秘宝01:PS版サムライスピリッツ斬紅郎無双剣


ジャンル
家庭用移植版
対応機種
プレイステーション
発売日
1996年8月30(bestは1997年3月20日)
定価
5800円
入手難易度
簡単(ブックオフなどなら500円前後)

プレステというのは2D作品にあまり向いていないと言われます。
当時有名格闘ゲームの移植のメインは拡張ラムの使えるサターンが中心でした。
サターンはサターンで問題があったわけですが、作品によってはかなり移植度が高くよくゲーセンに行く前に練習したものです。
それでもサターンではなくプレステで2D描写バリバリの格闘ゲームを単純に移植しようとしたらどうなるのか?
その答えがこのPS版斬紅郎無双剣です。


いきなりですが、SNKは移植が下手です。ヘボいです。
どの移植作品を見てもまともに移植できた例は・・・ほぼ皆無です。
サウンド&SEに関してはもはや致命的で、音に凄まじいまでの劣化がかかっています。
つい最近発売されたPS2版サムライスピリッツ零ですら音の劣化はバリバリです。
そんなダメダメ移植が多いSNK作品でもこのPS版斬紅郎無双剣はダントツで最悪の移植でした。
・・・KOFEXには負けると思いますが。
この斬紅郎無双剣、致命傷な点が2つあり、それは「ロード時間」と「地獄のような処理落ち&コマ落ち」です。
まずそれらについて触れてみたいと思います。


ロードですが。とにかく多い。長さもそうですが、まずそのロード回数が多い。
別の画面に行くたびにロード、ロード、ロードでイライラ指数は相当高いです。
斬紅郎無双剣のゲーム開始からの基本的なフローは

キャラ&剣質選択→VS画面表示→試合開始→勝利者の勝ち絵表示→VS画面・・・

と進んでいきますが、これが

キャラ&剣質選択→ロード→VS画面表示→ロード→試合開始→ロード→勝利者の勝ち絵表示→ロード→VS画面・・・

となるわけです。長いっ!!!遅い!!!
移植作品とかでよくある便利なデモカット機能なんざ当然の如くありません。
んで、その1回のロード時間もそれなりに長く、1試合している時間よりも総ロード時間のほうが長いんじゃないかと思えるぐらい。
そもそも、やった人ならばわかると思いますが、斬紅郎無双剣ってかなりテンポの良いゲームです。
ダメージが異常にでかいのもそうですが、スタートボタンでの勝利演出カットの機能で連続で戦えるのです。
(ちなみにPS版ではスタートによる勝利演出カットも当然の如くありません。)
移植前のテンポの良さもあって、PS版のこのテンポの悪さはかなり萎えます。


そして、もう1つの致命傷ポイントが処理落ち&コマ落ちです。
ここらへんの記述はちょうどネオジオ+αニュースさんが日記で書かれているレポートが全てを物語っています。
(2005年10月9日参照)
以下、>部分はその日記から拝借。



>パケ裏に「処理スピードアップでよりスピーディーな対戦を実現!」とあります。

>やってみたところ確かに歩きの移動速度が上がってるんですよ。
>ネオジオ版に比べて1.2倍くらいでしょうか。

>でもダッシュしたら処理落ちします、ジャンプしたら処理落ちします、
>必殺技を出したら処理落ちします、極限空間になったら処理落ちします、

>果ては通常状態で処理落ちしてます。
>右京ステージなんて何もしてなくても常に処理落ち。

処理落ちを誤魔化す為にゲームスピード上げたんじゃないの?

>たぶん間違い無いと思います。 でも結局処理落ちするのでほとんど意味が無く…。

>むしろそのせいで処理落ちしないポイントでは高速化するので
>連続ジャンプしてるとすごいカクカクに。速いコマ送り状態。

>グラフィックの描画が追いついてないのか
ジャンプ頂点>いきなり地上なんて事もしばしば。

>どうやら背景のせいで処理落ちしてるらしく
>武器飛ばしを使うと背景フラッシュで処理落ちしなくなり高速化。

>拳舞は一瞬で画面端まで運びますし、ヒットストップもほとんどありません。
>「間」の演出風情なんて皆無です、笑うしか無いです。



いやぁ、PS版斬紅郎無双剣の全てを物語っている文章です。
こんなモノが定価5800円で売られていた時代があったのですよ。
確かに斬紅郎無双剣の背景はかなりよく出来ています。ステージによってはオブジェクト&エフェクトが動きまくり。
続編の天草降臨でその数が減ったぐらいのオブジェクトが入り乱れています。
それをまともにPSで動かすからこうなるわけです。素直にオブジェクトを削除するという選択肢はなかったのでしょうか。
この作品のグラフィックの描画が追いついていないのは、誰が見ても分かるレベルです。
エンディンの斬紅郎のモノローグですが、最初の部分は早く文字が流れていくけど
真ん中のあたりで(画面が文字で埋まったので)突然文字の流れる速度が遅くなって
最後のあたりで(画面から文字が消えてきたので)また早く文字が流れたりするのは
なんというか見てて目頭が熱くなってきます。


そしてさらにコマ落ちです。コマ落ちというか、キャラクタードットの中抜きでしょうか。
おそらくキャラクタードットの枚数がプレステで使える容量を遥かにブッチしたために、
適当にアニメーションの途中のドットを削除して容量節約をするのです。
このため1部のキャラの動きがやたらとカクカクしたものになるわけです。
ネオジオ+αニュースさんも言っていましたが、破沙羅の近立ち大斬りなんて目も当てられません。
振り上げるまでにおそらく2枚ですよ2枚。どこのKOFの弱パンチですかそれは(笑)。
そしてその中抜き&コマ落ちのせいでタイミングが狂ったり入らなくなっている連続技があったりとステキ過ぎます。


ちなみにドットの中抜きですが、実は斬紅郎無双剣よりもPS版天草降臨の方が凄まじい事になっています。
ただでさえドット数の少ないキャラがさらに少なくなって目も当てられない状況に。
必見なのはタムタムの前ダッシュです。1枚絵でホバー移動するタムタムはマジで爆笑モノです。
閑丸のしゃがみ大斬りのようにドット絵は削られたけど判定は同じだからわけわからん場所でHITすると言うのもあります。


他にも
相変わらずボタンが○×△□しか割り振れないのでネオジオ配置が出来ないとか、
勝利時に出る名前の絵がやたらと小さくて迫力皆無とか、
ローディングのせいでエンディングの音楽と絵の同期が取れていないからダサイとか、
キャラ選択でキャラが1枚絵で棒立ち&キャラ決定アクションが無いとか、
処理落ちでゲームが遅い進行なのにタイムカウントの進行が早いためタイムアップが多いとか、
ネオジオCDをベースで作ってあるのでCPUルーチンが違ってゲーセンとかで使ったCPUパターンが使えなくて萎えるとか、
ネオジオCD変更のせいで天草の小足が修正されてしまっていて天草がマジでゴミになったとか、(←重要)
言語で韓国語が無いからきむうんちぇーが居ないとか、 (←超重要)
致命的な2点以外にも細かくダメな部分が山ほどあるので、
その人のネオジオ版をプレーしてる時間が長ければ長いほど不快指数は高まっていくと思われます。


2003年4月24日にPS one Booksで再販されましたが、とてもじゃないけど定価2,079円の価値はありません。
たぶんその2,079円の2000円分は書き下ろしのジャケットの価値です。
これでもまた購入するという酔狂な方&クソゲーハンターがいるのならばブックオフなどで投売りされてるヤツを買いましょう。
あと、買ったとしても決してお金を払ったと考えない事です。おそらく怒りが沸いて来ると思われるので。
それならば十分に楽しめるはず・・・だと思います。


最後に。
剣サムでサムライの過去作品に興味を持った方。

決してPSの移植版は買わないで下さい。

PS版は基本的に過去作品の魅力の2%ぐらいしか表現していません。
買うならネオジオ版か基盤を買いましょう。


・・・いや、斬紅郎無双剣は面白いんですってば!
破綻してるけど全キャラ破綻してるからバランス取れてるんですってば!
身内でプレーすると本当に盛り上がる作品です。色々な意味で。

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