暗黒騎士(スターレスナイト)
戦神トリグラフが率いるハイランダー最強騎士の称号。
ハイランダーがヴァシュタールナイツとともに行動することが多いため、対外的には『太天位』の称号でも知られる英雄神最強の称号とも噂される人類史上最強のモノに与えられた称号。
後にも先にもこの称号は英雄の介添人『フォン・キドゥヒャー』にのみ与えられたと伝えられる。
ただし、後年人を止めずして人類史上最強の力を手に入れた男にもまたウルシムが与えたと伝えられる。
少なくとも、暗黒騎士最高奥義『極嵐断』を自在に使いこなせない限り、この称号にはふさわしくないといえる。
アル
謎の男。少なくも人間ではないようだ。だが、人間の振りをして誰よりも人間くさい謎の男。
ウルシムの保護者面してちょくちょく手助けする吟遊詩人。
ないすみどるなおじさま。
この男がいなければアルスの歯牙にかかった女性が十倍に膨れ上がっただろうと言われている。というか、それってこの男の歯牙にかかった女性がアルスの十倍いることにしかならないのではないかという突っ込みは無視。
とにかく謎な男で、自分の美学に生きる男。何が無くても男のダンディズムらしい。
レイピアを装備しているが彼がそれを抜いたところを見た者はいない。「殺すなんて美しくない」だそうである。
だが、彼がレイピアを使えば華麗でなおかつクリティカルな一撃が飛び出す。それが男のダンディズムらしい。
魔導師らしいのだが、呪文を唱えている姿を見た者はいない。ただ、吟遊詩人だけあって、魔力を込めた曲を奏でる。それも男のダンディズムらしい。
人間のふりをしているくせにウルシムの父神たるマルドゥークの古い知り合いを称している。ウルシムが悩むたびに「君の父上ならね」と良く説教をたれる。
だが、その話は全て嘘偽りはなく真実マルドゥークを知っていたようなのだが、あんた人間じゃないだろ、と聞かれるたびに「何を言っているんだい。私は人間だよ」と答える辺りが白々しい。だが、それこそ男のダンディズムらしい。
その正体は誰もが知っているようで知っていない。
少なくとも分からなかったあなたは……いいひとです。
ヴァシュタール・ナイツ
ウルシムの陣営に付く神々の眷属たちで構成された東天を守る四天覇騎士団最強と謳われる騎士団。
団長はクラウス・フォン・ウェゲナー。
最強と謳われるだけあり、団員たちの力量はほかの騎士団より圧倒的に上。
ほかの騎士団で天位級でやっと並の団員級の腕といわれる。
最高位の強天位たるウェゲナーの実力は低位神よりも上といわれているぐらいだからほかの団員の実力は推して知るべし。
英雄神
人でありながら人をやめたモノ。
神の眷属となり、己を眷属にした神に忠誠を誓う存在。
その神通力は英雄神を眷属とした神によって様々であり、眷属に対する神のスタンスも様々であるため、一概に英雄神だから信頼できるとは言い切れない。
別名、騎士(ヘッドライナー)。
己の忠誠を神に捧げ、弱きを助け強気を守るモノにふさわしき称号である。
英雄の介添人ミヒャエル・フォン・キドゥヒャー
勇者アルスの親友。
常に勇者アルスとともにある男だが、その正体は最強の英雄神たる『暗黒騎士(スターレスナイト)』である。
アルスと知り合ったのは、彼が不覚を取って死にかけていたところをアルスに助けられたときから始まる。
最強の英雄神が苦戦していた相手をいとも簡単にうち破るとアルスはミヒャエルに手を差し延べていったという。
「無茶をするヤツだな」、と。
ミヒャエルはそれに苦笑で答え、恩を返すためにアルスの冒険にしばらくつきあうこととなった。
小さなモノは迷子になった子供を捜してくるモノから、大きなモノは魔龍帝ヤムとの一騎打ちまで彼は常にアルスの傍らにいた。
しかし、あの勇者アルスの冒険が波瀾万丈でないモノが存在したかと言えばそういうわけではない。
迷子になった子供を捜すだけの依頼でさえなぜか『龍』と戦うハメになったり、隊商の護衛で天の御使いと混沌の戦いに巻き込まれたり、熱病に効く薬草を探しに行くはずが不治の病を治す霊薬の素材となる伝説の苔を入手する旅となるのだから、そのフォローたるや並大抵のモノではできるものではない。
その上、普通ならばそんな境遇に置かれたら疑問に思うところだが、勇者アルスはちっとも気にせずそんな生活を『普通』のこととして受け止めていた。
最初のうちは恩を返したら立ち去るつもりだったミヒャエルも情が移って心配になったのか、彼の尻ぬぐいをする毎日を続け、気が付いたら『暗黒騎士』としてよりも『英雄の介添人』として知られるようになっていた。
ミヒャエル本人もこの自由奔放、天真爛漫としか言いようのない勇者に一緒に冒険を続けている内に惹かれていき、英雄神としての仕事よりも彼とともに冒険することを優先するようになっていった。
そのため、後年天の御使いに西天を、混沌に北天を奪われ、故郷を追われた人々を救うためにアルスとエアリエルの娘ニースを女皇とする『アルスラント皇国』の建国と天神、地祇、竜皇それぞれの加護を得るために東奔西走することとなる。
彼は勇者アルスとともに道を歩くことで『神々の諍い』よりも『人々の営み』を守る戦いをするべきだと考えるようになったのであった。
強天位
英雄神の中でも最高位の力を持つ者に与えられる称号。
ここまでくればすでに神域に達したといえる。
黒騎士(ブラックナイト)
シュバルツシュトゥルムリッター(黒嵐騎士団)の最高位の騎士に授けられる称号。
その実力は強天位にも勝とも劣らないと謳われ、世界最強の名を冠される称号の一つ。
特に黒騎士最強の技『ブラックストーム』を受けて、立っていられたモノはいないと言われる。
虹楯姫エアリエル
ウルシムの姉神とも妹神とも言われている竜妃シフの娘。
戦と美の女神であるところから、黄金の甲冑を身に纏った場合と虹色のドレスを身に纏った姿で人前に現れるときがある。
どちらにしろ、腰にはレイピアを提げているのだが。
虹楯姫の由来は母神シフの持っていた全ての厄災を防ぐ【虹の楯(イージス)】を譲られたところから。
彼女の美しさをたたえるとしたら【傾世の美女】と言ったところだろうか? やろうと思えば世界すら滅ぼしかねない終末戦争を引き起こせる美貌の持ち主である。
本人はむしろその美貌の所為で男達が寄ってくると思っているため、煩わしく思っているらしい。
勇者アルスが心を寄せているのだが、自分の上辺しか見ていないと思いこんでいるエアリエルは常にそれを突っぱねる。その傷心でアルスは何処かで女性を引っかけてしまい、退っ引きならなくなり、その噂を聞いたエアリエルが更に心を閉ざすためアルスはまた何処かで女性を引っかけて、と言うことが日常。
実際のところは彼女としてはアルスに恋心以上のモノを抱いているのだが、詰めが甘いアルスは彼女の拒絶を完全なる拒絶と勘違いして結果的に傷心ナンパ旅行をしてしまい、二人の溝は埋まらないのである。まぁ、アルスの詰めの甘さもあるがエアリアエルの態度もかなりきついモノがあるので、一概に彼が落ち込むところまではあまりとやかく言えないのだが、その後ただの傷心旅行を傷心ナンパ旅行に進化させているアルスにも大きな問題がある。
最終的には二人は結ばれるのだが、悲劇が彼女を襲い、彼女はアルスを残して死んでしまう。その衝撃でアルスは全てを捨てて何処かに引きこもってしまった。
アルスに関わった者は何故か不幸になるという一例。
あ、彼女だけは最後まで幸せだったという話もある。
先読みのクラウス・フォン・ウェゲナー
ヴァシュタールナイツ団長にして、最高位の英雄神の一人。
だが彼は他の英雄神と違い、勇よりも智を重んじる珍しい男であった。
当然、最高位の英雄神であるからには実力は低位の神など及ばぬ力を持ち得ている。
しかし、彼はその力をふるうことよりも平和りに物事を纏めるか、最低限の損失で常に切り抜けることを好むために他の心ない万有を誇る英雄神からは『匹夫』としてみられることも多かった。
彼はそのような風評を気にすることなく己の信じる道を進む。
本来、彼は英雄神などになる気はさらさら無かったのだが、英雄神のふりをして地上に降り立ち人々を救っていたウルシムに深い共感を覚え、自分が知恵だけしか回らない理論だけの口先男であることに深い恥を感じ、努力に努力を重ねて超一流の戦士となり、気が付いたときはウルシムの片腕とまで呼ばれるモノとなっていた。
彼はウルシムに対して忠誠と言うよりも友情をもって仕えている。そのため、ウルシムが何をもっとも悲しむかを理解しているが故、決して配下の英雄神たちに無駄に命を散らせるような命令を出しはしない。まず、力量を考え、それに相応しい仕事を与え、確実に生還させる計画を立てる。決して無理はさせず、危険ならば引く勇気も必要と説き、ヴァシュタールナイトにウルシムの意志を徹底させている。
最後の最後までウルシムを守り抜いた数少ない英雄神である。
四天覇騎士団
神々の率いる英雄神で構成された最強の四騎士団のこと。
ウルシムのヴァシュタール・ナイツ、トリグラフのハイランダー、シュバルツシュトゥルムリッター、イルダーナフの妖精騎士団である。
シュバルツシュトゥルムリッター
北天を守護する冥帝ザッハートスが率いる四天覇騎士団の一つ。
冥界の瘴気を武器とする恐怖の騎士、それを統べる黒騎士がこの騎士団の中核である。
小天位
英雄神にあたえらえる称号の一つで、天位騎士が束になってもかなわない実力を秘めたモノにのみ与えられる称号。
この世ならざるモノでも人の身ではかなわぬ実力のある存在──天の御使いや上級魔族など──にも引けをとらぬ実力を有する。
精霊公子ルーグ
精霊神イルダーナの息子。
天神を忌避する父神とは違い、何故かウルシムの心友である。
ウルシムの出かける冒険には常に付き合い、常に彼の背中を守っている。
逆を言えば、ウルシムが常に彼の背中を守ってもいるのだが。
気さくな人物で反天神派の首魁の息子であるにもかかわらず天神派の象徴たるウルシムに何の思惑もなく近づき、いつの間にか共存派ともいえる存在を作り出していた。
父神よりも器量が大きく次世代の主神と目されている。
実際、ウルシム、ルーグ、ヴァイシャの三柱の神こそ天界を統べるのに相応しい神々であった。
精霊神イルダーナ
太古の神の一柱。
天雷神ペルーンの盟友。
そのためか、天神を全くと言っていいほど信頼しておらず、反天神派の首魁と目されている。
狭義で言えば『地祇』とは微妙に違うが、広義では『地祇』に含まれる。そのため『地祇』の長として祀られることもしばしば。
実際のところは『地界』により生み出された神ではなく、『精霊界』によって生み出された神。
ただし、『地界』と『精霊界』は裏と表の双子世界ともいえるので地祇の一柱としても考えられる。
戦神トリグラフ
原初の神の一柱。
天雷神ペルーンの弟にして戦時に神々を率いる役を担う神。
兄がマルドゥークに討ち取られその力を取り込まれた後、神々の長につくよういわれるが断り、その役をイルダーナフに譲る。
マルドゥークとは何度も干戈を交えた仲。互いに武人として感じるところがあったらしい。
マルドゥークがその後創造神の元を飛び出し、彼らの元に降ってきたとき最初にそれを認めたのはトリグラフであった。
マルドゥーク降臨後はマルドゥークとともに戦い、マルドゥークが創造神と相打ちするときも彼とともに戦い抜いた。
それ以降は実質上ウルシムの後見人であり、守り役である。
ウルシムに対する態度は後見人や守り役と言うよりは爺様と孫といった感じでウルシムを甘えさせたい放題にして猫可愛がりしている。
ウルシムが非常に自分に厳しいタイプでなかったら今頃どうなっていたかとは天神地祇すべてが認めるところである。
自信は独身であり、兄の陰として生きてきたということと、マルドゥークに宿っていた兄の魂がそのままウルシムにも受け継がれているというところが、そういう態度をさせる原因であろう。
まぁ、どちらにしろトリグラフがウルシムに激甘なのは事実であり、それにより天界の勢力図が一気に変わったのは否めない真実である。
踏鞴神グィブニュ
目的のためなら手段をすっ飛ばし最高の神器や武具を鍛える神。偶に手段のために目的を忘れて打ったモノが最悪の神器になったりもする厄介な御仁。
地祇の中ではある意味で突き抜けて天神と仲がよい神。
特にウルシムを気に入っており、事ある毎に彼のための武具やら神器を作って押し掛ける気の良い兄貴分。ちなみに度が行き過ぎて弟が良く困っているのを気が付かない鈍い兄貴とも言う。
世界最高の火山を自分の炉として使い、自分の眷属達である山小人におしえんで良いことまで教えている為、神々から良く説教を喰らっている困ったちゃん。でも憎めない。
未だに彼がどうしてウルシムのことを猫かわいがりするのかは誰も知らない。
そして、ウルシムの頼みなら何でも二つ返事で賛成するのかも知らない。
全知たる知識神ウルシムにしても分からない数少ないことの一つらしい。
ただ単にファザコンが転じてブラコンになっただけという説もあるが。
地祇
世界が生んだ神。
世界のいずれかの化身であり、世界とともに存在し、世界とともに滅び行くモノ。
世界に存在するモノを作り出したモノでもある。
その神格は何の化身であるか、いかに信仰されているかによって変わってくる。
主な地祇として、精霊神イルダーナフ、軍神トリグラフ、鍛冶神グィブニュ、豊穣女神アールマティなどがいる。
知識神ウルシム
不遇な男。
常に緻密な策を用い、味方を優位に導くも味方が足を引っ張っているために完全なる勝利を収められない。その原因を自分の力不足と認識しているが決してその様なことはなく味方が悪いのである。
もし、彼の作戦が全てうまく言ったならば彼の陣営は完全勝利を手にするだろうが、味方に恵まれていない彼には不可能。もしあるのならばオー人事に走れ走れした方がいいぐらいである。
でも彼はそんなことを微塵にも思ったりはしない。いい人(?)だから。
その反動からか、彼の来世は少しだけ人が悪くなっている。
と言っても本当に少しだけ、ミクロンやナノにすら及ばない程度なのだが、人の物差しで言うとキロとかメガとかそんなモノかも知れない。
元天の御使いであった父神と竜皇の娘である母神、および父神が吸収した天雷神の力をすべて継承しているため、神格はなにものも達し得ない高見に登り詰めているのだが、そのことに本人を含めて誰も気が付いていないあたりがポイントか。
【貫く者】(ブリュナーク)
グィブニュがウルシムのために打った武具。
グィブニュが自分の全精力を込めて打ったために神格を持ってしまった数少ない武器。
従って、魂を持っている。
ある意味で【武具の神】と言える存在。
ウルシムの最高の相棒にして、介添人。
破壊力抜群、手加減なし。
天位
英雄神の称号の一つ。
この称号を与えられたモノならば、地界に存在するモノにならば負けることはないだろう。
天神
天より降ってきた神々。
すなわち、創造神の元を離れ、均衡神マルドゥークの旗の下戦うことを誓い合った『天の御使い』とマルドゥークの元に嫁いだ竜妃シフのこと。
主な天神として均衡神マルドゥーク、陽神ミスラ、月女神ジョカ、竜妃シフなどがあげられる。
ハイランダー
南天を守護する四天覇騎士団の一つ。
地祇最強の戦神トリグラフ直轄の騎士団だけあって、新興の東天を守護するヴァシュタール・ナイツとよく比される精鋭騎士団。
ヴァシュタール・ナイツが創立されるまでは四天覇騎士団最強といわれていた。
実際、現在でも最高位の騎士『暗黒騎士』を有する分ヴァシュタール・ナイツを一歩上回るという評価もある。
ただし、ヴァシュタール・ナイツには切り札の『勇者』を含めていない分余力があるという説もある。
だからといって、『暗黒騎士』が『勇者』に劣るという話をするモノはいない。
魔王アルヴィース
六魔王の第三位にしてヴィロシャーナの堕天につき合った十三使徒の一柱。
混沌の力を取り込んだ御使いの仲でも数少ない【狂わなかった】魔王。
元々【愛】に狂っていたザーハムラームや強大な力を得るために限界まで取り込んだヴィロシャーナと比べても堕天前の自分を完全に保っている奇異な神。
逝っちゃってる六魔王の中で淡々とおのれの美学のために力を使い続けるその様は【最強の魔王】と呼ばれるに相応しい王者ッぷりである。
暇に飽かせて好き勝手に策をふりまいては暇つぶししている有閑ダンディー。
冥女帝ザーハムラーム
妖艶なる美女。だけど少女趣味。むしろ冥府魔界の長とは思えないロマンチストとも言う。
昔は天の御使いの一人だったが、創造神の方針に付いていけずに離反。
というのが表向きの理由だが、彼女の敬愛して止まない男、第三使徒マルドゥークも彼の兄である第一使徒ヴィローシャナの反乱に賛成していると思って堕天した女。愛に生きるがゆえに常に目が曇り続けているとも言う。
その後マルドゥークは創造神に離反するものの彼女とは違う陣営を作り、他の女と結婚、息子までこさえている。
流石にそれはショックだったらしく暫く何もできなかったが、そうこうしていた内に彼女の主君だったヴィローシャナとマルドゥークは共同戦線を張って創造神をうち破る。だがその代償として二柱の神は肉体を失った。
愛するものを守れなかった彼女は再び悲嘆するが、今度は落ち込む暇すらなく自陣営をまとめ上げる長の役を押しつけられた。
その役を彼女は楽々していたものの、鬱々とする心はどうにもできず、ちょくちょく人の姿になって地上へと現実逃避していた。
そんなある日、村娘として暮らしていた彼女の前に愛していた男にうり二つの気配を持つ者と出会った。知識神ウルシムである。
彼の方は彼女の正体を知る術もなく何度か逢瀬を重ねていく内に恋人同士となるのだが、彼女の方は全てを知ってしまうことで自分のマルドゥークに対する愛が偽物だったのではないかという疑惑と目の前にいるウルシムを自分がマルドゥークの変わりとして扱っている不義な女のではないかという疑惑やらなんやらの葛藤でウルシムの前から姿を消した。
当然ウルシムは良くワケの分からない内に拒絶されたのでショックで寝込むわけだが、彼には素晴らしき心友が一人いたわけで、直ぐさま立ち直り、恋人を求めて冥府に旅立った。彼はこの時点でもまだ恋人がただの人間であり、死で二人が別れる羽目にあったと勘違いしていたのである。
この勘違いが良い方に転ぶこととなる。
冥府までの神の身でも辛い道程をウルシムは持ち前の知恵と勇気で首の皮一枚分ぐらい残してクリアする。
当然ザーハムラームはそれを常に見ていた。
そして、冥界の長である魔女ザーハムラームの前で自分の思いの丈を全てぶつけた。
この時にいたって、自分がウルシムというそりゃもう滅茶苦茶年下の男に心の底から惚れてしまっていたことを悟ったザーハムラームは飛びつかんばかりに駆け寄るとそのまま駆け落ちを決行する。
それに驚いた冥府魔界の関係者が追っ手を出すものの新しい恋と愛に狂った最凶の女に勝てるわけもなく敢え無く敗退。
余りの展開に驚いて何もできないウルシムを勢いだけで二世を誓わせ、それに反対する勢力全てを打ち砕き彼女にとって幸せな家庭を築き上げたという。まぁ、三日天下程度の、だが。
彼女は新しい愛を文字通り勝ち取ったのである。
どんな世の中でも恋する女には絶対勝てないというお話。
冥帝ザッハートス
天雷神ペルーンの息子にして後継者。
そのため、『イグ(神々の言葉で偉大なるという意)・ザッハートス』と呼ばれるときもある。
地祇の中で唯一闇を司る神。
闇とは地界の森羅万象の理に従い生きる者たちに安らぎを与えるモノとされる。それが夢であり、死であったりするのは人それぞれだが。
勇者アルス
人類史上最強の部類に含まれる男。
真の最強は後の世の『ディラン・ド・ダッツァーエン』であるからして、彼は第二位程度。
それでも第三位に対してはぶっちぎりのダントツトップと言えるのだが、第一位との差もそれ以上にあるので微妙。
極度の女好き。アフターフォローも浮気ングなんて目じゃないぐらい女好き。この血が覚醒した子孫がパルジヴァルであるので、後世のロクでもない歴史は彼が作りだしたと言っても過言ではない。とても出はないが、ウルシムの弟分には見えない。
いくら神話の時代だからとはいえ、神に匹敵する力を有し、神と平気で一騎打ちを渡り合うのはいくら何でも化け物過ぎか?
むしろ彼が低位の神ですらないことの方が脅威であり、疑問である。
だが、彼がウルシムにとって最大の疫病神であるのは間違いない。
なぜなら、ウルシムの計画が全て破綻している原因を探ると全て彼に起因するのだから……。
そして、それは後世に置いても同じことが云え、もし彼が神であったなら『疫病神』であるのは誰も否定できない。
むしろそうであった方が世の中まとまったのでは無かろうか?
妖精騎士団
西天を守護する精霊神イルダーナが率いる騎士団。
その名が示すとおり、この騎士団に参加している者は精霊に最も近い者と言われる妖精が主なる構成員である。
精霊は地界とは異なる森羅万象の元に存在しているので、精霊神が地界に対して何らかの行動をするには地界の森羅万象の元に存在している者が眷属でいる方が何かと便利なのである。
龍(ドラゴン)
力無き竜が物体化した存在。
指向性を与えられたことで物質界の存在力で言えば竜にも優る。
ただし、物質という殻を得てしまったが故に、地界の『森羅万象』に支配されてしまった存在ともいえる。
竜(ドレイク)
古きモノ。
創造神と混沌の争いの中から何にも染まらぬ生まれた純粋なる力が意志を持った存在。
この世界の守護者。
竜皇(イルルヤンカッシュ)ヴァイシャ
二代目竜皇。
初代、アガナルーンはマルドゥークが創造神を封印する際に討ち死にしている。
初代は『剣聖』と称えられた使い手であり、最古の存在の一柱であった。
それを継いだヴァイシャはアガナルーンの息子であり、竜妃シフの兄に当たる。
性格温厚で、よく他者の忠言を聞き、理路整然と物事をまとめ上げる能力どれをとってみても長としてたぐいまれな能力を誇る。
妹の遺した遺児ウルシムのことを我が息子のように可愛がり、鍛え上げた。