歴史カードの紹介

 歴史カードは神田神保町の奥野カルタ店から、2002年の春に売り出される予定のカードです。世界史をカードで遊びながら学ぼうというコンセプトで作られているもので、イラストには、なるべく”事件(例えばコロンブスのアメリカ大陸発見など)”を説明する要素を入れて描いています。

 例えばちょっと”マゼランの世界一周”を例に見てみましょう。

マゼランの世界一周

1519年

 マゼランの説明:なぜ彼は世界一周をしようと試みたのか?。

 

 マゼランはポルトガル人でしたが、ポルトガルのスパイスの独占の一角を切りくずそうと、スペイン国王の援助で西回りの航路を開拓しようとしました。後で述べますが、当時のポルトガルはアフリカの喜望峰をまわってインド洋に入る東まわりの航路でインドや東南アジア(特にマラッカ諸島)のスパイスを独占的に輸入していたのです。

 マゼランたちが出発したのは1519年、大西洋を横断し、南米最南端の海峡(マゼラン海峡)を渡って大平洋に入って西へ進み、盗みを働いたとしてグアム島の住人を殺害するなどしながら1521年にはフィリピンに到達します。

 マゼランはここで島民にキリスト教への改宗をせまり、セブ島の首長のひとりと”友好関係”を結んだといいます。そしてマゼランの要求に従わないマクタン島の酋長ラプラプを倒そうと戦い、逆に殺されました。マゼランの艦隊が帰還したのは1522年のことです。

 

 

 カードの説明:何が描かれているのか?

 イラストはマゼランとラプラプの戦いを描いています。戦闘は浅瀬で行なわれ、右がマゼラン、左がラプラプです。フィリピンはこの後、スペインの植民地にされてしまったので、ラプラプは現地ではスペイン人に抵抗した英雄として扱われています。(記念祭では毎年この時の模様が演じられるのだとか)

 背景の地図中の黄色の部分はスペインおよびその植民地(メキシコにあったアステカ帝国がすでに滅ぼされているのに注目)、オレンジの部分はポルトガルとその植民地を示しています。矢印とその線はマゼランの航路、南米、チリにあたる場所にある紫はインカ帝国を示しています。

 マゼランが欲しくてたまらなかったであろうスパイスはマゼランの上に描かれています。右の赤く楕円形のものがナツメグ、左の緑でブツブツしたものがコショウです。

 さて、これで大体このカードがどんなものなのか分かるかと思います。発売までしばらくお待ちください。

 

 

 スパイスに関する簡単な説明 

古くから、例えばローマ帝国の時代からコショウなどのスパイスはヨーロッパでは貴重なもので非常に高価でした。これらのスパイスは中世ヨーロッパでは東南アジア・インドからアラブ人のようなイスラーム商人やイタリアのヴェネチア商人の手を介して輸入されていました。

 ポルトガルは1488年にはアフリカ南端の喜望峰に到達していたので、そこからインド洋のイスラーム商人の作り上げている交易圏に侵入する形でスパイス貿易に直接参加しようとしました。侵入という表現を使いましたが、実際、彼らの手段は軍事力に裏付けられた暴力を用いるもので、イスラーム商人の商船を略奪し、町を焼き、住民を残虐なやり方で殺害して威嚇し、港などを占領するというものでした。

 一方、スペインはコロンブスの”いわゆるアメリカ大陸の発見:1492年”以来、(コロンブス、西インド諸島到達のカードを参考)南北アメリカを植民地にし、土地の文化を破壊し、住民を銀鉱山などで酷使して安価な銀を大量に生産しました。この銀は世界経済を大きく変えていきます。またポルトガルのサトウキビ生産のためにアフリカから奴隷が輸入されるようになります(イギリス、東インド会社設立のカードを参考)。同じことはスペインの植民地でも行なわれました。

 このようにスペイン、ポルトガルの商業活動は非常に残酷なもので、現地の文化を破壊していきました。チリにあるインカ帝国も1533年にはスペインに滅ぼされてしまいます。