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おかあさん、私、ずっと手をつないでほしかった。
上映時間 1時間30分 |
2018年2月5日
現在 |
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松岡 錠司 |
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近藤ようこ 『アカシアの道』(双葉社刊) |
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夏川結衣 渡辺美佐子 高岡蒼佑 |
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自分の母が?介護?
娘は出版社で働くキャリアウーマン。母親は厳しい元教師。娘の生き方は、自分を厳しく育てた母親から必死で逃げ出そうとする戦いにも見える。母との関係は大人になっても理解し合えないまま。そんなとき娘は、突然、母の介護を迫られる。
母に苛立ち、怒鳴りつける美和子。その自分の姿は、子どもの頃自分を叱りつけていた母の姿に生き写し。それが、更に大きな「痛み」として美和子の心にのしかかる。そんな悩みを打ち明ける相手はいない。沢木浩二という恋人だっているのに。
逃げるように彼との旅行に出かけた美和子は、不安にさいなまれ、タクシーで深夜帰宅。案の定かな子は家にいなかった。その事を警察にも電話できない美和子。結局は世間体・・・。
自嘲したそのとき、川田新一という青年がかな子を連れ帰ってくる。初めて会う新一から「自分の親の面倒くらい見ろよな」と叩きつけられるような言葉。美和子は自分の苦しみは誰にも分かりはしないと、孤独感を募らせる。
沢木との関係も旅行以来ぎくしゃくしたまま。結局お互い愛し合ってはいなかったことだけが確認できた。それもこれもみんな母親のせい?
抱えきれないストレスをだいて美和子がとった行動とは。「母と娘」の関係はどうやって修復されるのか・・・。 |
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【介護】を通じた【母と娘】の再生
頻発する青少年犯罪などで報じられる「家族の崩壊」。社会が複雑化し、従来「家族」が持っていた意味が問い直されようとしているのが現代です。
家族を構成している一人ひとりの役割とは?「家族」をつなぐものは一体なんだろう?
既存の社会で定義された「家族」を問い直し、「母と娘」が健やかな再生を果たす物語を、しっかりとした構成と演出、美しい情景を収めるカメラの力でまっすぐに切り取った作品、それが「アカシアの道」です。
「アカシアの道」製作にあたって(松岡錠司)
この作品は母と娘の葛藤の物語です。同時に自分と他者との危うい関係性の物語です。親子であろうと例外ではありません。人は自分の過去を消し去ることができません。記憶は生きてきた証であり、それから逃れられないのです。まとわりつく「過去」が、人に他者への愛や憎しみを抱かせます。他者に向けられた感情は、そして自分に跳ね返ってきます。
根本的な解決はなく、活きる厳しさのみがあります。この映画は救済の映画ではありません。現実と戦う「普通の人々」の姿を描いた映画なのです。 |
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監督・脚本/松岡錠司 製作/ユーロスペース、TBS、PUGPOINT 配給/ユーロスペース 2000年・日本映画 |
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本文及び写真・画像は「アカシアの道」パンフレット他、ユーロスペース提供資料等より |
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