瀧澤家土蔵荒打ち研修に参加して


 今年4月、雪を頂いた中央アルプス駒ケ岳を望み、桜の咲き始めた長野県駒ヶ根市にて行われた土蔵荒打ちの研修に参加してきました。
 明治二年に建てられ、その後、一回の移築があり、今回で二回目の移築ということでしたが、古い木構造も強度的に問題無く分厚い落とし板、他、当時の部材をそのまま使用してありました。特に土の中に百数十年埋もれていたミネバリ(硬木を釘状にしたもの、水に入れると沈む)は新しいミネバリと比較しても何ら問題も無く、下地の一部に打ち込まれていた。  

 ミーティングの後、朝8時より主催された滝澤氏、且O心の会長をはじめとする社員、
蔵の町須坂市から参加された方々、私共3人を加えた総勢30人で開始された。

 ハリネズミのようにミネバリが打ち込まれた(増築部の一部は丸竹木舞下地)下地面に荒木田土と長藁ツタ(10cm)を混ぜた壁土をダンゴ状にして手渡しで
厚さ
80100を目処にして打ち付け、一区切り終わるごとに縦等間隔に荒縄を張り土を押さえて締めていく。
素手作業のため手が冷たく、藁にこすれて痛い。
平壁面荒打ちは午前中に完了した。
 午後はハチマキ荒打ちと平壁面の大斑取り作業に分かれて行なわれ、ハチマキは壁面より更に土を厚く打ち付け、予め等間隔に配置しておいた縄で押さえミネバリに絡みながら下から土を支えるようにして縄を編みながら締め込んでいく。
壁面斑直しは同材料を鏝で付塗りして平滑に直しその後、一定間隔に鏝の刃部分で深く押さえ縄締めを行う。

 戸前、扉の土下塗りを行い
100年以上保たせる土蔵の芯を作る作業は3時過ぎに終了した。
荒打ちは住宅の上棟と同じという事で施主様の接待を受けて午後4時頃帰途についた。
土蔵は半年後、タル巻き作業から始まり、仕上がるまで二年がかりの長い工程に入る。
 今回の研修課題には
1.ミネバリ下地
2.丸竹木舞下地
3.戸前、扉
4.一部タル巻き
4点があり、通常は極めて頻度の少ない作業を一度にまとめて設定されており
研修課題として高度な内容であり、主催された滝沢氏、且O心 会長のご配慮に改めて感謝申し上げます。


(有)稲垣左官工業所 高橋孝喜