学会で質問、疑問、これにどう答えよう?

 02.06.26 up!!!

 

 

 あなたが学会で発表するのは以上のような図です。左からアアア、イイイ、ウウウ、エエエ、オオオ族です。以下の質疑応答が示すように、この図はアアア族の特徴と、残りのすべての部族の服装を比較した場合に成り立ちます。

 つまり服装系統図はある仮定に基づいた仮説です。ですが、テスト可能な仮説であって、どの程度確からしいのか確かめることができます。

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 さて、お日柄もよろしく学会がやってきました。さて、学会の席上、あなたは自分が研究した部族の服装がどのように進化したのか?、そもそもどのような関係にあるのか?、その推論方法と結果を発表しました。

 するとさっそく反論やら質問がありました。

 まずはこんな疑問です。

 「興味深い意見ですが、あなたはまるで白い服装から赤い服装が生まれたということを知っているようです。そうでなければこのような図は描けません。

 ですが、あなたが知っているのは赤いリボンを持ったエエエ族には昔、白いリボンをもった人たちがいたという事実だけではありませんか。

 それなのに、なぜ白い服装から赤い服装が進化したということを前提にできるのですか?」

 

 あなたはしばらく考えるとこう言いました。

 「実際そうですね。白い服装から赤い服装が現われた。赤い服装の方が新しく生まれた特徴である。そう私は仮定しました。」

   

 

 あなたは白い無地のワンピースから赤いワンピースが生まれたと仮定しているのです。

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 すると相手はさらにこう聞き返してきました。

 「あなたの仮定なのですか?。仮定に基づいた結果をあなたは提案したのですか?。

 では、この結果の正しさはあなたの仮定に基づいているのですか?。

 あなたはこれが正しいだろうと勝手に決めた上で、その仮定に基づいた意見が正しいだろう、そんなことを言っている。それはおかしなお話ではないでしょうか?。」

 

 あなたは相手のこの言い様には内心笑ってしまうかもしれません。とはいえここは学会です。ちゃんと相手の誤解を解かなければいけないでしょう。

 「私は白い服装から赤い服装が現われたと仮定しました。ですがそれが正しいとは言っていませんよね?。ようするにこれは、ある条件を仮定するとこういう結果が得られたというだけの話なんですよ。」

 そうなのです。あなたは、

 1:服装は、すくなくともある部族で白から赤に変わった、そう仮定した

 2:その仮定に基づいて部族の服装の特徴を整理すると以上のような図が描けた

 

と言っているだけで、仮定が絶対に正しい、とか、結果が絶対に正しいなんていって言っているわけではないのです。

 

 すると相手はこう言ってきました

 「するとあなたは正しくもない意見を正しくないと分かったうえで発表しているのですか?。それは無責任ではないでしょうか?。」

 

 これにはさすがにあきれてしまうかも知れませんが、あなたは説明しなければいけません。

「それは奇妙な言い方ですね。いいですか、私は”ある仮定に基づいたある仮説”を提案したのです。マイケルソン・モーリーの実験の後、光速度が一定である、あるいは一定ではないという仮定に基づいて多くの研究者がそれぞれ違う仮説を提案したようにね。

 それらの仮説は無責任な意見ですか?。いや、そんなことはない。それらは検証することができる仮説なのです。そして検証された。違いますか?。

 同じように、私の意見はテストすることが可能なものなのです。私の意見が無責任かどうか?、それはテストしてみてから結論しても遅くはないのではありませんか?」

 

 

 注:マイケルソン・モーリーの実験:

 実際にあった実験で、1887年に行われました。その内容は、光の速度が物体の運動の影響を受けるか受けないか、でした。

 動く歩道というものがあります。そのうえで歩いたら私達は、動く歩道+歩く速さ、で移動することができます。このように動く物体の上で運動する物体の速さとは、2つの速さが足しあわされたものです。

 アメリカのマイケルソンとモーリーは地球の自転方向(←)と自転方向と直角の向き(↑)、それぞれに光を放ってその速度に違いがあるかないか、それを調べました。

 普通に考えれば、地球の自転方向に発射された光は、光の速度+地球の自転速度、になるはずです。一方、自転と直角の向きに発射された光の速度は、光の速度と地球の自転の平方根、になります。

 難しい話抜きに考えると、地球上では。光を放つ向きによって光の速度は変わるはずなのです。しかし結果はそうではありませんでした。光の速度は変化しないのです。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?。

 光の速度が変化するのだが、なんらかの理由でそれが観測されないのだ、そういう意見もあれば、アインシュタインのように光の速度は物体の運動に関わらず一定なのだ、そういう考えもありました。

 そうした仮説のうち、後の実験によって確からしいと認められたのはアインシュタインの考えでした。

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 すると別の人が質問してきました。

 「過去のことはすでに起こったことで確認できませんよね。私達はタイムマシンを持っていない。それなのにあなたは”テストする”ことができるという、それはどういうことですか?。」

 

 なるほど、この質問はもっともかも知れません。どうしたものか?。ここであなたはこんな返答をするでしょう。

 「確かに、そういう意味では実験したり、テストしたりはできませんね。ですが、別の仮定に基づいた仮説をあなたが提案すれば、私の仮説とあなたの仮説を比べることができますよ。どちらが確からしいか?。それを話し合うことができると思いませんか?。」

 するとまた別の人が質問してきました。

 「どうすれば仮説を作れるのですか?。」

 

 そう、どうすれば新しい仮説が作れるのでしょうか?。ここであなたがやったことを思い出してみましょう。あなたはどこから”白い服装→赤い服装”という仮定をひっぱってきたのでしょうか?。白い服装、アアア族と残りの部族を比較することによってです。

 要するに、

 1:仮にある部族Aと比較する

 2:服装の同じ部分であるにも関わらず、その部族Aが持っていない特徴が他の部族に見られる場合、その特徴は部族Aの持っている特徴から変化したものだと考える

という考え方をしたのです。

 

 ようするにアアア族と比較した場合、アアア族の服は白、しかし残りの部族では赤である。この場合、服装の赤という色は白から派生したものであると考える。そういうわけです。

 

 

 

 白いワンピースを着るアアア族と残りの赤い服を着る各部族。

 アアア族と比較したから、ボウシ島の各部族が着る赤い服という特徴は”後からうまれた新しい特徴”ということになったのです↑。違う部族と比較すれば、また違う見方があるでしょう。

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 では、どうすれば新しい仮説を考え出せるか?。答えは簡単、別の部族、つまりアアア、イイイ、ウウウ、エエエ、オオオ族でもないもっと別の部族と比較すればいいのです。

 ここでボウシ島の北西にあるもう少し大きな島、フェアリ島のリリ族に注目してみましょう。

 

 

リリ族の服装はセパレートのツーピース、ボタンと腕輪が特徴です。服装の色は緑で、高いサンダルをはいている点ではボウシ島の部族と共通しています。

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 ではちょっと比較してみましょう。リリ族の服装と比べた場合、白から赤がうまれたという仮定は成り立つのでしょうか?。

 

 まて次回!!^^)