工法で行われる土蔵工事に慣れており、澱みなく進んでいく段取りには
毎回感心させられる。

この後、数か月の乾燥機関があり、着工から一年近くになり、腰瓦貼付け、鉢巻き、壁の本漆喰上塗り、腰瓦のなまこ中塗り、
道路側に付けられている飾り窓仕上げ等、すべて黒銀南草の煮汁で作った漆喰を使い雲母で磨きこんだ眩しい程の
本磨き壁である。
細かい仕上げ作業が何度も続き
着工から約二年後、土蔵長屋門は写真のように復元された。

(有)稲垣左官工業所  高橋 孝喜