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<東海自然歩道・大阪から東京へ>

東 海(前 編) ・・・三重県・湯の山温泉から愛知県・定光寺
期 間:平成14年5月17日から5月28日

 
 
1 はじめに
 第1回目の試行で予想通りの成果、即ち1)静かな山旅、2)新鮮な空気と湧き水、に恵まれて自然を満喫することが出来た。
 今回も同様の豊かな追体験を期待して池袋から夜行バスで前回下山した四日市へ向かった。今回は湯ノ山温泉から愛知県・定光寺駅まで258Kmのトレースをして、中央本線・定光寺駅から名古屋へ出て高速ハイウエイバスで帰京したい。  
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
  2 行動の記録  総距離266Km―総行動78時間30分 (実績値)
 第1日目 5月18日(天気 雨後曇):近鉄・四日市駅から水晶キャンプ場設営。
                         (距離19Km)行動7時間20分。 
 
前回の入山日と同様に<今にも雨が降りそうな>雰囲気だ。「初日から雨天のテント泊は厳しいナ・・・」と懸念していたがポンチョを被るほどの降雨もなく10時ごろに止んでホッとする。
 今日のトレイルは東海自然歩道のモデル・コースになっているとかで未舗装の山道は下草も刈られてサッパリしていて救われる。<イノシシの踊り場>と呼ばれる風越峠を越えて朝明川へ下る。雨は止んだが昨日からの降雨で川は増水して渡渉用の飛び石も水面下になっている。
 靴を脱ぎ慎重に渡って尾高山の裾野を再び歩き出す。
 聖徳太子が開山したと云われる福王神社へはトレイルから逸れているので参拝せずに先へ進む。今日は高度差150m程度の登降を3回(希望荘、風越峠、福王・町境)繰り返し、ザックの重さにウンザリしてようやく設営予定地の水晶キャンプ場に着いた。シーズンオフで無人のキャンプ場は貸切になる。

第2日目 5月19日(天気 雨後曇):水晶キャンプ場から川原小分校設営。
                        (距離26Km)行動8時間。
 
2時間程歩くと雨は本降りになる。ポンチョを被ると気温が高いので蒸れてメガネがくもり不愉快だ。更にトレイルは山里の舗装林道主体で車は少ないが歩き難い<自然歩道ではなく自然舗装道ダ!>と嫌味を云ってウップンを晴らす。養老山地の東面には適当なハイキング道がないのだろうが三岐鉄道沿い5kmの県道歩きは無理がある。
 終日の舗装道歩きに疑問を感じつつ設営予定地の川原集落に着く。テントを川原小分校の校庭の隅に張る。この学校は木造平屋の典型的な<田舎の学校>で下駄箱には27人の生徒名がひらがなで表示されていた。


第3日目 5月20日(天気 晴):川原小から竜泉寺設営。
                     (距離23Km)行動7時間20分。 
 
今日からしばらく天気が安定しているとの予報で助かる。朝から高度差500mの川原峠越えにかかる。舗装道からは開放されたが登降路とも丸太の階段の連続で「サー歩け!」と云われているようで趣がない。これはトロッコの軌道歩きに似て自分のピッチと違う歩幅を強制されて疲れる。
 昨日の舗装道歩きもあり<この県の責任者は山歩きをしていない人ダ>と思いたくなる。それでも標識板は完備しているので一度も迷うことなく養老公園に着く。
 更に1時間進んで今日の設営地・竜泉寺の集落に着きテント地を探すとトレイル脇にゲートボール場兼某陸軍大将・慰霊塔広場があった。ゲームをしていたリーダーさんに「今夜テントを張らして下さい」と申し込む。
 テントを張っていたら休憩中のバーチャンが「こんなのに寝るのネ・・・」「初めて見るが中はドーなってる?」と覗きに来た。ここでも女性の社交性と逞しさを感じた。

第4日目 5月21日(天気 曇):竜泉寺から伊富岐神社設営。
                     (距離27Km)行動7時間30分。 
 
ガイドブックによれば、今日も終日舗装道に付き合わされるようだが田植えが済んで爽やかな風が幼い苗を撫でる景色に救われる。旧伊勢街道から牧田川に掛かる広瀬橋、藤古川の新藤古川橋を渡り今須川沿いの県道220号線を進む。
 平井部落の手前で対向側から走って来た自転車で旅行中のおじさんが「おはよう!」と云ってスピードを落として「ハイ!これ食べて」とメロンパンを渡してくれた。歩き初めて3時間ほどで腹が減っているのが解ったのかもしれない。ともあれ、お礼を云ってありがたく受け取る。
松尾山を越えると関ケ原の町に出る。トレイルは進行方向と逆にU字形に一旦戻り気味に関ケ原ビジターセンター、関ケ原ウオーランドを通るので縦走気分を殺ぐわれる。
 予定では古戦場付近に設営するつもりだったが時間が早いので先へ進む。関ケ原の町を過ぎて1時間後に田んぼの中の伊富岐神社に着く。境内の水道が使えるので神社の裏手にテント場所を確保。

第5日目 5月22日(天気 晴):伊富岐神社から六合・上ガ流部落設営。
                     (距離22Km)行動6時間40分。 
 
昨日に続き今日も舗装道から開放されず足底の疲れも貯まって来た。ショックを少しでも和らげるように路肩の草地を選んで歩く。
 今回最大の登りである鍋倉山越えを明日に控え出来るだけ先へ進んでおきたい。設営予定地の霞間ガ渓を過ぎ4〜7世紀頃の古墳群・願成寺古墳を通り鍋倉山の取付点・六合集落へ着く。
 計画より4時間(15Km)先行しているので気分的に余裕が出来た。部落を過ぎた林道脇を整地してテントを張る。夏を思わせる好天気ので沢に下りて洗濯と行水をした。


第6日目 5月23日(天気 晴):六合上ガ流集落から東津汲集落設営。
                    (距離26Km)行動7時間。 
 
集落から1Km程林道谷山線を行くと山崩れで道は閉鎖。復旧中の工事現場を通り100m区間ガケ崩れのガラ場を越える。1時間進むと廃村となった谷山集落に着く。人の気配がするので良くみると半分朽ちたような民家の前に老婆が独り朝仕事をしていた。「・・おはようございます」と声をかけたらビックリしたような顔をして返事が返ってきた。
 集落から沢沿に1時間ほど進とやがて沢音も消えて急な尾根道になる。途中で路脇からキジが飛び立ったので覗いてみると巣に3ケの玉子があった。
 視界が開けて立派な避難小屋が建つ南峰に着く。ここから平坦な尾根伝いに鍋倉山へ。山頂から日坂峠、美束分岐経由で600m高度を下げて日坂集落に着くと再び日坂川沿いの県道歩きが7Km続く。
 山越えをしてホッとした気分的だ。東津汲集落には村役場が置かれて食料店や食堂もあり、さっそく食料を補給。まだ午前中だが県道脇の空地にテントを張る。好天を幸いに洗濯と行水を済ませる。

第7日目 5月24日(天気 晴):東津汲集落から岐礼集落設営
                     (距離27Km)行動8時間。
 
今日最初の登りは下辻越だが食料と燃料が減ったせいかザックが軽い。昨日の鍋倉山の登りで体が慣れたのかも知れない。
峠から下ると上神原地区に入る。ガイドブックではここの横蔵寺には座禅僧のミイラが安置されているとのこと。由緒ある寺のようで広い敷地内には数堂の建物がある。
 2度目の登りは寺裏手から妙法ケ岳目指して450mの登りだ。途中50m程度の登降の繰り返しが数度あり疲れを誘う。
 妙法ケ岳を降り華厳寺から最後の登りの淀坂峠を過ぎて今夜の設営地を探しながら下る。岐礼集落手前の溜池の土手に手頃が空き地を見つけてテントを張る。

第8日目 5月25日(天気 晴):岐礼集落から三田洞キャンプ場設営。
                     (距離25Km)行動6時間30分。
 
30分程歩くと晴天を約束するような朝日が昇る。トレイルは朝日へ向かって神海集落、川内集落、南下して伊洞、下雛倉、中山集落へと続く。
 この付近は大垣市の北端で開けた風景だ。再び村山集落から東方へ進むと椿洞を経て今日の設営地・三田洞弘法に着く。ここには市営の三田洞神仏温泉がある。幸いキャンプ場が隣接しているのでテント代¥1,000−を払って早々に温泉に浸かる。
 終日舗装路歩きでウンザリしていたが、温泉で気分がスッキリした。

第9日目 5月26日(天気 晴):三田洞キャンプ場から各務原公園設営。
                     (距離24Km)行動6時間30分。 
 
キャンプ場の正式名は<ながら川ふれあいの森>で平成11年11月にオープンしたそうだ。自然歩道のトレイルも、施設の中を通り山稜沿いに付けられた標示板に従って高度を上げ大蔵山からは眼下の長良川が良く眺められる。                            
 千鳥橋で長良川を渡り、しばらく進むと名鉄美濃町線・下芥見駅に出る。ここまで来ると今回のトレースも終わりが見えてくる。東方へのトレイルに従って老洞峠へ向かうが、峠登り口で「全面通行禁止」の標示があった。
 近くのおじさんに聞いたら「3週間程前に付近一帯が山火事」で道路は落石で危険なので全面禁止らしい。
 迂回路もないので無視して進むと、峠付近1Kmの道路は落石が多い。黒焦げの樹林が痛ましく山火事の恐ろしさを身に感じた。24時間以上燃えてやっと鎮火そうで、峠を越えた川崎地区の民家の真じか迄被害になっている。
 設営予定地の各務原公園はテント設営禁止で、水だけもらい道路を挟んだ空き地にテントを張る。

第10日目 5月27日(天気 雨後曇):各務原公園から内津峠先1K先設営。
                         (距離34Km)行動10時間30分。 
 
入山時のスケジュールより1日短縮出来そうなので、今日はトレーニングを兼ねて長時間行動したい。下山地の定光寺駅まで47Kmある。
 帰京時のラッシュ・アワーを避けるため明日は出来るだけ早く電車に乗りたい。その為にも今日は出来るだけ距離を稼ぎたい。
 夜半から雨が降り出したが明日は下山するので、気にせずシュラーフで夜明けを待つ。ラジオの天気予報では「カミナリ警報」が出ている。
雨の中を久しぶりテント撤収して犬山市内へ向けて出発する。予報通り上空に稲光と雷音が響く。2時間ほどして雨は止みホッとしてトレイルを進む。
 犬山市内で標識を見失うが、木曾川の犬山橋を渡りユースホステルの近くで標識板と再会以降は寂光院、継鹿尾山を経て名鉄広見線・善師野駅へ進む。犬山橋から愛知県に入ると、トレイルは未舗装路が多なり山道を歩くことになる。又丸太の階段も意識してか知らないが側部が切れているので、少し狭いがそこを自分の歩幅で登降出来るのは助かる<山ヤにやさしい造り・・・>と楽しくなる。
 トレイルは駅手前の熊野神社から県営パイロット農場経由で入鹿池へと続く。クッションの効いた落葉路を進むと入鹿池の大橋の手前から五条川に沿った林道を奥へ。八曾気キャンプ場で設営しようと考えたが、2時間先の内津峠まで行けば明日が楽だから、まだ昼前なので先へ進むことにする。
 途中山頂を削り大掛かりな砕石工場がありトレイルが寸断されている。ヤブの道標を見落として、反対方向の工事路を降り今回始めてのミスをして30分ロスする。
 久しぶりの10時間行動でさすがに身体のあちこちから疲れ信号を出す。沢水を補給して30分程尾根筋を進み水場はないが南斜面の快適なテントサイトを見つける。

第11日目 5月28日(天気 晴):内津峠先1K先から定光寺下山・名古屋経由帰京
                     (距離13Km)行動3時間10分。 
 
いよいよ下山の日だ。荷物もすっかり軽くなりルンルン気分で出発。昨日から落葉路歩きで足の痛みも消えたようだ。弥勒山、道樹山の緩やかな尾根沿いに檜峠を経て、奥武蔵の雑木林を思わせる散策道を登降しながら「今回で全コースの半分が終わる」と満足感にひたりながら定光寺駅に着いた。
 無人の定光寺駅で体を拭き着替えを済ませて、朝の通勤者に混じって名古屋駅へ。名古屋駅で次回のコース資料を得るため、駅前の愛知中小企業センター内の観光課へ行ったが、希望する資料は品切れで入手出来なかった。
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 3 あとがき(反省と所感)
 初回と同様に今回もほとんど人に会わず静かな山歩きが出来た。終日新緑に囲まれて生命の息吹を強く感じた。コンセプトの“新鮮な空気と湧き水”も満喫出来て日常生活では味わえない充実した11日間であった。
 この基本要因は<テント泊>にあると思う。荷が重いとか炊事が大変等クリヤーすべき問題もあるがそれに勝る大きな利点を再認識した。いつまで体力と気力が耐えられるか!自信はないが日々少しずつトレーニングを重ねて1日でも長く<テント・バージョン>で活動したい。

1) 計画・行動について
 1−1)初回は1日の行動距離が25Km〜30Kmと厳しかったので、今回はコース間違いや悪天候を加味して24Km前後で予定を組んだ。結果は好天気に恵まれ又トレイルの間違いもなく1日短縮して踏破出来た。次回以降はトレイルの標高差を加えてスケジュールを組みたい。

1−2)行動時間はこれまで通り「早出早着」を守り起床3時、出発4時頃として7,8時間行動して昼頃にはテント地に到着。午後は翌日の為の休養時間とした。

1−3)「テント宿泊」の利点は上記の自由度が確保される事にある。又同じ時間行動しても早朝の1時間と夕方の1時間では身体に及ぼす疲労度は異なる。これは加齢に伴い更に重要になると思う(今回は入山時19Kg、下山時15Kg程度)。

1−4)行動中の休憩は1,5〜2時間前後に給水、3時間毎に間食を取るため5〜10分実施。20分以上の休憩は筋肉が固まりリズムを狂わすので避けた。
1−5)歩行速度は、急登降路以外は1分間100〜120歩(3、5〜4,5Km/Hr)。朝の歩き始めは84〜94歩で体を温める。

1−6)次回からのスケジュールは、これまでの実績を加味して2回でゴールしたい。中継点はは静岡県・久能尾が考えられるが、関東地区で高度差のあるトレイルの日数を検討して決めたい。
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