老眼は治らない                  2012.10

 

テレビや雑誌で、「老眼にならないための訓練」とか、「老眼を治す体操」などの表題が目につきます。先日、テレビで目
の体操で老眼を防ごうと、出演者が一緒に目を動かしているのがありました。奇妙な光景に思わず笑ってしまいました。
老眼は、水晶体の年齢による変化ですので進行を止めることはできませんし、訓練で良くなることはありません。

近くを見るときの働き (下左図)
 毛様体という筋肉の力は、チン小帯を経由して水晶体に伝わります。
 遠くを見る時は、毛様体の緊張が少ない → 毛様体が短い→ チン小帯が水晶体を引っ張る →水晶体が薄い
  近くを見る時は、毛様体が緊張する→ 毛様体が長くなる → チン小帯が水晶体を引っ張らない → 水晶体が厚い
        水晶体が厚くなるのは、水晶体がもとに戻ろうとするからです。




  ここで疑問があります。
  「毛様体が緊張するならば、長さが短くなって水晶体を引っ張るのでは?」
  毛様体は、筋肉の走行の関係で緊張すると長さが長くなります。例えば、口の周りの筋肉に力を入れると唇が尖ります。

なぜ老眼になるのでしょう  (上右図)
   水晶体の弾力がなくなって、引っ張る力を緩めても膨らむことができなくなるからです。水晶体は生きているレンズ
   です。外側から新しい細
胞ができて古い細胞は中に中に移動し、中心部では押し固められて核になります。 玉ねぎ
   のようになっ
ていると考えてください。このため中心部からだんだん固くなり弾力性がなくなります。年齢による変
   化ですので逆らうことはできません。
   「毛様体の力が弱まるので訓練で鍛えましょう」というような文章を見かけますが間違いです。

手術で老眼が治るそうですが
  レーザーで角膜を削ったり、熱で角膜の形を変えたり、特殊なリングを角膜に挿入する方法が考えられています。まだ
   未完成の方法ですのでお勧めできません。

   白内障の手術の時に度数を工夫したり、遠近両用の眼内レンズを使うこともあります。
    よく説明を受けて納得できたら受けてもいい方法です。
   ただ、これらの方法は水晶体を若返らせる方法ではありません。 


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