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<東海自然歩道・大阪から東京へ>

関 東 編 ・・・静岡県・久能尾から東京・高尾公園
期 間:平成14年10月16日から26日

 
 
1 はじめに
 過去3回のステージでトレイルの程度は解って来た。その資料によると今回は<距離は今までより短いが、丹沢山塊をはじめ前後も山岳トレイル>で登降差が大きく数も多いようだ。しかし、最終回のステージだから気合いを入れて入山しよう。
 気になる天気は、しばらく秋晴れが続いているので<このまま全日程が雨に降られず終わる>とは思えない。雨天日にうまく屋根のあるテント地を期待して早朝の東京駅から高速バスで静岡へ向かった
。 
 
  2 行動の記録  総距離241Km。総行動時間85時間30分(実績値)。

第1日目 10月16日(天気 晴):久能尾から大山尾根。
                             (距離9Km)行動3時間20分。
 予定では前回下山したバス終点の久能尾集落で設営のつもりだったが、秋晴れで時間も早いので<少しでも明日の行動を楽にしよう>と3時間ほど歩くことにする。
 バス停より標高差200mの尾根を越えて寺島集落に降り、坂本川の沢沿いに続く林道を進む。この道も大山の山頂へ向かっているがトレイルは幾度も林道を横切り直進登行気味になっている。
 日暮れは早く3時には夕方の気分になる。見晴らしの良い林道路肩の平坦な草地を見つけてテントを設営する。沢水も直ぐ近くにあり快適な一夜だ。

第2日目 10月17日(天気 晴):大山尾根から竜爪山尾根。
                            (距離19Km)行動7時間20分
 いつものことながら入山初日は寝付きが悪い。ウトウトして起床時間の3時を待つ。朝5時半頃夜明けを待って出発。1時間半の登りで大山山頂に着く<今日の登りはここだけ>であとは降りで気が楽になる。
 尾根伝いに水見峠まで標高差450m、更に栗島集落まで350m一気に下る。集落を過ぎて4km程先には油山温泉がある。<露天風呂有り・日帰り歓迎>の看板に足が止まりそうだ。「明日の為に先へ行こう・・」と素通りして次の登りの竜爪山へ向かう。
 安部川に架かる長い橋・曙橋からトレイルが続く標高差850mの竜爪山を眺める。川を渡り茶畑を縫うように作業坂道を進む。
 今夜の設営は尾根の途中になるので「水を確保しなければ・・」と焦るが、茶畑道には沢も人家もなく上方へと高度を上げ作業道から樹林帯の山道に入ると急斜面になる。
 このままでは<水>の可能性はない。幸い道からそれて<別荘風>の人家を見つけて、やっと確保出来てホッとして進む。急登が一段落した杉林の鞍部にテントを設営する。

第3日目 10月18日(天気 晴):竜爪山尾根から中島・設営。
                            (距離20Km)行動7時間20分。
 竜爪山は文殊岳と薬師岳のピークを持つ信仰の山で尾根筋に穂積神社がある。出発して1時間半登り二つのピークを越えて、秋草で隠された山道を下り神社に着く。
 由緒ある神社の風格が周囲の雰囲気にマッチして<歴史の重み>を感じる。「山旅の無事」を祈り、再び標高差500m下の西里集落へ向かう。昨日からセッセと登った高度を下げるのは惜しい気持ちだ。
 20軒ほどの西里集落には<人々の営み>を感じられ気持ちが和やらく。トレイルは集落から興津川に沿った林道を源流の田代峠へ向かう。途中、太平キャンプ場を通ったがシーズン・オフで人の気配はない。更に1時間程進んで林道脇の平坦地にテント地を見つける。
 3日目で身体のあちこちが<疲れ信号>を出して来た。疲れを少しでも和らげるべく近くの沢に入り衣服の洗濯と行水をする。

第4日目 10月19日(天気 曇):中島から井出駅手前・設営。
                            (距離21Km)行動8時間。
 田代峠までは林道歩きだからペンライトでも歩けるので今朝は早めに出発。1時間ほどライトを灯して歩く。田代峠でトレイルは静岡県から山梨県に入る。だんだんとゴールの高尾が見えて来た感じがする。
 峠を越えて身延線の井出駅まで22km。今日着くのはムリだろうから途中適当な時間にテント地を見つけよう。
 田代峠を越えた奥山温泉は湯量が豊富なのだろう駐車場脇に<犬温泉>と看板があり湯船に温泉が引かれている。湯温も適当で人の気配もないので「はります・・・」と独り言を云って10分ほど温泉を楽しむ。温泉は飲めるらしく洗い場にコップがあるので「ドレドレ」と試飲してみる。無味無臭で<暖かい沢水>と云った感じ。
 温泉で英気を養い先へ進む。徳間集落から3km先の鯨野集落まで小さな尾根を越すが堰堤の工事で途中からトレイル消えている。しばらく探すが判らず引き返し坂本の合流点まで尾根筋の県道を進む。
 坂本から又小さな尾根を越えるがこのトレイルも余り整備さていない。登り口の人家へ「お水下さい」と今夜の水をもらい途中でテントを張る。ラジオによると<今夜は雨>の予報だ。テントの周囲に溝を掘って雨対策をする。
 草むらに張ったせいか、山ヒルが<久しぶりに食料に有りつく>と何匹も押し寄せ駆除に苦労する。

第5日目 10月20日(天気 曇):井出駅手前から長者ケ岳尾根・設営。
                            (距離21Km)行動7時間50分。 
 深い山でもないので<暗くても大丈夫だろう>とライトを灯して早めに出発。林道が続いていると思っていたら下降路は山道に変わり安易な判断を悔やむ。それも樹林帯の急な降りでペンライトでは足元しか照らさず心もとない。
 ムリして下ると二股路に出る。広い作業道らしい方を2m進むと工事中らしく丸太を3本並べてあり先は見えない。「先はどうなっているかな?」と丸太に足を掛けた途端丸太が崩れ自分もズリ落ちる「ヤバイ!」と慌てて斜面から脱出するが落ちた時に左胸を丸太で打撲する。一寸息をする時痛みがあるが、歩けないほど痛まないので「ホツ」と一安心。<少々暗くても平気>と云った驕りを反省。
 30分程慎重に降り林道に出てすっかり明るくなった舗装道を先程の事故を反芻しながら井出駅に着く。
 駅から思親山(1,080m)まで標高差800mの登りが始まる。思親山は日蓮上人が両親を偲んだ由縁の地とか。今日は更に長者ケ岳の登りが待っているので気が重い。山頂から400m下り上佐野集落に着きここから再び900m高度を上げる。長者ケ岳までは届かないので、今日も途中の山腹に設営だから水を担いで登ることにする。
 水が増えると疲れた体にズッシリとくる。毎夜が山中設営のパターンになっているが、水の確保さえすれば、テント・スペースは案外多い。見晴らしが良く平坦地を探しながら高度を上げる。今夜は<ヒル>の訪問を受けたくないものだ。

第6日目
 10月21日(天気 雨):長者ケ岳尾根から朝霧・道の駅・設営。

                             (距離19Km)行動8時間。 
 夜半からの降雨は本降りで止みそうにない。「いよいよ雨か・・」と諦めてポンチョと傘をさす。急斜度の登行に2時間半喘ぎ、やっと天子ケ岳との分枝点のコルに着く。コルからは緩い尾根伝いに展望の良い長者ケ岳山頂に着く。晴れていれば富士山を眺められるのに残念だ。
 山頂で腹ごしらえをして降りにかかる。田貫湖まで下れば富士の広大な裾野になり、富士五湖の最初の本栖湖を目指して進む。
 一時止んでいた雨が再び本降りになる。加えて風も出て10月下旬の冷風雨はビショ濡れの身にこたえる。今日のテント地の割石峠まで田貫湖から18km・平担路とは云え厳しい。更にテントを張れるスペースと水を確保出来るか不明。
 幸い<道の駅>の道標を見つけてここへエスケープする。<朝霧高原・道の駅>で昼食と売店で身体を温めてやっと体の震えがおさまる。
 夕方3時まで道の駅で粘って、小降りになったので、近くの林道脇のスペースにテントを設営する。
 再び食料を仕入れに店にいくと、掃除のオジサンが「今日は雨だから大変ダネ・・」「エエ・・テントが濡れて雨は辛いデス」と云うと「店裏の屋根の軒にテント張っても良いヨ」と云ってくれた。好意を感謝して、テントを撤収軒下に移動する。一時はどうなるかとショボクレていたが<屋根の有難さ>に感謝する。

第7日目 10月22日(天気 晴):朝霧・道の駅から河口湖総合公園・設営。
                                                        (距離28Km)行動8時間40分。
 
昨日トレイルから外れて泊ったので、A沢貯水池へは行かず139号を歩いて割石峠からトレイルに入る。割石峠にも人家があり、屋根は期待出来ないが水は補給出来るようだ。139号からの車音が聞こえる距離を並行に本栖湖に尾根裾を進む。
 本栖湖から精進湖経由して自殺で有名な<青木ケ原樹海>に入る。所々に「自殺予防」のチラシ箱にある。
 樹海路と鳴沢氷穴で別れ西湖南の紅葉台、三湖台そして五湖台(足和田山)の見晴らし尾根を伝って東へ進む。天気が良いので、五湖台を下りた大和田のソバ店で昼食を取る。その間昨日の濡れ物を乾かすことが出来た。今夜のテント予定地の河口湖総合公園までは残り
1時間程だ。
 公園内の野球場のバックネット裏にテントを設営。夕方1km程町方面に行って大型スーパーから酒やら果物を仕入れる。午後4時過ぎにグランドが賑やかになったので、テントから覗くと少年サッカー・クラブの練習が始まる。
 日が暮れると夜間照明が灯され「8時ごろには終わるだろう」と思っていたら子供達が帰り大人のクラブ員の練習に変わる。掛け声やボールの音が10時まで続いて何時もは6時か7時には眠るので今夜は寝不足だ。


第8日目 10月23日(天気 曇):河口湖総合公園から大棚ノ頭・設営。
                             (距離27Km)行動8時間50分。
 トレイルは、138号沿いの遊歩道を進む。浅間神社の出口でトレイルを見失いウロウロ探すが判らず3km先の忍野入口まで138号を歩いてトレイルに合流する。生憎の曇天気で富士山は裾野しか見えない。
 忍野八海から山中湖の北面の大平山、平尾山の尾根伝いに進む。この付近は尾根の両側とも別荘地になっているが、バブル崩壊の影響か荒れた建物が目に付く。一見モダンな建物が朽ちているのは実に侘しい。
 同じ朽ちていても藁葺きの古い民家には<懐かしさ>を感じるのだが・・・。
 山中湖の東端からいよいよ丹沢山塊がはじまる。平野集落で水を補給して末端部の高指山に取り付く。
 丹沢はテント禁止になっているが、菰釣避難小屋まで今日は行けないので<緊急時だから・・>と言い訳をして大棚ノ頭付近で路脇にテントを設営。8日間歩いていて殆ど登山者に会わないのでトレイルは貸切の気分。
 明日から2日間は丹沢歩きになる。天候は雨の予報の上、標高差1000m級が幾つもあるので気を引き締めて歩こう。

第9日目 10月24日(天気 雨):大棚の頭から犬越路・設営。
                            (距離27Km)行動9時間50分。 
 雨の中、テントを撤収。小さなアップダウンを幾度も繰り返し菰釣山に着く。次の目標は城ケ尾山、更に畦ケ丸。熊笹がトレイルを被い雨で濡れると同じ位笹露で濡れる。
 畦ケ丸から2時間半下り箒沢キャンプ場に着く。予定ではここで設営するつもりだったが、明日の行動を考えて更に先へ進むことにする。
 白石沢沿いの林道を上流へ進み、用木沢出合から犬越路へ400mの登りになる。<避難小屋に天水があるだろう>と期待して出合で水を補給せず小屋に着いてみたら<水場は450m下の沢に有り>のメモにガッカリ。水なしでは炊事が出来ないので、疲れた気持ちにハッパをかけて往復40分かけて水汲みをした。
 タップリ歩いた上に、水汲みのアルバイトでキツイ一日だった。しかし、小屋に置かれた布団と毛布のお陰で今夜は暖かく寝れそうだ。

第10日目 10月25日(天気 晴):犬越路から石砂山尾根
                              (距離23Km)行動8時間20分。
 犬越路から1時間下って日陰沢橋から丹沢山塊最後の登りになる袖平山へ。標高差1000m急登の連続で足元がふらつく。風巻ノ頭を過ぎると斜度も緩くなり周囲を眺める余裕が出てくる。後半でザックが軽くなったのが幸いだ。
 袖平山から先は全体的に下りで道も整備されて歩き易い。焼山からはこれまで登った分を一気に下降して西野々集落に着く。
 これまでの緊張が一度に解けてトレースが終わったような気持だ。今夜も西野々の先3kmの石砂山の中復にテントを設営するので水を確保。山道を進み鉄塔下の芝生の平地にザックをおろす。
 明日は「たいした登降もなく23km歩けば高尾公園に着くだろう」と思うと喜びよりもホッとした気持ちが強い。

第11日目 10月26日(天気 雨):石砂山尾根から高尾公園
                              (距離27Km)行動9時間40分。
 「最後の日は晴れて欲しい」と期待していたが雨天のようだ。あちこち破れたポンチョを被り出発。30分登って石砂山山頂、30分降り篠原集落に到着。
 集落から石老山への登り口を間違え40分ロスする。早朝で人家も閉まっていて聞く事も出来ず。地図を見て現在地を確認するが新道が出来ていてハッキリしない。ようやく雨戸を明ける音を聞いて「登山口は何処ですか?」と聞く事が出来た。
 今までは、前日にジックリと地図を見てポイントを確認していたが、昨夜は省略したのが原因のようだ。
 1時間近くロスした焦りが、再度<道標を見忘れ>更に1時間ロスすることになる。トレイルは集落の途中から細い畦道を通り尾根に出て山頂へ行くのを、舗装した村道を直進してしまい。植林作業道に入って最後は沢沿いの急斜面で立往生する。一本道の為にだいぶ奥に行ってから気が付き、引き返してトレイルに戻るのに時間を喰ってしまう。
 再度の間違いにイライラしながら高尾公園を目指す。雨も本降りになり里山特有の複雑なトレイルに気持は萎える。
 鼠坂から嵐山へ登り、弁天橋へ一度降り最後登りで城山へ。晴れておればハイカーで賑わう城山山頂もガスで人の気配はなく沢山の長机だけが目につく。
 ザックを置く気にもなれずその間々<高尾山まで6,1k>の表示板に従い下る。雨は止んだが濃いガスの中ひたすら歩いて高尾山に目もくれず下山して終点の高尾登山口駅に到着。
 今日は、これまでになく大きなミスをして道草をした。自然歩道を完歩した喜びよりも「終わった」と云う気持ちと「不注意で怪我をしたり、道を間違えたり」で悔しさが強く爽やかな日でなかった。
 そんな訳で祝杯を挙げる気にもならず、早々に電車に乗って帰宅の途についた

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 3 あとがき教訓と所感
 10月の山は天気がくずれると順冬山になるのに、<これまでの延長だろう>と横着して入山して苦労した。特に冷雨はミゾレにも変わり安易なテント泊は無謀と云える。又、里山周辺でのトレイルは複雑になりがちだが資料で把握出来るのだから<現地で何とかなるだろう>と甘く見ないことだ。
 ともあれ、当初5回のステージで計画した本トレースも4回で完歩することが出来た。今回の教訓を忘れることなく次のステップに生かして行きたい。


1)行動について
 1−1)各4ステージのまとめ(距離・時間・日数)ると下記表の通り。最後のステージが丹沢山塊を歩いたせいか、時速2,8Kmで他のトレ−スよりだいぶ遅い。
 1−2)関東地区以外は<初めての土地>で興味があり、その分緊張してミスも少なかった。しかし、富士五湖以降は馴染みがあり興味も薄くなり<歩くのが面倒>な気持ちになった。<未知への憧れ>が行動の強い動機ずけになるようだ。今後も能力の範囲内で未知なものを求めて行きたい。
 1−3)その行動を<スポーツ>と捉えてみれば、スポーツの要素(心・体・技)を磨くことが肝要だろう。特に<心=精神>のトレーニングの養成が大切だと思う。加齢と共に体力の低下は避けられないが、それを補う為にも知恵を増やして行きたい。


ステージ


距離Km


行動時間

HR


行動日数


平均時速
Km/HR

1(箕面公園〜湯の山温泉)

259

73:50

11

3,5

2(湯の山温泉〜定光寺)

266

78:30

11

3,4

3(定光寺〜久能尾)

256

78:10

10

3,3

4(久能尾〜高尾公園)

241

85:30

11

2,8

  合   計

1、022

316

43

3,23

注:東海自然歩道は全長1,343kmと云われているが、複線トレイル、日帰時の入下山駅やバス停までの距離が含まれるので上記距離値と異なる。


2)食料・装備について
 2−1)ラーメンに餅を加えて(力・ラーメン)にしたら、餅がナベ底に付かず美味く出来た。
 2−2)夕飯(無洗米)量は100g(3掴み)で水は1,6倍程度。
 2−3)カンパンは非常食としたが、中食にヨーカンと同時に食べると甘味がカンパンに移り食べれた(カンパン1ケ10Kal)。
 2−4)コンロを昼食・夕食・朝食と3回使ったのでメタが不足した。(朝はコンロ無しの献立にしたい)。
 2−5)ガソリンは満タン+700cc使用した(100cc/日の目安)。
 2−6)気温が低いせいか、発汗が少なく洗濯は2回(靴下・下着)

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