近視や乱視、斜視などの子供の親から「遺伝ですか」と聞かれたり、緑内障は遺伝す
るそうですが心配なので検査してくださいと受診する人がいます。どのような病気が
遺伝するのでしょう。
遺伝とは
遺伝というと何か暗いイメージがありますが、体のすべてが親からの遺伝です。黒目の
色も、瞼の形も、目の大きさも、まつげの生え方もすべて遺伝です。そういった意味で
はすべていいことも悪いことも遺伝です。
最近では、遺伝子という物質で遺伝することがわかってきました。殺人事件などで鑑定
に使われるDNA(下右図)がありますが、遺伝子はDNAの一部です。
遺伝性の病気
今のところ遺伝性かどうかは、家系図(上左図)を書いて親から子、孫と調べて同じ病
気の人がいるかどうかどうかで判定しています。将来は遺伝子の研究が進み、病気の遺
伝子がみつかりそれによって遺伝性の病気か判定できるようになると思います。いまで
もいくつかの病気では異常の遺伝子が見つかっていて治療に応用されています。
目の遺伝性の病気
遺伝するかどうか判定できない病気が多いです。また遺伝するものでも、遺伝する確率
(浸透率)が低いと病気にならないことが多いです。遺伝性のものだと先生は言ったのに
親も子供も異常ありませんとよく聞かれるのですが、それは遺伝の形式と浸透率が関係
しているからです。
遺伝するかよく質問される目の病気
@近視、遠視、乱視
これらは、目の長さや、角膜の形の異常ですから遺伝すると考えられます。皆さん
が漠然と感じているように、強い近視の親の子供は近視のことが多いです。ゲーム
をしたり、暗いところで本を読んだりするなどの環境の影響は僅かです。
A斜視
斜視のなかでも間歇性外斜視は遺伝することがあるようです。斜視の子供の親が
「私も子供のころ斜視で手術をしました」ということがあります。ただ、浸透率は低
いです。
B色覚異常
遺伝がはっきり証明されています。X染色体劣性遺伝といって男女差があります。
C先天性白内障
生まれつき水晶体が濁っているものです。弱視の原因となり早期の手術が必要とな
ることもあります。遺伝性のものは20%、妊娠中の風疹の感染などが原因のもの
などがあります。遺伝性のものでは目の大きさや瞳などの異常を伴うことが多いです。
D緑内障
先天性の緑内障は遺伝するものがあります。成人してからの緑内障は原因となる遺
伝子の一部が最近見つかっています。親が緑内障になったからといってそれほど心
配することはないですが、早期に発見して治療すれば失明の防げる病気ですので、
心配なら一度詳しい検査を受けることをお勧めします。
E網膜色素変性症
夜盲があり視野がだんだん狭くなり、失明する可能性のある病気です。いろいろ
な遺伝の形をとります。厚生省の難治疾患に指定され遺伝子の検索も進められてい
ます。
F網膜芽細胞腫
小児の目の癌です。原因となる遺伝子が見つかってきました。