フジ(藤)/ヤマフジ(山藤)
Japanese wistaria
学名:Wisteria floribunda DC.
マメ科、フジ属、落葉つる性木本
日本人の生活や伝統文化に密接な関連をもつ日本固有種である。ノダフジ(野田藤)ともいう。岩手、埼玉、
山梨、静岡、福岡などの各県には天然記念物に指定されているものがある。茎は初め草質、生長が早く、
長く伸び、右巻きに他物に巻きつく。後に木質化して老大し、径数十cmに達する。鑑賞用に栽培されるも
のは藤棚として整枝される。葉は大きく、9~19枚の奇数小葉をつける羽状複葉で、長さ20-30cm、小葉
は卵形で先がとがり、長さ4-10cm、4~5月ころ長く垂れ下がる総状花序を伸ばし、多数の蝶形花をつける。
花序は普通20-30cm、長い物では2mにも達する園芸品種がある。花は美しい紫色で藤色と呼ばれるが、
白色や淡紅色の園芸品種もある。
果実は細長く、扁平で長さ15-30cm。果皮は木質で固く、細かい毛が密生している。冬に空気が乾燥して
くると2片にはじけて、円形、扁平な種子を飛び散らせる。本州、四国、九州の低山地、平地に生える。
古くから鑑賞用として日本で広く栽培され、園芸品種も多い。つるはひじょうにじょうぶなので、いすや
籠などの家具として利用され、またかっては繊維をとり、織物にしたり、ロープのように利用された。
ヤマフジ(山藤)W.brachbotrys Sieb. et Zucc.はフジに似るが別種で、カピタンフジとも呼ばれる。
本州西部、四国、九州の山地に野生する。つるが左巻きで、小葉は9~13枚、成葉の両面に細かい
白毛が密生する。フジと同様に栽植され、シラフジ(シロカピタン)などの栽培品種がある。
フジの類はほかにシナフジW.sinensis (Sims.) Sweet(英名 Chinese wistaria) や
アメリカフジW.frutescens (L.) Poiir(英名 American wistaria)
も中国や欧米で栽植されている。
フジ類の植物体には配糖体のウィスタリンwistarinを含有し有毒であるが、少量で腹痛などの薬として
利用されることがある。
(出展:世界大百科事典 平凡社)
2009.04.15 9:22 横浜市金沢区 住宅街の民家の庭
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2011.05.06 9:12 横浜市磯子区区役所前の藤棚 山藤(かもしれない、確認中) 2011.05.05 16:57 横浜市金沢区 検疫所長浜処置場の裏山 :W.brachbotrys Sieb. et Zucc. (山藤)か Wisteria floribunda DC.(藤) であるかは、 つるが左巻きか右巻き で判断できる。 |
この裏山一帯に含まれる検疫所長浜処置場では、世界的細菌学者として有名な野口英世博士が 明治32年(1899)に検疫医官補として約5ヶ月間、検疫業務を行っており、ペスト菌患者の発見に も功績を挙げたところです。 この藤の花は、西向きの山肌を覆うように咲いており、平城・平安朝や鎌倉期の歌人貴族文人 の愛でた「藤の花」の、趣きを今に伝えています。 「万葉集」より大伴四綱 ”藤浪(ふぢなみ)の 花は盛りに なりにけり 平城(なら)の都を 思ほすや君” 鴨長明「方丈記」より ”春は藤波を見る。紫雲のごとくして、西方ににほふ。” 「金槐和歌集」より源実朝 ”ふるさとの 池の藤波 誰植えむかし忘れぬ かたみなるらむ” 最近の詠み手にも藤の花は人気があり、 日経歌壇より 西本幸三 ”藤の花に三たび遭ひたり今朝の道高きあり低きあり長きあり短きあり” 日本経済新聞(2015/05/24) 参考文献:浅見和彦校訂・訳「方丈記 鴨長明」ちくま学芸文庫 |
白い花の藤 2015/04/30 16:40 NEC N-01E 横浜市金沢区能見台1 緑道沿いの民家の庭先 |
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