【MELODY FLAG】



作:藤和 価格:500円 文庫サイズ 26ページ

歌手を目指して音楽の道へ入った、とある女の子の話。

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--本文サンプル--

 私と環は小学校の頃からの友人だった。
二人とも音楽番組が大好きで、お互いの家に泊まっては一緒にテレビを見ていた。
「清香、あのさ」
「何?」
「私、作曲家になりたいな。
清香は私の作った曲、歌ってよ」
 そんな話をしたのは何時の事だったろう。
歌うことが大好きだった私は、環の言葉に二つ返事で返した。

 中学に入り、私と環は同じ合唱部に入部した。
「これで毎日清香の歌声が聴けるね」
 彼女のその言葉に、私は思わず赤面した。
だって、そんな事言われたら誰だって恥ずかしいと思う。
しかも、環は他の部員や先輩が居る前で、そんな事を言う物だから。
その後先輩達に冷やかされたのは言うまでもない。
因みに、誤解の無いように言っておくと、私も環も女だ。
見て取ってそれが解るのに、それでも冷やかす先輩達の言葉にはほとほと困り果てた。
 けれど、環と一緒に歌って過ごす放課後は、とても楽しい物だった。
勿論、筋トレとか、歌の練習とか、大変な事は沢山あったけど。
夏休みには合宿も有った。
その時たまたま私が夕食の時に作った料理を、環は凄く気に入ったようだった。
「ねぇ清香、このにんじんの入ったの、なんて言う料理?」
「え? にんじんしりしりーって言うんだけど」
「へぇ、変わった名前だね。どこの料理?」
「沖縄料理だよ」
 隣の席に座った環と話をする。
そんな何気ない事が幸せだった。

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