【Marigold】



作:藤和 価格:100円 A7サイズ 6ページ

ふたりの歌手と、それを見守っていた友人の話。
手のひらサイズの折り本です。
※追々仕様を変えるかも知れません。

--本文サンプル--

 あいつは俺の憧れだった。
 舞台に上がったときにホールに響かせているあの低い声は俺には無い物で、 それを持っているあいつが羨ましくて、心のどこかでは妬ましいと思って居たのだと思う。
 朗らかで人の良いあいつの周りには何時も人が居て、けれども何故かひとりぼっちなようにみえた。
 それは何故なのだかわからないのだけれど、だれもあいつに手を伸ばさないのなら、 俺が独り占め出来る。口には出さなかったけれども、そんな醜いことを考えていた。
 あいつは俺のそんな気持ちに気づくこと無く、友人として親しくしてくれた。時折一緒に食事をして、酒を飲んで、 それから、俺のためだけに歌を歌ってくれた。
 優しくて、朗らかで、孤独なあいつ。俺は確かに独り占めしていると、そう信じて疑っていなかった。

Back