【EAT ME】



作:藤和 価格:500円 文庫サイズ 48ページ

中の人がセルフ二次創作をしたBLのifストーリーをまとめた短編集。
『語主と蓮田岩守1~3』『正とユカリ1・2』『タリエシンとカミーユ1・2』の7本を収録。

--本文サンプル--

 暫くぶりに、知り合いと会う事になった。
俺も相手も見た目は人間だけれども、実際は日本国に古来から住んでいる八百万神だ。
あいつが鉱山に引きこもるようになってから、どれだけ経ったのだろうか。
多分、数十年なんて短い期間じゃ無い。数百年単位で会っていなかった。
 あいつの名前は蓮田岩守。鉱山を司る神で、俺がまだ小さかった頃に、 色々な話を聞かせてくれたやつだ。

「やぁ、語主。久しぶりだね」
 待ち合わせ場所に現れた蓮田は今の時流に合わせた服装をしているけれど、相変わらず男にしては細身な身体で、 余り健康そうでは無かった。
「よう久しぶり。
お前普段鉱山に引きこもってるくせに、服とかどうやって揃えてるん?」
「ほら、前に君の指示で情報インフラを私の所も整えてくれたじゃ無いか。
だから、最近はネット通販で偶に服を買っているよ」
 そう、インターネットの料金が近頃安価になってきたので、八百万神達が情報伝達しやすいように、 主神の意向で各地の神達の情報インフラを整える事になったのだ。
蓮田には主神の意向だというのは伝えたのだが、彼の所は俺が指示を出して整えさせたというのもあり、 半分くらいは俺の意向でインターネットが使えるようになったと思っているのだろう。
 端々まで情報インフラが整って、蓮田とインターネットでやりとりが出来るようになった時、 これでいつでも話せるのかと思って、嬉しくなった。
その思いは誰にも知られないようにしているけれど。
 東京に住む俺は、訳あって他の神々と寄り集まって出版社を経営しているのだが、 うちの出版社が抱えている有る小説家のことを、蓮田はよく見ているようだった。
「彼が小さい頃に僕の所に来てくれてね、友達になってくれるって言ってくれたんだよ」
 そう言って蓮田は、嬉しそうに、くすくすと笑う。
確かに蓮田には友達という友達は居ないような気がするのだが、言外に、 俺は友達じゃ無いと言われているような気がして、心に引っかかった。

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