Jupiter retrograde

木星の逆行

2013年、年末、ふたご座において逆行し始めた木星

δ(デルタ)星ワサト付近にある明るい星が木星

画面は左がおおむね東

ワサトと比較すると木星が東から西へ逆行していく様子が分かるでしょう

*なお11月23日と12月21日の画像には月が入り込んでいます

 

 古代、中世と同様の天体観測を実際にやってみたらどうなるか? ということもかねて、2013年の秋から、直角定規を用いた、肉眼による惑星と恒星の角度の測定。および記録をつけています。そのノートを見る限り、11月13日まで木星は逆行しているようには見えません。13日から23日にかけて、動き出したようにも見えますが、逆行しているのか、にわかには分からないところ。12月1日の時点で、逆行していることがはっきりしてきます。

 これは逆行を始めた木星の動きが最初はゆっくりしていたこと、肉眼ではそれがなかなか分からないこと、記録自体が数日置き、あるいは1週間以上間が開いていることなどが原因であるようです。また、直角定規を用いた肉眼の観測だと、どうやら10分の1度程度(つまり数分ほど)の誤差が出てくることも原因でしょう。

 直角定規を使った肉眼による観測とは、三角法を使います。そして当然、誤差が出てきます。記録とそこから算出される角度を列挙すると以下の通り

10月31日 ポルックスと木星は520:65 7度8分

11月08日 ポルックスと木星は520:65 7度8分

11月13日 ポルックスと木星は520:64 7度1分

11月23日 ポルックスと木星は520:68 7度24分

11月30日 ポルックスと木星は520:67 7度21分

12月01日 ポルックスと木星は520:70 7度40分

12月07日 ポルックスと木星は520:72 7度53分

数値がわずかに上下していますが、これが誤差だとした場合、角度にして数分(つまり1度の10分の1)程度の誤差が出ていることが分かります。また、木星がそれなりに一定の速度で動いているとしたら、11月30日から12月1日までの動きが大きすぎるでしょう。これが誤差を含んでいるのだとしたら10分(つまり1度の6分の1)ぐらいの誤差が出ている証拠だとも言えそうです。

 誤差が出るのは当初、ふたご座のポルックスと木星、カストルと木星とが作るそれぞれの角度しか見ていなかったせいかもしれません。測る角度が大きくなると、当然、誤差も大きくなります。たぶん、木星の一番近くにあった星、ふたご座δ(デルタ)星ワサトとの角度を見ていれば、もっと早く、より正確に木星の逆行を確認できたかもしれません。

 とはいえ、木星とワサトが非常に接近した12月14日の時点において、直角定規と肉眼でこの二つの星の角度を測るのは、それはそれでかなり厳しいものがありました。

 この時、木星とワサト、そして観測している自分の眼が作る直角三角形は、底辺と高さの比が520:3。三角法のタンジェントで言うと値がおよそ0.0058。角度は3分の1度、つまり20分となります。二つの星は満月の幅の3分の2程度の角度にまで接近した、そう言えば分かりやすいでしょうか。ただ、以上で述べたように数分ほどの誤差が出てきうるので、これはまったく正確な値というわけではありません。近ければ角度は測りやすく誤差が小さくなるはずですが、さすがに限界があります。こうなるのは直角定規が小さいということも原因のひとつでしょう。自分が使用しているのは長い方の腕が500ミリ(余剰の分を入れれば520ミリ)の直角定規ですが、正確な観測をするにはこれではまだ小さいようです。

 *より正確な天体観測には、近代のようにレンズを使って拡大するか、あるいは中世的に肉眼しか用いないのであれば、メートルサイズの大きさで、かつ正確な機具が必要になるでしょう。古代や中世期の天体観測機具がやたらと大きい理由がここから納得できます。

 12月14日の時点では、木星とワサトの距離はおよそ1度6分まで離れました(もちろん、誤差がありますから、正確な値を知りたい人は望遠鏡で観測するなり、計算するなりしてください)。

 なお、12月14日の時点で1度程度だ、ということは、11月23日の時点では、木星はワサトより1度以上、東にあっただろう、ということが以上の写真から見て取れます。

 

 

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