2002年 インドネシアの風景 ボゴール植物園 PT EKAKARYA INDO ORCHID
2004年 ボゴール植物園 ボゴール チボダス分園 PT EKAKARYA BINTANG
2007年 PT EKAKARYA PT KOSATO RAYA PT. Transplants 街・乗り物・植物
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  ジャカルタ周辺は赤道に近いこともあって年間の温度変化は少ない。多くの日本人が考えるほど暑くはない。植物の種類は豊富でランの種類も多い。ボゴール植物園はオランダの植民地時代に作られたもので、多種類のランのコレクションがそろっている。ファレノプシスの生育には最適な気候で、暖房なしでよく育つ。花を付けるには低温不足で山上げしないと花は咲かない。ボゴール植物園では、戦前すでにファレノプシスの開花調節のため、山の分園チボダスにランを移動していたそうである。
 インドネシアにはファレノプシスを栽培している大きな会社が3つある。PT EKAKARYAの苗場のあるTikampek(標高28m)は年間を通じて最低温度は21.9-22.9℃、最高温度は31.1-33.9℃の範囲でファレノプシスの生育の適温域で気温は変化する。同社の山上げ場のあるTipamingks(標高1150m) は年間を通じて最低温度は13.5-16.3℃、最高温度は25.9-27.2℃の範囲で、最低気温は多少低いがファレノプシスの開花の適温域に保たれている。これらの自然条件はファレノプシス生産に最適である。さらにインドネシアは国内市場は予想外に大きく、ファレノプシスの消費量は日本と同程度で、輸出に回せなかった株は国内で消費されている。PT EKAKARYAは、白大輪の輸出が主体である。好都合なことに、インドネシアでは白大輪のファレノプシスが好まれ、選別にもれた実生株はローカルマーケットで販売できる。リレー栽培では、日本側の輸入株に対する要求は厳しい。自分で栽培する場合は許容できるような欠陥についても、リレー株の場合は認められない。このような厳しい要求に対して、同社は徹底した株の選別で対応している。従業員の主要な仕事は、株の生育チェックと選別で、一定の規格を満たした株だけが日本に輸出される。インドネシアの場合は、すべての株の開花を確認し輸出するということではないが、日本向けには山上げ場で一部の開花を確認し、出荷している。今後増えてくるクロン株についても、同様な対応が予定されている。
  Indo Orchid もインドネシアでファレノプシスを生産する会社である。以前、日本にも同社の株が持ち込まれたが、時至らず取引は始まらなかった。現状では実生株の生産だけであるが、良い状態の株が生産されている。日本との取引には大変興味を持っている。
  PT. Bintangdelapan Holtikultura はヨーロッパ向けのオンシジュウム切花、ファレノプシス株、ミリオンバンブーの生産を行っている。最近のヨーロッパのファレノプシス市場の価格の低迷のため、2004年7月の時点では国内向けの生産に切り替えていた。このナーセリーはボゴール植物園と協力して、インドネシア産の野生ランの増殖も行っており、増殖した半数の株は現地に戻し、半数の株は販売に回している。 

2007年からEKAKARYA社の培養苗生産のお手伝いをすることになった。ファレノプシス生産が年々増大し、信頼の出切る高品質のクロン株の生産が、ますます重要になってきた。インドネシアの自然条件は、ファレノプシスの生育には適しており、低地では周年栄養生長を続け、高地では何時でも開花が可能である。したがって、ファレノプシス生産に冷暖房は不必要で、栽培に要する管理コストは低い。このような自然条件は、ファレノプシス育種と生産には好適なものである。
2007年の9月5日から12日にかけて今年2度目にインドネシアEKAKARYA社を訪れた。その折、KOSATO RAYA社Transplants社も訪問し、インドネシアの片田舎で頑張っておられる日本人の方々にお会いし、農場を見学する機会を得た。海外での生産では、日本では考えられない困難も多いと思われるが、頑張っておられる邦人の方々を見ると、大変頼もしく思う。花作りを通じて、日本とインドネシアの国際交流、またインドネシアの発展のために貢献しておられる方々がいることは、日本人としてまた花研究に携わるものとして、大変誇らしくうれしいことである。