【EAT ME 4th】



作:藤和 価格:500円 文庫サイズ 48ページ

中の人がセルフ二次創作をしたBLのifストーリーをまとめた短編集。
『タリエシンとカミーユ3・4』『ソンメルソとデューク3』『緑と悠希1』『恵と緑2』 『語主と蓮田岩守7』『ハルと光1』『サクラとミツキ1』の8本を収録。

--本文サンプル--

 日も暮れた街の教会。そこの聖堂で、私は信徒の男性と隣り合って、長椅子に座っていた。
 彼はこの街のお針子で、脚を悪くするまでは仕立て屋として働いていた。
 温厚で優しく、誰からも慕われる彼が、歩くことが出来なくなったと聞いた時にひどく動揺したのを覚えている。
 彼がこれからの生活をどうするのか。それも心配だったし、何より、 私が管理するこの教会にもう来られないのでは無いかと、そう思うと不安と哀しさと寂しさで押しつぶされそうだった。
 だけれども彼は、知り合いに椅子に車輪を着けた車椅子をこしらえて貰い、今も尚、それに乗って教会に来ている。
 車椅子を作って貰ったのは仕事のためだと思っていたのだけれど、それ以外の理由も有ったと、有る日彼から聞いた。
「神父様に、会いたかったんです」
 照れながら、微かに頬を染めて、でも、私の目をぢっと見て。何も言い返せない私に微笑みかけてくる彼の手を取ると、 指先が冷たかったのを今でもよく覚えている。
 それからだいぶ経って、彼は仕事が休みの日にも、時折この教会を訪れるようになって、 日が暮れるまで私と一緒に過ごすようになった。
 聖堂で二人で隣り合って。片手にはロザリオを握り、空いている方の手でお互いの手を重ね合わせる。彼の冷えた指先が、 少しずつ温まっていくのを感じた。
 暖かくなった彼の指に、指を絡ませる。すると彼も戯れるように指を絡ませてきた。
 色硝子の填められた窓から差す月の光。それに照らされた彼は、まるで捧げ物のように彩られていた。

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