NHK近視報道の問題点 2019.12
最近、NHKクローズアップ現代で近視についての報道がありました。誤解を招くような内容だっ
たので説明します。
まず、言葉を理解しましょう
近視の強さによる分類
弱度近視 -0.5D以上-3.0D未満 軽い近視でほとんどの人がこれ
中等度近視 -3.00D以上-6.00D未満 ちょっと進んだ近視です
強度近視 -6.00D以上 眼鏡がかなり厚くなります
眼底の障害の有無での分類
単純近視 眼鏡などで容易に矯正できるもの(強度近視でも視力がでれば単純近視)
病的近視 視神経や網膜に障害があり失明の原因となる近視。眼鏡で矯正できない。
強度近視(特に-8D以上)の人がなる確率が高い
報道内容を見ていると、次のようなストーリーにしたかったようです。
強度近視になると病的近視になる → 近視が進行しないようにすることが大切だ
→ 近視の進行は防ぐことができる → 外国ではアトロピン点眼が使われている
野外の明るい光の下で過ごすことが有効である → 日本では近視対策が遅れている
一見正しいようですが間違いです。
病的近視は、軽い近視が進行して強度近視になっておきるわけではありません。病的近視に
なるような強い近視は、原因もわかっていませんし、幼少時よりおきて進行を食い止めるこ
とはできません。
テレビのもう一つの内容は、近視の進行をゆっくりにできるかということです
アトロピン点眼の有効性について
シンガポールでのデーターを見るとよさそうですが、縦軸の数字を見ると0~2 Dの範囲
で、わずかな違いを大きく見せています。5年後の比較もないし、アトロピンを中止した
時のデーターもないので抑制できたか不明です。
アトロピン未使用者が点眼を開始したら進行が抑制できたというデーターがあるといい
のですが。
戸外で明るい光をあびるのが有効
可能性はありますが、メガネの厚さが多少変わる程度でしょうか。それに、紫外線の全
身や目への有害性はどうなのでしょうか。別のテレビ番組では、紫外線を浴びると白内障
や加齢黄斑変性になる心配があると警告していました。また、寒い季節はどうするので
しょう。
これらの治療が有効かどうかは、もっと長期の経過観察が必要だと思います。
今回のNHKの報道は二つに分けてとらえるべきです。
① 強度近視は病的近視になる可能性が大きいので、眼科での定期検査が必要である
②弱度近視は、進行をゆっくりにできる可能性があるが、まだ研究は始まったばかりである。