月
Moon
月齢10
2014年5月9日、21:00〜日付変って翌0:45にかけてスケッチした月
9日正午における月齢は9.9
スケッチの時の月齢は10.3~10.4となります
ここでは月齢10として扱います
*ちなみに望遠鏡で月を見ると、上下左右が反転して見えるので注意(ようするに以上の画像をひっくり返した形で見えます)
北半球ではシヌス・イリドゥム(SINUS IRIDUM:虹の入り江)が朝をむかえました。虹の入り江は半ば海に沈んだクレーターで、現在は半円形の入り江になっています。画面左では虹の入り江を縁取る山々が周囲よりも先に朝日を浴びて、闇の中から浮き上がるように輝いています。当日は気流の状態が悪く、望遠鏡で覗く月はかなり揺らいでいる状態。虹の入り江の闇に浮かんだ山々を見ていると、そこは揺らぎに応じて、明るさを変え、時に閃光を放つように輝く時もありました。月に異常現象を見た、という報告は、昔は多くあったようです。なぜそういうものが見えるのか、こういうこともその理由のひとつかもしれません。
以上の画像に対して、地形に呼び名を入れたものは以下
マレ・インブリウム(MARE IMBRIUM:雨の海)は、その半分以上が姿を見せています。赤道付近にあるクレーター・コペルニクス(Copernicus)がその全容を見せました。コペルニクスはその横にあるクレーター・エラトステネス(Eratosthenes)と共に、月面で初めて地質図が描かれた場所でもあります。まず、コペルニクスとエラトステネスの周囲には山があります。これは雨の海を縁取る山ですが、これは海の溶岩に埋もれています。そしてコペルニクスがその上に出来ています。ようするに、この画像を見るだけでも
雨の海以前の地形=>雨の海の形成=>雨の海に溶岩があふれる=>エラトステネスとコペルニクスが出来る
このような地質的な順序を見て取ることが出来ます。
また、雨の海の南東からクレーター・パラス(Pallas)とマーチソン(Murchison)、そしてボーデ(Bode)とウケルト(Ukert)にむかってのびる舌状の地形。興味深いことに、月齢9と10ではこの地形の南西(イラストでは左下)の部分が妙に黒いことが見て取れます。月齢10において、この地域では太陽はすでに高く上がっています。それはクレーター・パラスやマーチソンの影が不明瞭であることから、明らかでしょう。つまり、舌状の地形の黒い部分。これは影ではありません。この周辺が他より黒い色をしていることを示しています。
この舌状の地形は巨大クレーターである雨の海の放出物です。ですから最初見た時は、隕石衝突の高圧と衝撃で融けた部分なのかと思っていたのですが、どうもそうでない様子。手持ちの文献では、雨の海の形成後に起きた火山放出物により覆われたものである、との説明がなされています([The Geology of Multi-Ring Impact Basins] Spudis 1993 pp141)。例えば「月の科学 月探査の歴史とその将来」Spudis 2000 pp46 pp118 も参照のこと。