ディープ アクアリウム 深海生物を地上で長期飼育、給餌できるシステムを紹介するページ
「ディープ アクアリウム」は深海生物の捕獲と飼育を兼ねられるシステムとして、海洋科学技術センター・極限環境生物フロンティア研究システムで開発されました。
(参考:ディープ アクアリウムは(株)エイブル/バイオットhttp://www.able-biott.co.jp/にて製造しています。)
「ディープ・アクアリウム」この興味深いシステムの紹介を以下↓で行ないます(^^)。
さて、その前に、このページの主旨を説明いたします。
主旨説明:北村のホームページ、ヒリヒリではディープ・アクアリウムの存在を広く知ってもらうため、海洋科学技術センターの許可により、このシステムの情報を掲載しています。ヒリヒリの発信する情報によって、システムの将来性や使用方法の幅が広がるのはもちろん、北村個人としては、生きているチョウチンアンコウが間近でのぞけるようになってくれることを期待しています(^^)。
ではディープ・アクアリウムの紹介を始めましょう。
:ディープ・アクアリウムとは?
ディープ・アクアリウムは深海生物の捕獲と飼育を兼ねられるシステムです。さて、このようなシステムを実現させるためには技術的に幾つかの課題をクリアしなければなりません。
そもそも、意外だと思われる人もいるかもしれませんが、深海生物を地上まで運んでくるさいに生じる第一にして、そして最大の解決されていない問題は圧力です。深海では深く潜るほど、上にある海水の重みで圧力が高まります。地上の私たちは空に広がる空気の重さを空気の圧力(大気圧)として感じます。この圧力は海抜0メートル、つまり海面ではおおむね1気圧ですが、海の中では10メートル潜るごとに1気圧分の圧力が加算されていきます。
そして浅い海と深海の境界(太陽の光の透過率が1%を割り込むところ。きれいな海だと水深200メートルぐらいだといわれている)、水深200メートルにおける水圧は20気圧以上に達し、日本の有人深海調査船しんかい6500が潜れる最大深度では650気圧、マリアナ海溝の最深部では1000気圧以上に達します。
イメージをしてみましょう。私たちは1平方センチメートル(だいたい爪の大きさ)に約1キログラムの圧力を受けています。これが1気圧です。これが水深200メートルになると、20キログラムになります。
さあ、20キログラム入りのお米の袋を指にのせて見ましょう。次ぎにあなたの隣に人がいれば、体重を聞いてみて下さい。体重60キログラムの人が指の上にのると、それが水深600メートル(危険ですから実際には乗らないで下さい^^)。そしてマリアナ海溝の最深部では1トンの水圧がかかっていることになります。まさ に車にひかれた爪ですね。
深海生物はこうした高い圧力がかかった環境で暮らしており、高圧に適応しています。逆に言うと海の表面や地上の圧力は彼らにとって低圧すぎるのです。たいていの深海生物は地上における1気圧という圧力が極めて低い環境には耐えられません。また、冷たい海水の中で生活する彼らにとって、地上付近の水温は異常に高いのです。深海生物からみると地上の世界は生きていくことのできない死の世界です。
:ではどうすれば良いのか?
そこで深海生物の捕獲は理想的には深海で行ない、そして深海の圧力を保ったまま地上へ運ぶ必要があります。そのため特殊な水槽が必要になります。
ディープ・アクアリウムはそのための条件を満たした水槽で、
1:潜水艇で深海まで水槽を運搬し、
2:そこで深海生物を捕獲し、
3:地上に持ち帰り飼育観察する。
以上、一連の操作が連続して出来る水槽システムです。
ディープ・アクアリウムは、可能な限り深海環境を再現したまま深海生物を地上まで運んでくることが可能なように設計されています。
また、このシステムは、高圧を保ったまま内部の動物に給餌することが可能で、すでに深海魚であるボウズカジカを高圧力の環境で2ヶ月間飼育することに成功しています。
ところで、このボウズカジカ、北村の聞いたところによると、停電のせいで死んでしまったそうです。担当の三輪さん・小山さんのお話では、休日などで部屋を空けているときに、水槽システムの循環系のトラブルで逝ってしまったそうな。初期の頃は、ずいぶんと装置のトラブルもあったようですが、改良を重ね、現在はシステムの運営が順調にいきそうなめどがたっているということです。
また、三輪さん・小山さんによると、まだ水槽が少ないために長期飼育は後からするとのこと。まずはこの水槽を複数個揃えていきたいということです。また、もう一つの悩みとして、飼育の面倒を専門に見る人がいないということです。装置1台のために人を張り付けるのは難しそうですが、この記事を読んだ人が名乗りを上げてみてはどうでしょうか?
:では何ができるのか?
こうしてディープ・アクアリウムによる生きた深海生物の運搬と長期飼育が可能になりました。このことによって深海生物の細胞が高圧にどのように反応しているのか、また深海生物の細胞が高圧下で生存する仕組みそのものがどうなっているのか?それらが解明されるのも近くなってきました。また、チョウチンアンコウなどを地上で長期飼育できる可能性が見えてきました。もしかしたら近い将来、水族館で生きているチョウチンアンコウを目にすることができるかも知れません。
地上で飼育されるチョウチンアンコウのイメージ図 以上のような感じで生きているチョウチンアンコウを目の当たりにできたら嬉しいと思いませんか?。
※情報提供:海洋科学技術センター 極限環境生物フロンティア研究システム
なお、北村はディープ・アクアリウムの公開された情報しか知りません。とても興味があるという方は、直接研究者に問い合わせて下さい。
海洋学技術センター 三輪哲也さん miwat@jamstec.go.jp
※以上のメールアドレスは三輪さんの許可により掲載しています。
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