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       中国自然歩道 ・一周コース
瀬戸内 コース 前 編 ・・・山口・秋吉台から広島・本郷駅
               期 間:平成22年4月1日から4月15日( 15日間)



山口県・大原ダム湖畔の2千本桜



 1 はじめに 
 2ケ月前に九州北部と中国自然歩道を歩く予定だったが、思わぬ悪天候で九州自然歩道だけで引き上げて来た。4月になれば「お天気も安定するだろう」と期待して中国自然歩道へ出かけることにした。
 中国自然歩道は、山陰と瀬戸内を結ぶ周回コースが設定され、今回は以前に辿った山陰コースとの分岐点・秋吉台から瀬戸内コースを東進して山口県、広島県を辿り、広島空港まで2週間の歩行。そして、次回の継続トレイルは、広島県、岡山県を経て鳥取県境の若杉峠まで行き山陰コースと合流したい。
 歩行の力点を高度(登山)から距離(ロングウオーク)へ展開してきたが、更に加齢と共に新たな「深さ」への歩行旅を模索したい。そうした意味で、今回はトレイルの途中で新入社員時代の寮の同室仲間k氏と旧交を温めるつもりだ。
 
歩行時のタイムやポイント等、テント利用者の参考用として「資料編」を作成する。



 2 トピック&スケッチ
 概略総距離=350Km (山口分145 km、広島分205km) (実績値)
 概略総標高差=6,300(山口 2,650m広島3,650m) (実績値)
 総行動時間=111時間分(山口48時間30分、広島 62時間30)
             (実績値・休憩時間除く)


 第1日目 4月1日(天気 ):山口宇部空港経由・秋吉台から・大田・道の駅
        距離:13km。行動時間:4時間(山口市内でのガス手配を含む)


 朝一番でフライトの空席割引を狙い、始発電車で羽田空港へ向かう。朝焼けが関西方面の天気のくずれを暗示。



 朝焼けの 都心を後に
 チェック・イン 
 雨の予報の 秋吉台へ
  

 






 バスの終点・秋吉洞から北方へ4km。小雨の中を進むと、ガスの切れ目から分岐点の長者ケ森が現れ、以前に歩いた記憶が蘇る。



 蘇る 濡れたベンチと
 道しるべ
 長者ケ森の 変わらぬ姿





 第2日目 4月2日(天気
 曇後晴):大田・道の駅から下田
               距離:30km。行動時間:9時間20分

 萩往環道路は江戸時代の初期から、萩~三田尻(防守市)間、12里(54km)を道幅2間の立派な街道として築かれた。今も一部整備され「ウオーキング・コース」なっていた。



 苔むした 萩往環道の
 石畳
 木洩れ日浴びて チラチラ踊る




 

 

 集落でトレイルが不明になり、近くの民家に聞くも留守が多くて要領えない。



 山麓の 民家たずねて
 道問えど 
 家人は留守で 犬に追われる







 第3日目
 4月3日(天気 快晴):下田から梶畑
                 距離:28km。行動時間:9時間
 日本一の規模を誇る宇宙基地のような仁保の衛星通信局は、周囲と別世界の空間だ。



 大空へ 巨大アンテナ
 対峙して
 ボーダーレスの 世界を築く


 




 第4日目4月4日(天気
):梶畑から長野山頂
              距離:22km。行動時間:7時間50分
   山間部の廃家が目立つ。県中央部の耕地は荒れ、取り巻く山地は自然へ還る。立派な舗装道路が衰退を促進しているのかも。



 放置した 人工林の
 味気なさ
 景観崩れ 地肌痛まし





 今週は花見シーズン真っ盛り。石舟温泉で疲れを癒し、極楽な日曜日となった。



 湯舟から 花見の出来る
 幸運に
 思わず漏らす ため息三度








 第5日目 4月5日(天気
 ):長野山頂から正下峠
               距離:32km。行動時間:9時間50分
 
   長野山から木谷川を下ると、小西、木地屋の集落は廃跡となっていた。この付近は平家落人の縁の里として歴史も古く、姫岩、鹿落の滝、そして平家岳、平家屋敷跡等がある。



 集落の 名前を残し
 人は去り
 家も耕地も 自然に還る





 山口県の山村・府内地区で「村おこし」の一環として「花まつり」を開催。休耕田を菜の花畑にして土手に芝桜、周囲の桜も映えて豊かな風景を提供していた。



 花まつり 菜の花 桜
 芝桜 
 揃って開花 春を満喫







 第6日目
 4月6日(天気 ):正下峠から道の駅・羅漢
                距離:26km。行動時間:8時間30分
   県境に位置する主峰・羅漢山は深い山奥にある。過って人々を育んで来た広い裾野には廃家が目立つ。



 朝モヤの 奥に聳える
 羅漢山
 朝日を受けて 今日の日祝う



九州と同様に中国地方の中央山地も山が深い。七重八重とまでは云えないが、幾重も山々が連がっている。羅漢山頂からの展望は見事な山波だ。



 大きさや 高さ競わず

 山々の
 たえなる姿 過去から未来へ






第7日目 4月7日(天気 
晴):道の駅・羅漢から佐伯区境
                距離:23km。行動時間:7時間10分
 

 大峰山麓の旧道は、栗栖から玖島まで小さな集落を東西に結ぶ。地元の人しか通らない閑散とした道だが、歴史漂う風格ある街道。



 沢沿いの 旧道行けば
 苔むした
 石垣残り 積人想う







 第8日目 4
月8日(天気 快晴):佐伯区境から魚切ダム下
                距離:24km。行動時間:7時間30分
  
 瀬戸内海を見下ろす極楽山まで、途中頻繁に「極楽」の標示がある。その度に、素晴らし浄土へ導かれる思いがした。



 極楽と 彫込文字の
 道しるべ
 人と自然の 絆を暗示





 



 第9日目 
月9日(天気 雨):魚切ダム下から広島広域公園
                距離:22km。行動時間:7時間

 窓ケ山から眼下に瀬戸内海が一望出来る。島の数が多くて海が狭く見えた。霞が晴れれば四国も見えるだろう。



 大小の 島々ぬって
 瀬戸内の
 海は四方へ 霞の中へ


 
 雨の日は、野営地探しに苦労する。山中には小屋はなく、市街地は私有地ばかりで屋根付き休憩舎は期待出来ない。ホームレスの悲哀を味わう。



 公園の 子供広場の
 滑り台
 雨はしのげど 下は浸水




 第10日目 4月10日(天気 
快晴):広島広域公園から菰口憩の森
                   距離:23km。行動時間:7時間

  広島市の北部・安佐南区はベットタウンとしてアクセスも便利になり快適な生活空間となっていた。



 過疎の地に 超高層の
 ビルが建ち
 高速道路で 市内と結ぶ








第11日
4月11日(天気 雨):菰口憩の森から絵下山入口バス停(k氏宅・宿泊)
               距離:26km。行動時間:8時間分
 トレイルの途中で、新入社員だった頃の寮同室の親友・kさんと再会して旧交を温めた。ご夫妻の歓待を受け、おかげで心豊な旅となった。



 心良く 迎えてくれた
 寮仲間
 つもる話は 尽きることなし



 




第12日目 4月12日(天気 
雨):絵下山入口バス停から灰ケ峰登山
                 距離:19km。行動時間:5時間50分 
 広島と呉市内を一望出来る絵下山も、雨天で視界ゼロ。山の周辺は都市開発で大きな団地が各所に出来、市内への通勤路が混み、朝夕のラッシュ渋滞が大変らしい。



 雨の日は 眼を休ませて
 沢音の
 調べ愉しみ 鳥の声聴く







第13日目
 4月13日(天気 ):灰ケ峰登山口から藤木
                 距離:26km。行動時間:8時間30分


 二級ダム直下から二級渓谷は始まる。増水した濁流は轟音を響かせて一気に深い渓谷を落下。名前は二級だが、迫力は一級と思えた。



 濁流は ぶつかり合って
 滝壺へ
 自然の力 轟わたる








第14日目
 4月14日(天気 快晴):藤木から本郷CC
                  距離:30km。行動時間:9時間40分


 野呂山の先で道に迷い、集落に降りて現在地を聴く。庭先の菜園で草採りをしていたオバーサンに問うが「ハー?耳が遠いので・・」と禅問答気味の会話。これも独り旅ならではの体験。



 出会旅 人と自然と

 吾自身
 一期一会の 光の中で






第15日目
 4月15日(天気 曇):本郷CCから本郷駅・・広島空港:帰宅 
                 
距離:6km。行動時間:1時間50分

 初発のフライト便が機体故障で運休となり、広島空港は大混乱。何とかシニヤ割引のチケットを入手したが、予定より2時間遅れて離陸。



 思惑は 外れるものと
 諦めて
 ロビーの隅で 荷物の整理








 
 3 あとがき(教訓と所感)

 1)例年になく4月になっても寒暖の差が大きく、夜間の冷え込みが厳しい日があった。それでも、日が長くなったので行動は楽だった。

 2)トレイルの整備状況は山口、広島両県とも一部を除いて完備。古道を辿るコースは趣があり訪問者も多いように思えた。又、ガイド資料も1/5万地図を利用してコースとタイムや距離を上書し実用性が高い。特に、休憩舎の表示は助かった。更に欲を云えば舗装路と山道(未舗装道)の区分け表示が欲しかった。
 
 3)今までも分割歩行パターン(一極集中でなく並列行動)が実情に即していると思っていたが、加齢と共に、心身のバランス感覚が老化し集中力が低下するので、長期間の負荷は故障の原因になので、更に顕著化したい。

 4)そして、日数に限らず歩行内容についても、量から質への転換が賢明のようだ。即ち、今回のように旧友との再会も良し。又、大原湖で写真撮影中の同年配のY氏と会話をして記念写真を後日届けてもらったりした。四国遍路で一般的な「接待」を他の旅先でも「笑顔の接待」が縁で充実した旅が可能だ。それには、まず自分のアンテナから発信しなければなるまい。

 5)某精神科の医者の話によると、うつ病防止には3つの要件と関わると良いそうだ。それは、人間、自然、そして自分自身(心と身体)。今までの山旅は、後者2つは馴染みがあったが最初の「他者」との交流が不足したようだ。

 6)雨天時の野営法の課題が解決していない。完全防水の装備にすれば解決出来るもしれないが、重量オーバーで現実的でない。事前に情報を収集して適地を探すか、これまでは「停滞せず」をルールとしたが見直しが必要かもしてない。

 
7)自然歩道としてモデルコースは設定されているが、忠実にトレースすることに拘っていない。なぜなら、自分らしさの自由度を優先したいのと、荒れた山道をムリしてまで山頂を踏む気がしない。今後は「はじめ」に記した通り、高度と距離の呪文から解放された歩行を求めたい。

 8)カロリーの収支試算を試みた結果
   ・消費総カロリー(概算)Q40,200 Kcal
    条件:体重= 57Kg、平均荷物重量= 11Kg
       総距離= 350km  標高=6,300
   ・摂取総カロリー(概算)S32,200 Kcal
      条件:事前購入食料=13,100 Kcal
       現地購入食料=19,100 Kcal
   ・体脂肪消費量(概算)S1(S- Q)/ 7=-1,140g



 9)食料について

 ・夕食に現地購入のソーメン使用(短時間炊事、入手容易、コンパクト)又、鶏肉やブタコマをシャブシャブ風に料理(短時間炊事、安価、脂肪分補給)。
 ・行動食は食パンを主食にした。
 ・柑橘類を購入時に食べて軽量化をはかる(ビタミン補給)。
 ・荷物の軽量化の為に、持参食料は最小限にして現地購入を頻繁に実施。

10)装備について

・ガス使用量は、朝夕食炊事で15日間使用可能(最終日にフル燃焼30分間空焚)。
・簡易式の天秤計でタンクのガス残量を測定した(15g/日の消費量)。
・ザック幅に合わせた特製のマットで軽量化を図る。ザック背当てをマットとして利用。
・LEDライトは単3電池1本で予備不要。



 11)その他

・歩行中、1ケ所に2枚の地図を持ち、不注意で1枚を紛失した(2ケ所に分けて持参要)

・休憩ピッチは、毎2時間程度で給水と食料補給、3~4時間程度に大休止(メモ作業含む)。但し、雨天時は別ピッチ(雨宿り場所ベース)。


         
 
 <テント泊の参考資料>          
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