-インドの仕立て屋さん春の新刊祭り-

2017年春、「インドの仕立て屋さん」から沢山の新刊が発行されました。
これらはイベントで頒布された物ですが、イベントに行けなかった等様々な理由で「新刊が欲しかったのに買えなかった!」 と言う方のために通販特設ページを設置しました。
「春の新刊祭り」期間中に新刊をご注文の方に、特典もご用意しております。
是非この機会にお求め下さい。

特典はこちらのしおりになります。
白・赤・紺・黒の中からおこのみの物をお選び下さい。



対象商品は以下の通りです。


【魔法少女の裏表】



作:藤和 価格:800円 文庫サイズ 108ページ

 魔法少女と、魔法少女に憧れる少年。 二人の生活が擦る様に交差し、やがて二人は大人になっていく。

--本文サンプル--

第一章 魔法少女マジカルロータス

 森下蓮は何の変哲も無い、普通の女子中学生だった。
そんな彼女がある日、森に囲まれた神社にお参りに行き、そのついでに併設されている庭園を歩いていた時のこと。 
 風景写真を取るのが好きな蓮は、使い捨てカメラ片手に庭園の奥へ奥へと進んでいく。
 ふと気がついた。自分が庭園の道から外れ、ざわつく木々に囲まれていることに。
来た道を戻ろうにも、道が無い。
 立ち入り禁止区域に入った記憶は無いのに。そう思いながら血の気が引いていくのを感じていると、 ちらちらと光が目に入った。
 何かと思い光の方を向くと、その先にはまるで鏡の様に光を照り返している葉を付けた大木が立っている。
そしてその大木の前には、優美なドレスを着た女性が一人。
 彼女は言う。
「突然お招きしてしまって、ごめんなさいね。
あなたにお願いがあってここまで来て貰ったの」
 その言葉に、蓮は身を硬めながら訊ねる。
「お願いって、何ですか?
あなたは何者なんですか?」
「私は『鏡の樹の魔女』と呼ばれているわ」
「魔女……?」
 鏡の樹の魔女曰く、蓮にはこの世に蔓延る悪を少しでも退治して貰う為に、魔法少女になって欲しいと言う。
勿論、そんな話をいきなりされた蓮は戸惑うしか無い。
 魔法少女などと言う物は実在しない。と言いたい所だが、 実際今までニュースを見ていて何度か魔法少女が悪者を捕らえたという話は聞いている。
 なので、魔法少女という物が実在するのは知っては居たが、 まさか自分がそれになるとはつゆにも思っていなかったのだ。
「なんで、私が魔法少女に?」
 蓮の問いに、鏡の樹の魔女は優しく答える。
「今、他の地域には魔法少女が居るのだけれど、この地域には暫く居なかったの。
このままではこの地域が手薄になると思って適正のある子を探したら、あなただったのよ」
 適正と言われても、蓮には自分の何処に適正があるのかがわからない。
なので、一体何を持ってして適正というのかを鏡の樹の魔女に訊ねたが、それは秘密だと言うことで教えて貰えなかった。
 胡散臭いと思いながらも暫く鏡の樹の魔女の話を聞いていた蓮。
結局鏡の樹の魔女の言う魔法少女の仕事を受け持つことになってしまった。
「わかりました。魔法少女になります。
それで、やっぱり変身とかするんですか?」
 不安そうにそう訊ねる蓮に、鏡の樹の魔女は一本のネックレスを取り出して渡す。
「このネックレスをいつも着けていてね。
このネックレスに付いているモチーフに念を送ると変身出来るから」
 そう言って、蓮がネックレスを付けるのを確認した鏡の樹の魔女は続けてこう言う。
「それじゃあ、変身した時のコスチュームを考えましょうか」

 まさかコスチュームの案まで聞かれるとは思わなかったなぁ。と、鏡の樹の魔女から解放された蓮は、 何とか戻ってこられた庭園の道を歩きながら先程のことを反芻していた。
 暖かな春の日とは言え、まだ日はそんなに長くない。
少しずつ傾いていく太陽と庭園の木々を写真に撮り、蓮は庭園を後にした。

 家の近所の写真屋さんに使い捨てカメラを現像に出し、部屋の中で改めてネックレスを眺める。
何という金属なのかはわからないが、少し赤みがかった金色の、蓮の花を模ったチャーム。
『折角あなたはお花の名前なのだから、名前と同じお花のモチーフにしてみたのよね』と鏡の樹の魔女は言っていたが、 あらかじめ名前を把握していたと言う事は、自分に狙いを絞って離さないつもりだったのだろうなと改めて思う蓮。
 ふと、蓮が周囲を見渡し始める。
「……本当に変身出来るのかな……」
 恐る恐る蓮の花のチャームを握り、ぽつりと変身する為の言葉を口にする。
「へ、変身、マジカルロータス……」
 すると途端に蓮の体は光に包まれ、ほんの数秒で姿が変わった。
足下にはトゥシューズ。体には純白のチュチュ。柔らかなボブカットの頭には蓮の花があしらわれ、 顔にはマスケラが装着されている。
「どうしよう、本当に変身しちゃった」
 部屋に置かれた姿見の前でオロオロしていると、誰かが部屋のドアを叩く。
「お姉ちゃん、晩ご飯出来たって」
「わかった、ちょっと待っててね」
 妹の睡が部屋に入ってこない様にドアを押さえつけながら答え、蓮はそっと変身を解いたのだった。



【猫々!】



作:藤和 価格:400円 文庫サイズ 32ページ

 昔々ある所に、玉の鑑定が得意な女の子が居ました。
ある日、女の子は王様の目に留まります。彼女には、玉の鑑定以外にも秀でた物が有ったのです。

--本文サンプル--

 ここは国のみんなから慕われる王様が治めている国。
 土壁や藁葺きの家が建ち並ぶ中、貧しそうな家には似合わない、きちんとした身なりの一人の少女が、 大切そうに布にくるまれた何かを収めた籠を持ち、立て付けの悪い扉の向こうへと声を掛けている。
「それじゃあお兄ちゃん、ファイ、行ってくるね」
 中から行ってらっしゃいという声が聞こえるのを待ってから、少女は家の前から離れ、街の中心へと足を向ける。
 歩く度に微かに聞こえる、じゃらじゃらと言う音。
少女は音を立てる籠をしっかりと抱きしめて、街の中心にある、色鮮やかな彩色をされた豪奢な建物へと入っていく。
 彼女の名前はマオ。天性の物かはわからないが、玉の鑑定眼を見込まれ、宮廷の中へ美しい玉を売りに行く事を許された、 玉の商人だ。

 宮廷の門番に通行を許可する旨が書かれた竹簡を提示し、中へと入るマオ。
 鮮やかな彩色と、光を入れる為の透かし彫りが施された壁に囲まれた廊下を歩き、 向かった先は宮廷お抱えの占い師達が控える部屋。
 マオが売る玉は、占いを執り行う乙女達に甚く好評だ。
マオに任せれば美しい物を選んでくれる。それも人気の要因だが、もう一つ、乙女達を喜ばせる理由があった。
「マオさん、私にお勧めの玉は有る?」
「ジュウファ様にお勧めの玉はこちらです。
柔らかい緑色の物がお好みでしたよね?」
 柔らかい布で出来た占い装束に身を包んだ乙女に訊ねられたマオは、籠の中から、 まるでとろけてしまいそうに柔和な緑色の、真ん中に穴の開いた円盤状の玉を取り出す。
それを受け取った乙女は、何かを期待するように玉を撫で、マオにまた訊ねた。
「この玉には、どんなお話があるの?」
 その問いにマオは、優しい緑色を象徴するような、優しく甘い、乙女達の胸を躍らせる、短い物語を語る。
 マオが宮廷に玉を売りに来るようになってから久しいが、始めの内は普通に玉を売るだけだった。
けれどもある日、何となく売っている玉に即興で物語を作り、それを語って売るようになってから、美しい玉だけで無く、 ときめくような娯楽を求める占い師の乙女達に、物語を請われるようになったのだ。
 代わる代わる、マオの元に来ては玉と物語を求める乙女達。各々玉と物語を手に入れて、うっとりとして居る中、 最後にマオの元に来たのは、占い師の長である、マオよりも少し年上のユエという少女。
 ユエも、マオにお勧めの玉はどれかを訊ねる。
マオは、緑色の玉が多い中から、所々黒っぽい部分が混じっている玉を取り出し、ユエに渡す。
 本来なら、黒っぽい玉は質が良いとは言いがたい物だ。けれども、ユエは黒い玉を好む。
 いつの事だったか、それを不思議に思ったマオがユエに理由を訊ねた時の事。ユエは、自分が秘めている恋心を、 少しだけマオに話した。
詳しい事はマオにはわからなかったが、黒い玉を見ていると、思い人が側に居てくれるような気がすると、 ユエは言っていた。
 それ以来、黒くとも美しい玉を、マオは持ち込むようになった。
 マオはまだ恋を知らない。けれども、黒い玉とその物語を受け取り頬を染めるユエを見て、 恋は女性を幸せにする物なのだなと、ぼんやりと思っていた。



【外の世界の話】



作:藤和 価格:900円 文庫サイズ 132ページ

「Text-Revolutions」や「本の杜」のアンソロジーに寄稿した物や、 絶版本やペーパー、webに載せていた短編を収録。微妙に書き下ろしもあり。
『冬の森』『Kato plenigita』『この素晴らしき難問』『いつかの恋人』『銭の穴』『外の世界の話』『レヴィアタン』 『白百合は踊る』『君の軌跡』『黒猫はメガホンで叫ぶ』『パーフォレーションに腰掛けて』『アプリコットスピネル』 『完璧な幸福の中で』『おやつのじかん』『真夜中の本』の15本を収録

切ない話だけで無く、ほのかに薄ら怖さのある話まで。

--本文サンプル--

 俺がこの会社に就職して二ヶ月ほど。社員研修も終わり、最近は新入社員の俺でも、いや、 だからなのかはわからないが毎日残業している。
今日も渡された仕事が片づかず、残業になりそうだ。
時計が就業時間を指す。
 今日の夕食はどうしようかと思いながら仕事を続けていると、横から声を掛けられた。
「上杉さん、お疲れ様です。余り根を詰めないでね」
「あ、ああ。いつもありがとう」
 パソコンに集中しているように見せかけ、俺は横を見なかったけれど、 声のした方からそっと綺麗な手が出てきて、コーヒーを机の上に置いた。
給湯室のポットは保温している温度が低いと言っていたか、少しぬるめのコーヒーに口を付けると、甘い。
いつもなら酸味の強いブラックコーヒーを飲むのだが、残業に差し掛かるような疲れた時間には、 これくらい甘いコーヒーが良い。
 横から人が居なくなったのを確認した俺は、そっと社内を見渡す。
すると、一人の男性社員が残業している社員皆に飲み物を差し入れしている。
……ほんと柏原は気が利くよな……
 飲み物の差し入れをしているのは、俺と同期の柏原。
今までお茶汲みは新人女子社員が主にやっていたらしいのだが、昨今、 女子社員にばかりそう言った仕事を押しつけるのはどうなのかという話が多く出ているので、 今年からお茶は自分で淹れるように。となったらしい我が社。
なので、昼間は皆各々好きな飲み物を入れているのだけれど、 飲み物を取りに行く気力も無くなりがちな終業時間後は、柏原が残業社員に飲み物を持って来てくれている。
 緑茶か紅茶かコーヒーかしか給湯室に無いけれど。と言っていたけれど、 その三種類をちゃんと社員の好み通りに配布しているというのが凄い。
これを上司や先輩へのゴマすりだって言う奴も居るけど、 ゴマすりだけだったら俺みたいな新入社員に持ってくる理由は無いと思う。
何はともあれこのお茶汲みが功を奏したのか、柏原は上司からなかなか評判が良い。
まぁ、柏原は仕事が早いってのも評判が良い理由ではあるだろうけど。
 それにしても、と思いながらパソコン越しに柏原が居る方を見る。
飲み物を配る柏原の横顔がとても綺麗で、男だって言うのが信じられない。
手もなんか、華奢な感じだしなぁ。
柏原を見ながらコーヒーを置いてくれた手を思い出していると、段々顔が熱くなってきた。
うう……こんな思いするの、高校時代以来だ……



【古代竜先生の経緯】



作:belgdol 価格:500円 文庫サイズ 32ページ

「はぁ、なんで俺には竜人の恋人がいないんだろう」の一文から始まるとある所に投稿していた話を纏めた物。
竜人好きのあなたに。

--本文サンプル--

 彼は最初彼女にとって珍しい少年、という風に映った。
なぜなら履修者のほとんどが竜人に属する古代竜人語の履修を、人間の少年が取ったからだ。

 彼女も最初は物珍しさから取ったのだろうと思い、いつまで続くか、というような事を茫洋と思ったものだった。
何故いつまで続くか、などという教育者にあるまじき事を考えたのか、 それは古代竜人語の履修に当たって人間の─時に竜人でさえ─ 発生することが喉の構造的に不可能な単語が入っている事が一因だった。
これまでも少なからず古代竜人語という、 現代ではすっかりマイナーになり一部の裕福な竜人やその一族の支族に連なる一般家庭から 考えると多少歴史のある竜人の子供しか履修しなくなった科目。
そんな科目を取ってもお試し期間中に科目替えをする人間の子供、 というのは目にしてきた。
なので彼女にとって彼は珍しい─完全に存在しないわけではない─
子供だったのだ。

 だが、彼女の想像は少しだけ外れていた。
初めての授業で彼女が授業で古代竜人語を紡ぐのを、なるほど、分からん、という態度で聞いていたその少年が放課後。
彼女一人が占有する古代竜人語科の教師部屋にその少年が訪ねて来たことでそれを思い知る。



【EAT ME】



作:藤和 価格:700円 文庫サイズ 116ページ

普段書いているお話のifストーリーBL短編集。 細かいことは気にせずにシチュエーションを楽しむ本です。

--本文サンプル--

 真夏の日差しが照りつけるある休日、幼なじみの悠希を俺の部屋に招いて、ふたりで読書をしていた。
 玄関はドアロックを掛けたまま隙間を空け、窓は網戸を閉めて開けてある。風が吹くと、 窓際に掛けてある細長い貝を連ねて出来た鈴が涼しげな音を立てる。
 悠希と俺とで座り込んで、背中合わせになって、 お互いの背中にもたれて本のページを捲る。それぞれ小さいお盆の上に硝子の蓋碗を置いて、 半分凍らせた大きなペットボトルから、気が向いた時に真っ青な冷たいお茶を注いで飲んでいる。
 ペットボトルの中の氷が溶けて、ごろりと言う音を立てる。お茶を蓋碗に注ごうとペットボトルに手を伸ばすと、 悠希の手とぶつかった。俺と悠希、どちらの手も甲がじっとりと汗で湿っている。
「あ、ごめん。緑君先に注いで」
「おう、先に貰うわ」
 遠慮がちにペットボトルを譲られ、手に取る。ペットボトルの中身は、氷を含めてももう半分ほどしか無かった。
 蓋碗に青いお茶を注ぐと、硝子の透明感と瑠璃のような色で涼しげだ。冷たいお茶に口を付けると、 悠希が蓋碗にお茶を注いでいる音が聞こえた。
「お前さ、ごはんはあんま食わないのにお茶はめっちゃ飲むのな」
 悠希は元々小食なたちだったのだが、病気を患ってからは殊更に食が細くなって、 今はほとんど液体食料で食事を済ませているらしい。
「だって、これで飲み物も飲めなくなったら、僕なにも食べられないもん」
 食べられないと言っても、全く固形の食事が食べられないわけでは無い。ただ、余りにも食べるのが遅いので、 他の人と食事をする時はどうしても遠慮してしまうようだ。
「今日、うちでごはん食ってく?」
「え? でも、時間掛かっちゃうし、迷惑かなって……」
「いや、お中元でめっちゃ素麺貰って困ってるから、消費するの手伝ってくれ」
「そう? それじゃあいただいていこうかな」
「わかった。早めに作るわ」
 たまには固形の物を食べさせて、食べる事に慣れさせないと。素麺を沢山貰って困っているというのも事実なのだけれど、 もし素麺が無かったとしても、何か理由を付けて食べさせていきたい。
 ふたりで背中合わせのままお茶を飲んで、空になった蓋碗をお盆に乗せて。それから、 本が閉じる音と同時に悠希の頭が、俺の肩にもたれかかってきた。



【天使の雑談】



作:藤和 価格:500円 A5サイズ 48ページ

天使が天界でgdgdする話。
ストリエ掲載作品を戯曲っぽくした読み物です。

--本文サンプル--




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