今回の秘宝館は前回に引き続き、広江礼威先生の斬紅郎無双剣漫画の紹介。
主人公は前回と同じく閑丸きゅん。広江先生は本当に少年キャラが大好きですね(笑)。
前回は閑丸がリムルルと出会う話ですが、今回の「五月闇」では牙神幻十郎と出会う話です。
それでは内容のほうをどうぞ。
ストーリーは二人の人物が竹林の間の道を歩いている情景から始まります。
後方を歩いているどこか淀んだ眼をしている少年、緋雨閑丸。
前方を行くのは特徴のある着物を着流す侍、牙神幻十郎。
閑丸は幻十郎の事を尾けているのか、一定の距離を保ちつつ歩いていきます。
突然、竹林に向けて走り出す幻十郎。慌てて幻十郎を追い竹林に足を踏み入れる閑丸。
気がついたら
閑丸の背後に幻十郎の姿。
「小倅(こぞう)…この己(おれ)に何の用だ
岩淵の宿からもう二時半――ぴたりとあとをつけて来やがる
妙な小倅じゃと思っていたが――
なンの魂胆あってか…聞かせて貰うぞ。」
逆に好都合だと言わんばかりに幻十郎に相対する閑丸。
「三月前、遠州岡部郡戸波村で村人の多くを殺め逐電した…
”鬼”とは貴方の事ではないでしょうか。」
やはり閑丸は「鬼」を求めて旅をしていたようです。
それに対し、
「ほォお?そいつァ豪儀だ!如何にもこの己よ!
――と言ってやりたい所だが、己は銭にもならん殺しはやらぬ主義でなァ。」
感心しながら自分ではないと否定する幻十郎。
ちなみに「豪儀」は「することが大きくて度肝を抜かれるさま。また、威勢のよいさま。」と言った意味らしいです。
「岩淵の宿であなたは無宿者六人斬り倒した。
あなた程の使い手は滅多にいるものじゃない。
あの業を以(も)てば村人すべてを惨殺せしめるなど簡単至極―」
それでも幻十郎の犯行と疑う閑丸。
その声を聞いて不適な笑みを漏らす幻十郎。
「フフ……どうあっても己を罪人に仕立てたいらしいなァ
然らば何んとする?和主(おぬし)の背にある赤鰯(あかいわし)でも握ってみるか?」
「この傘で…」
「傘?傘じゃと?
いやこれは傑作!かような邪剣でこの己に勝つつもりか?」
「然らば、邪剣使いのこの僕に勝てますか」
一触即発の空気を漂わせる二人の剣士!!!
気がついた方も多いと思いますが、この作品の幻十郎の喋り方はかなり特徴的です。
何と言うか、実に時代劇。このような喋り方をされるとかなりイメージが広がりまくりでシビれます。
挑発とも取れる閑丸の問いに抜刀する幻十郎!
「勝たいでかッ!!」
踏み込んで空中から傘を突き出す閑丸。モーション的にあの悪魔のジャンプ大斬り!
発生早く、威力高、抜群のめくり性能と斬紅郎無双剣にて最強クラスの飛びこみ。
――と見せかけて閑丸の右手は肩に背負った大祓禍神閑丸へ。
その姿は傘に隠れているために幻十郎からは死角。
そのまま抜刀して幻十郎へ打ちかかる!
しかし、そこは百戦錬磨の人斬り、牙神幻十郎。
その太刀をしっかりと受けて閑丸を蹴り飛ばす。
たまらず転倒した閑丸に幻十郎が追い縋る――と思いきや。
「興に乗った所で悪ィが……ひとまずこの勝負お預けだ。
まったく不粋な奴ばらよの。此処まで殺気が臭うてくるわ!! 」
何やら不穏な気配を感じ、勝負の中断を宣告。
しかし、倒れている閑丸きゅんに妙な色気を感じます。
流石はショタキャラ&半ズボン大好きな広江先生!
謎の浪人の一団に囲まれる二人!
しかし上の色気カットのために閑丸が幻十郎に守られるヒロインにしか見えない(笑)。
それにしても実にいい感じの浪人軍団です。
時代劇的にもう死亡フラグバッチリの三下っぷり。
なにやら鬼熊一家と言う連中で幻十郎への私怨がある模様。
話の流れ的に幻十郎がそこで用心棒か何かをやっていて、
最終的に雇い主の鬼熊一家も手にかけた――といったところでしょうか。
そんな理由に対して幻十郎の返答は。
実に幻十郎的。そーです、幻十郎はこんな感じの男です。
雇いの人斬りもやりますが、気に入らない事があれば自らの思うがまま殺ス!!!
この返答を聞いてブチ切れた鬼熊。
「しゃらくせエ馬鹿野郎!!殺ッちまえェ!!!」
一斉に幻十郎&閑丸に殺到する鬼熊一家。
しかしそれを見ても幻十郎は冷静そのもの。
口元に歪んだ笑みを浮かべ、どこからか花札を取り出します。
そして・・・?
「阿呆ゥが」
斬!!!
「上がりだ!!」
文句なしに格好良し!!!
幻十郎の魅力大全開のシーンです。
特に真ん中の花札と共に斬りつける幻十郎は1ページ丸々使ったイラスト。
あまりの幻十郎っぷりに痺れる憧れるぅ!!!
「…あ…あの野郎…人間じゃ…ねぇ…!」
その鮮やかな手口を見て死屍累々の中言葉を漏らす浪人ズ。
「”鍵辻の政吉”よォ…たわけた死に方をする気分はどうだ?」
幻十郎はもう上着を羽織っており、この程度何でもないと言うぐらいの余裕。
そんな幻十郎を見て好機と悟ったか、
懐から短筒を出す政吉!!! 流石の幻十郎も銃弾の前では不利か?
その時に横から駆け抜ける人が一人。
横薙ぎに払った傘で短筒を弾き飛ばしたのは少年、緋雨閑丸。
そのまま体を捻り、右手で大祓禍神閑丸を抜刀!
そのまま”鍵辻の政吉”を斬り伏せる。
…しかしこのコマから迸る閑丸きゅんのエロスはどうか!!
もう皆さん閑丸きゅんの美尻と脚線美にメロメロですよ!!
そして左下の息をつく閑丸きゅんの表情がもう!もう!
うがー!
何の躊躇も無く”鍵辻の政吉”を斬り倒した閑丸を見て幻十郎が一言。
「まことその眼よ。そいつが無くては――和主の追う鬼……
壬無月斬紅郎には到底敵わぬと知れ。」
どうやら幻十郎は閑丸の事を全て知っていた模様。
その事を幻十郎に問いただす閑丸。
「誤解と知りつつ…何故僕と討ち合おう…と」
「――和主の表情(かお)がの」
「己の知る漢に似ておった――それが気に食わなんだ
だから斬りたいと思った――それだけよ 」
どこまでも幻十郎。やはり幻十郎の脳裏には常にざんばら頭の剣豪の姿。
その面影を見て気に入らないから斬る。ある意味どこまでも純粋なのがこの幻十郎なのでしょう。
「――来い」
構える幻十郎。傘を持ち上げる閑丸
「…本気で」
「さればこそ」
剣の道 まさに修羅の道なり
屍を築き 血河を流し 生き延びる事
是 即ち無敵なり
さて、いかがだったでしょうか? その時代劇がかった言い回しも含めて
「斬紅郎無双剣」&「牙神幻十郎」の魅力を凝縮したのがこの作品だと思います。
主役こそ閑丸ですが、作中でクローズアップされているのはどう見ても幻十郎。
SNK黄金時代に生まれたサムスピ界のアンチヒーローキャラ、
覇王丸の宿敵「牙神幻十郎」の魅力をバッチリ表現した一作だと個人的には思っています。
思えばSNKはギース・ハワードや八神庵、そしてこの牙神幻十郎と魅力的な「宿敵」を作るのが上手かった。
やはり悪役が映える作品というのは見ていてもワクワクするものなのです。
この作品「五月闇」が収録されているのはホビージャパンから出ている斬紅郎無双剣のアンソロジーコミック。
その中でもこの作品はトップバッターとして収録されてます。
アンソロジー自体はブックオフあたりで安価で入手出来るので気になった方がいたら探してみるのもいいのでは。
それにしても広江先生のサムスピ漫画は最高です。またいつか書いてくれたら犬のように喜びます。
アチョー!
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