保護者/読み聞かせ紹介/二分間の冒険


二分間の冒険

   本を読むのが好きな人のためのページです
             千葉昌之 HIP


1.本について
  書名「二分間の冒険」 岡田淳     偕成社文庫  \700税別) 

   この本は、昭和60年度の「うつのみやこども賞」に輝いた作品です。これは、宇都宮市立図書館に集まる小学生たちが選ぶ賞です。

2.本の説明

 これは、高学年には文句なしのオススメの本です。なんてったって、「読んでコール」が6年生から出ましたから。
物語りも山場に近づいたある日、「今日はここでやめにします」ということでやめると、「えーっ!」という声。「まだ、読んでほしい」と口々に言う子どもたち。低学年には多い出来事ですが、高学年にはあまりありません。ましてや長編ではなおさらのことです。
 また、「先生、俺はこの話がとても楽しみなんだ。」と言ってくれる男の子がいました。こういう一言で、もうこの本を読んだ甲斐があったというものです。
 1日5分間の読み聞かせで約1か月かかりました。ページ数が253ページということを考えると、1日に7〜10分近く読んでいたはずです。子どもも喜んで聞いているので、読む時間が長くなるのです。
 あらすじを少し紹介します。
 
 6年生の悟は、校庭でダレカと名乗る黒猫と出会い、不思議な時間の流れの世界に行く。そこは竜が支配する国で、竜の館のいけにえとして集められた子ども達は、悟の呼びかけで力を合わせ、竜との知恵の戦いと力の戦いで勝利する。平和が訪れ、この世界で一番確かなものであるダレカ探しの答えも見つけた悟は、2分間しかたっていないもとの世界に戻る。規則的な学校生活の中にもある別な時間を描いて見せた作品である。 

 最大の面白さは「なぞのかけあい」です。知恵の戦いでの「なぞ」をクラスの子ども達も一生懸命に考えていました。例えば、こんななぞを竜が出します。
 「闇の中でもそれとわかるが、光の中でもそれは見えない。音はたてぬし、さわれもしない。どこからくるかはわかっていても、どこへいくかはわからぬもの。それはなんだ。」
 クラスの子どもたちは「風かな?」「空気かな?」などと言いました。
 物語の場面では、主人公の悟はパートナーのかおりにしがみつかれ、「かおり」つまり「におい」が答えだとわかるのです。おもしろいですよね。

 また、高学年が興味を持つのは、異性を意識した作品だからということもあげられます。6年生の男女が2人で、夜も昼も一緒に過し、竜を倒す方法を考えます。ときにはケンカもしますが、だんだんとお互いを受け入れはじめ、理解していきます。次のような表現があります。
 ●悟はふたつのマントを左の肩にかけ、右手でかおりの肩をだいた。
 ●悟はかおりにとびつき、力いっぱいだきしめて、ひくい声でさけんだ。
 けんかしたり、怒ったり、泣いたり‥‥、学校生活でも日常茶飯事のことを悟とかおりは行っていますが、竜をたおすという目的の中で2人は結びついていきます。この世で1番確かなものを教えてくれたかおりと、最後には永遠に別れなければならなくなります。別れるのかどうかを決めるのは悟本人です。別れるべきかどうか葛藤があります。
 聞いている子ども達も、こんな葛藤と戦っているのでしょうか?
 そんな異性との想いを感じさせてくれる作品なのも、高学年をひきつける原因になっているのでしょう。
 高学年には本当にオススメの作品です。私も良い作品に出会ったと思っています。
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