神の手の白内障手術      2015.5

テレビで何回も「神の手」と紹介される先生がいます。その先生の開発した白内障の手術
法が素晴らしいという内容です。先日は、「なぜ他の医師はこのような素晴らしい方法
を学ぼうとしないのだろう」というコメントまでありました。

それはどのような方法で、本当に素晴らしい方法なのでしょうか。


水晶体が濁るのが白内障です。水晶体の中央部に核という硬い部分があります。白内障
の手術では小さな切開からこの核を取り出します。核を小さくし超音波で細かく砕いて
吸引します。核を小さくする方法にはいろいろあります。そのうちの一つが神の手と言
われる先生
が開発したプレチョップ法です。

  

核を小さくする方法は
dvivide and conquerディバイド アンド コンカー
 日本語では分割して攻略するということです。超音波チップで溝を掘り、溝を引っ張
 り核を分割します。
写真は、溝にチップを当て分割しているところです
 phaco chopフェィコチョップ
  空手チョップから命名されました。超音波チップ(フェイコ)で核を吸いつけておい
 て、フック
で核を切って割ります。中央写真では4分割してあります
pre chopプレチョップ) 
 超音波を使う前に核を分割するのでプレチョップといいます。特殊なピンセットで核
 を割ります。
右写真は、分割が終わった状態です。 

    

どの方法が優れているのでしょうか
 すべての症例で使えるのが①です。中等度から硬い核に有効なのは②です。中程度の
 硬さ
の核に有効なのは③です。どの方法も使いこなせば同じです。手術時間も大差あ
 りません。(せいぜい違って1~2分です)マスコミがプレチョップ法が一番いい方
 法だと持ち上げ
るのは間違いです。どれが安全でいい方法かはそれぞれの術者が決め
 ることです。
私は、一つの方法に固執しないで、核の大きさや硬さ、瞳の大きさなど
 によって使い分け
ることがいいと思っています。

  私の手で手術した感覚では   安全性は  ① = ② ≧ ③
                スピードは ② = ③ ≧ ①

     神の手でなく「人の手で安全にできる方法」がいい手術です。


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