あの日から、故郷が帰れない場所になってしまった。
先祖代々受け継いできた土地を失い、妻子を抱え鬱々と過ごす兄と、胸の奥に諦めと深い悲しみを持つ母。生きてきた土地を離れ、先の見えない日々を過ごす彼らの元へ、20年近く前に故郷を出たまま、音信不通だった弟が突然帰郷した。たった一人で苗を育て、今はもう誰もいなくなってしまった田圃に苗を植える弟。
過去の葛藤を抱えながらも、故郷で生きることを決めた弟が、バラバラになってしまった家族の心を結びつけていく。大地に蒔いた種が、実る未来を信じて-。
<かいせつ>
家族とは、人間とは、命とは-
福島の農村を舞台に名優たちが織りなす
普遍的な人間ドラマ。
困難を乗り越える人間のたくましさを体現する主人公・次郎役の松山ケンイチをはじめ、農家の長男として不条理な現実に苦悩する兄・総一に内野聖陽、老いが進みつつある母・登美子に田中裕子、そして総一の妻・美佐に安藤サクラといった卓越した演技力を持つ俳優陣が終結。さらに、山中崇、田中要次、光石研、石橋蓮司といった実力派が脇を固める。
監督は、ドキュメンタリーでギャラクシー大賞をはじめ数々の受賞歴を持つ久保田直。デビュー作となる本作には、企画協力として是枝裕和と諏訪敦彦、さらに加茂隆(音楽)、小林武史(主題歌)、といった面々が参加し、力を添えている。
脚本は『いつか読書する日』の青木研次によるオリジナル。不条理で絶望的な状況と深い葛藤を乗り越え、希望に向かって歩き始める普遍的な家族の物語を、日本の原風景ともいうべき農村の風景と共に紡ぐ。
- 日本映画製作者協会 新藤兼人賞2014金賞
- 2014年ベルリン国際映画祭 パノラマ部門正式出品
この種に実りがあるように、どんな困難もきっと乗り越えられる。
震災後を生きる家族を通して描く、再生の物語。