保護者/読書紹介/ゲド戦記


ゲ ド 戦 記 T〜W
   本を読むのが好きな人のためのページです
             千葉昌之 HIP


1.本について
  
書名「ゲド戦記T 影との戦い」 「ゲド戦記U 壊れた腕環 「ゲド戦記V さいはての島へ」 「ゲド戦記W 帰還」  ル=グウィン作  清水真砂子訳 岩波書店   定価Tは1600円 Uは1550円 Vは1650円 Wはあ1850円(税込み)    1998年現在です。
 この本にはルビ(ひらがな)がふってあります。本には「小学6年、中学以上」と対象年齢が書かれています。
 ※このページのアイコン等は、HP「ゲド戦記の部屋」の「タカギトモノリ」さんが作成したものです。

2.ハリーポッターもいいけど‥‥

 「ゲド戦記」。この本は、間違いなく児童書ではbPのすばらしい本だと思っています。
 「ゲド戦記?変なタイトルだなあ。」これが私の第1印象でした。ある書評を読んでいた時です。その1週間後には、私の手元に1巻目がありました。その面白いこと。もう10年程前に買った本ですが、1〜4巻をもう5回読んでいます。
 「5回か‥‥。自分なんて、好きな本を10回も読んだぞ。」という方もいるでしょうが、私は繰り返し読む本というのは少ないのです。大体、2回目を読んでも「ストーリーがわかっているから」と読むのを途中でやめてしまうパターンが多いのですが、この本は5回も真剣に読みました。それほど、夢中に読ませてしまう本でした。
 あとがきにある簡単なあらすじを載せましょう。

 無数の島々からなる国アースシー。見習い魔法使いの少年ゲドは若さゆえの驕りから<影>を呼び出す禁じられた魔法を使ってしまう。
 その時からゲドは、形のないもの、名のないもの、闇の王を求める果てのない旅をする運命を引きうけることになる。ゲドの冒険の数々を深い思想と優れた構想力でえがくファンタジー。 

 魔法使いモノといえば、今は「ハリーポッター」でしょう。3巻目も出て、ますます人気が高まっています。私も読んで、面白いと思いました。一気に読みました。クラスの子どもに読み聞かせもしました。
 しかし、ハリーポッターファンには悪いのですが、「ゲド戦記は超えられない」と思うのです。
 間違えないでいただきたいのは、これは私個人の意見です。本への思い入れなんて人様々なのですから。だから、「私のたわごと」だと思って読んで下さい。 

2.なぜ、「ゲド戦記」の方が上なのか?

 @名語録が豊富にある
  対象は「6年生以上」とありますが、私は6年生には難しいと思います。今まで、何人かの子どもに声をかけましたが、1人も読みこなせた子どもはいませんでした。というより、読んでいても途中で止めてしまったのだと思います。書いてあること、意味するものが難しいのです。
 そんな意味から考えると、ハリーポッターは小学校の中学年から読みこなせる作品だと思います。小学生にとっては、ゲド戦記より、ハリーポッターがいいでしょうね。
 小樽の「絵本・児童文学センター」では、基礎講座の中に「ゲド戦記」の作品で4回の講座が行われると聞いています。テーマはズバリ「人間とは?」です。
 この「人間とは、どのように生きるべきか?」を示唆する文章が出てきます。私にとっては、「名語録」です。この名語録について、2つほど紹介します。
 1つ目は第1巻の「影との戦い」からです。大賢人がおごりふるまう青年のゲドに向かってやさしく諭す場面です。

 「そなた、子どもの頃は、魔法使いに不可能なことなどないと思っておったろうなあ。わしも昔はそうだった。わしらはみんなそう思っておった。だが、事実は違う。力を持ち、知識が豊かにひろがっていけばいくほど、その人間のたどる道は狭くなり、やがては何ひとつ選べるものはなくなって、ただ、しなければならないことだけをするようになるものなのだ。」

 次は第2巻の「こわれた腕環」からです。壮年期のゲドが闇に住む巫女を救い出す場面で、巫女に諭しています。

 「テナー、いいかい、生まれ変わるためには、人は死ななきゃならないんだ。しかし、それは、はたで見るほど、むずかしいことではない。」   

 これは一部ですが、「人間はどう生きるべきか」ということについての語録がところどころにえがかれています。だからこそ、小学生には難しいのであり、思春期を迎えた中学生や高校生に読んでもらいたいの本なのです。もちろん、私達大人が読んでも感銘を受ける部分が多々あります。

A設定が複雑である
 
設定が想像の世界「アースシー」というところです。この世界の地名を把握していないと、面白さは半減してしまいます。ローク・ゴント・ハブナー・アチュアン・セリダー・ワイホートなどの島の地名、そしてこれらの島にある都市も覚えなくてはいけません。
 次のような文があります。

 そんなわけでアスタウェルには寄港せず、ファー・トーリースネッグの島影さえも見ずに通過して、ふたりがまず目にしたのはコピッシュ島最南端の岬だった


 下線の部分が島の名前です。
この地名の位置関係を把握することなく読んでいくと、ゲド戦記の面白さは、半減すると思います。
 私は、島や都市の名前が出てくるたびに、扉の裏にある地図を見ていました。
 ゲド戦記の世界、アースシーは、大きく6つの地域に分けることができます。アースシーの中心ともいえるアーキペラゴ、その周辺部の北海域・西海域・南海域・東海域、そして、第2巻の舞台となるカルガド帝国から成り立っています。
 この地域それぞれに、ゲドは冒険に出かけます。冒険というか、ゲドにとっては必然の旅なのですが。それぞれの地域から出てくる重要な登場人物もいます。この人間関係も複雑に入り組んでいます。たくさんの人物が登場しますが、その1人ひとりが個性的であり、魅力的でもあります。

 みなさんは「三国志」って知っていますか。歴史物語であり、かつて実在した人々がたくさん登場します。どの人物も個性的に描かれています。私は読んだことはないのですが、「十八史略」という本には中国5000年の中で歴史を舞台に活躍した人々のことが出てくるそうです。その数、4000名余りといいますから、すごいですよね。1人ひとりの生き方が書かれているそうです。「人物論」について学ぶなら、この本に勝るもものはないといいます。
 
 「ゲド戦記」には1〜4巻で、数十人の人物しか登場しませんが、人物論について学ぶことはできます。「ゲドの生き方」「テナーの生き方」「オジオンの生き方」などには感銘を受けるはずです。

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