Dr. Norman Nutjob’s

"50 Close Up Problems"

A Crimp Publication

(Dr. Norman Nutjob c/o Jerry Sadowitz
Flat 28, 177 Finchley Rd.
London NW3 6LG, UK)




「プロブレム」というのは、マジックの世界にある問題のことです。 問題と言っても、トラブルのことではありません。 「宿題」とでも言ったほうが近いでしょう。 あるテーマを解決するための、「方法の研究」です。 それを「プロブレム」と呼んでいます。 (マジェイアさんの魔法都市案内〈注1〉から引用)


  私がこの本を入手したのは、1999年12月にロンドンで開催された、” 28th Annual International Magic Convention” に参加したときであった。 このコンベンションは、ロンドン市内にあるマジックショップ、インターナショナル・マジック〈注2〉が主催するもので、毎年12月第一週の金土日に開催しているそうである。

 プログラムは次のとおりであった。

12/3 夜 レクチャー Derren Brown(U.K.)
                David Stone(France)
               Steve Draun(U.S.A.)

12/4 昼 優勝賞金1000ポンド(16万円)のクロースアップマジック
        コンペティション
      夜 レクチャー Eric De Camps(U.S.A.)
               Harry Lorayne(U.S.A.)

12/5 昼 Harry Lorayneを囲んで、質疑応答
        昨日のコンペティションの結果発表
        10人のプロ、セミプロによるクロースアップマジック
      夜 劇場でのGala Show(ステージマジック)

 なお、会場ではヨーロッパ各地のディラーが店を出していた。(日本からは名古屋のUGMが出店していた。 山本勇次さんは最終日のガラショーにも出演された。)

 その中で一人のディラーが小さな机の上に数冊の本を並べていたのがこれである。 「クロースアップにおける50のプロブレム」と興味をそそる題名だし、ノーマン・ナットジョブ博士となにやらいわくありげな著者でもある。 ただ、表紙、背表紙をいれて16ページしかなく、表紙(上の写真)と同様、中身も手書きのちょっと怪しい本である。 買うしかないと、店じまいをはじめたディラーに「いくら?」と聞くと、「4ポンド(だったと思う、日本円で700円程度)」と言う。 小銭以外は20ポンド紙幣しか持っていなかったのでそれを出すと、「おつりが無い。 明日ロンドンの店のほうに買いにきてくれ」とのこと。 「今、旅行中で明日日本に帰らなければならない」と言うと、ちょっと考えて、「じゃあ、ただにしてあげるから持っていけ。 しかし、これはマジックの本ではないよ」と、またまた怪しげである。 

 彼の気が変わらないうちにと、ありがたくいただいた。 夜ホテルに戻って早速読んでみる。

 前半がプロブレム篇で、後半がソリューション篇となっていて確かに50番まで番号がふってある。

 〔プロブレム第一番〕 マジシャンは昔からよく知られている「ポケットへ通うカード」を演じる。ここでのプロブレムは、マジシャンが一糸もまとわずに演ずること。 観客もすべて裸でなければならない。 パームは使ってはいけない。

 なっ、なんだこれは。

 〔ソリューション第一番〕 マジシャンは大食いをして、できるだけ太る。 するとGut(腸)の下に自然にポケットができる。 そのGut(てぐす)がカードを投げ入れるトピットの役目をするのでパームは不要である。 故Matt Schulien が好んで演じたマジックである。

  さっき「マジックの本ではない」と言われたわけがわかった。 これはジョークの本であった。 そう判って読んでみると実に面白い本である。 ここでいくつかプロブレム篇のみ紹介する。

 〔プロブレム第二十六番〕マジシャンがフォースしたはずのカードが客の手の中でマジシャンの知らないカードに変わってしまう。

 〔プロブレム第三十二番〕サッカートリック…マジシャンが客の選んだカードを当てようとするが失敗して別なカードを出してしまう。 マジシャンが指をスナップすると「今の客」が、「以前その別なカードを選んだことのある客」に突然変わってしまう。

 〔プロブレム第四十二番〕客がカードを選び、覚えてから元に戻しシャッフルする。さらに60から100の間の好きな数を言う。 選ばれたカードがデックのその枚数目から出現する。

 〔プロブレム第四十四番〕マジシャンはよく知られているインビジブルデックを演じる。しかしインビジブルデックを渡された観客は実際にそのデックを触って感じることができる。

 などなどである。 これらのすべてに(一見合理的な)ソリューションがついている。

 これらのプロブレムのソリューションを知りたい人は、この本を購入されることをお勧めする(上記の住所に申し込まれるとよい)。 英語の勉強と、格好の話題作りになる。


〈注1〉        マジェイアさんの魔法都市案内…本ホームページのLINK集を参照してください。 マジェイアさんのホームページのなかの「現代カードマジックのアイディア」(松田道弘著)の書評ページから引用させてもらった。

〈注2〉        連絡先: Martin MacMillan, International Magic,
              89 Clerkenwell Road, London EC1R 5BX, UK
             Tel: UK+(0) 171 405 7324/ Fax: UK+(0) 171 831 2927

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