視 交 叉 (しこうさ)
考えると夜も眠れない話です。人間の視神経は、頭の中で半分交叉しています。
これを視交叉といいます。何のために交叉しているのでしょうか。他の動物は
どうなのでしょうか。
視交叉とは
網膜(眼底)からの神経は、脳の中で右目の神経が左脳に、
左目の神経が右の脳へとつながっていきます。このように
目の情報が反対側の脳に伝わるのを視交叉といいます。
視交叉には、全部の神経が反対側に行く全交叉と、半分の神
経が反対側、のこり半分が同じ側に行く半交叉があります。
ヒトでは半交叉しています。
ヒトの半交叉のしくみです
(左のリンゴとミカンの図を参考にしてください)
@ヒトは両目で目の前の景色を見ています
(手の上に乗ったリンゴとミカン)
A視野の右半分の像(リンゴ)は両目の眼底の左半分に投影
されています
B右目の網膜の鼻側(右目のリンゴが投影されている部分)
の神経は交叉して左脳にいきます
C左目の網膜の耳側(左目のリンゴが投影されている部分)
の神経は交叉しないで左脳にいきます
D 視野の右半分の情報を左脳で処理しています
なんのために半交叉するのでしょう
右目で見ているリンゴと、左目で見ているリンゴは見る角度が違うために形がわず
かに違います。脳では右目で見えているリンゴと左目で見えているリンゴを一つの
像にします。そのときに、左右の像がわずかに違うことを利用して、奥行きや立体
感を感じ取れるようになっています。この能力を両眼視能といいます。
動物から視交叉を考えます
魚、鳥では目は頭の横にあるので、右目と左目では見ている風景が違います。両目
で同じものを見る必要がないため、全交叉でいいのです。蛙は成長に伴って全交叉か
ら半交叉へと変化します。
おたまじゃくしは左右別の風景を見ているので全交
叉です。蛙は両目で見ているので半交叉です。成長
の途中で交叉しない神経がのびてきて半交叉になり
ます。
左図はおたまじゃくしです。全交叉しています。右
目の視神経は全部左脳に、左目の視神経も全部右の
脳にいきます。
右図は蛙です。半交叉しています。右目の神経の半
分(黄色線)は右脳に、残りの半分(赤色線)は左
脳にいっています。
なぜ全交叉するのか
上の説明から半交叉は両眼視のために必要だからだと考えられますが、全交叉はそ
の必要性はないようにも思えます。ヒトの触覚も交叉しています。上の図で、右手
でリンゴを触れているという感覚は左脳に伝えられています。
なぜこれらの神経が交叉して反対側の脳に情報が送られているかはわかっていません。
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