Comet wirtanen

Comet 46P

ウィルタネン彗星 (46P)

 1948年、アメリカのカール・ウィルタネンによって発見された木星族の彗星です。発見時の周期は6・71年でしたが、その後、木星に接近したことによって軌道が変わり、現在は5・46年になっています。2018年はウィルタネン彗星が近日点を過ぎる際、地球を追い抜くようにかすめていく位置関係にあるので、肉眼彗星になることが予測、期待されています。

 

 

 

 2018年11月27日、22:30と23:30のウィルタネン彗星。望遠鏡の口径は30センチ。スケッチの円は70倍の視野を示します。左側の明るい星は、ろ座κ(カッパ)星。ウィルタネン彗星は中央視野の真ん中、そのやや右上に見えています。上が22:20のもの。その右下が23・:20の彗星の位置です。かなり速く移動していることが見て取れます。

 望遠鏡の視野なのでスケッチの方位は反転しており、左が西で、上が南、下が北。ウィルタネン彗星は北東へ移動しつつあり、ちょうど、ろ座からくじら座に入ったところです。スケッチの真ん中を通る横線を引くと、それがろ座とくじら座の境界線。

 2018年、地球をかすめるように移動するので肉眼彗星になることが期待されているウィルタネン彗星。しかし11月中は南天低い、ろ座にあって見えません。何度も観測を試みましたが市街地の光で照らされた、低く明るい大気を通して見ることはできませんでした。ようやく見れたのが以上のスケッチです。

 27日は快晴。空気の透明度もまあまあ。しかし南天低い空はあいかわらず明るく、21時になると月齢19の月が出てきてさらに明るい。それを反映して、スケッチは灰色の紙に描いています。使用した望遠鏡の口径は30センチ。しかし彗星は35・5倍では見えません。70倍にして、ようやく予報の場所にあるらしいことがわかります。観察していると見えたり見えなくなったりします。要するに空のわずかな透明度の変化にも影響を受けるぐらい見え方が微妙。本当に見えているのか? と半信半疑になりますが、時間を置いて観察すると動いているので、これがウィルタネン彗星で良いのでしょう。ネット上の予報位置や、撮影された画像などとも場所が一致します。

 

 11月29日 22:50のウィルタネン彗星。くじら座を移動中で、二重星h3551から1・4度ほど西を通過しています。赤経は二時間30分ぐらい、赤緯は南緯23度ぐらい。スケッチ上の小さな円の連なりは37・5倍の視野を示し、右下にあるのがh3551。h3551の拡大スケッチはスケッチ下方の大きな単円で、倍率は150倍。黄色っぽい星の脇に、灰色の伴星があることが分かります。

 スケッチ下左のやや大きめな円の連なりはウィルタネン彗星とその周辺の星を示し。倍率は75倍。スケッチ上37・5倍の視野左下を拡大したものです。ウィルタネン彗星はヌ(イ)の星の脇を左下(方位で言うと東北)へ移動しており、上から29日22:50の位置。24:00、そして30日の0:45の位置を示します。

 蛇足めいて付け加えると、恒星に割り当てたヌとかホは恒星の相対的な光度の違いをカタカナで示したものです。37・5倍の視野ではハ行からナ行で、70倍ではア行で示しています。このため37・5倍のホとヌは70倍ではアとイに当たります。

 

 11月30日と12月1日のウィルタネン彗星。スケッチ上半分の円の連なりは37・5倍の視野を示し、連なりの中央に見えているのが11月30日、21:30のウィルタネン彗星。ウィルタネン彗星がこの倍率で見えたのはこの日が初めて。そして連なりの下端に見えるのが12月1日、20:30のウィルタネン彗星。

視野の連なり上左に入れた青っぽい中抜け十字は11月29日におけるウィルタネン彗星の位置を示します(29日のスケッチを参考に描きこんだもの)。29日から1日まで、三日分の動きが分かります。また、連なりの上右にある星は、くじら座の二重星h3551。ちなみにこの37・5倍の視野の円一つがほぼ1度。

 左下の大きな視野は75倍の視野を示し、11月30日、21:45のウィルタネン彗星を描きこんだもの。そのさらに左下は22:15のウィルタネン彗星。30分の間に位置が変わっていることが見て取れます。その後、雲が多くなり観察は断念。盆地に流れ込んでくる西風のせいでもあるのか、ちょうど彗星のある位置に帯状に雲が湧いて動く。しばらくの晴れ間の後、再び帯状に雲が湧くことを繰り返した夜でした。

 スケッチ右下の大きな円は12月1日のウィルタネン彗星を75倍で描いたもの。時刻は20:35。雲が多くなり、これ以後観測は断念。

 

 12月2日のウィルタネン彗星。連なった円は37・5倍の視野を示し、スケッチ左上にウィルタネン彗星が見えています。時刻は20:30。彗星から右へいったところにある明るい星はエリダヌス座τ1星(τ1 Eridani)。

 スケッチ中央右の大きな円は70倍の視野を示し、真ん中にあるのが20:55のウィルタネン彗星。ちなみに連なった円の下端に見えているのはくじら座π星(π CETI)。本当は翌日3日も15分ばかし雲間から彗星を見る機会があったのですが、間違った位置を探してしまったので彗星を見つけられず。スケッチに描くこともできず残念。

 

 列島を雲が覆い、天気の悪い日が連続。間を置いて12月7日 19:25のウィルタネン彗星。連なった円は37・5倍の視野を示し、連なりの中央付近に彗星が見えています。彗星の右上に並ぶ三つの星はエリダヌス座ρ星。ρ星は1、2、3まであります。スケッチ左上の明るい星はエリダヌス座η星(η Eridani)

 スケッチの大きな円は70倍の視野で、19:35と20:55における彗星を描いています。時間あたりの彗星の動く速度が速くなっていることが分かります。

 

 12月9日と10日のウィルタネン彗星。連なった円は37・5倍の視野。この視野の左上に見えているのが9日の彗星で、時刻は22:50。9日は日本海側からやってくる雲の切れ間から15分程度彗星を見ることができました。その時に周囲の星との位置関係をスケッチ。翌10日はよく晴れたので、周辺の星をさらにスケッチ、そこに改めて9日の彗星を描きこんだもの。9日の彗星から少し右に行ったところにある明るい星はくじら座94番星(94 Ceti)。ここから左はエリダヌス座。右側はくじら座の領域です。

 翌10日。の彗星はくじら座に入り、連なった円の右にいます。時刻は20:20と21:15。

 画面中央下の大きな円は70倍の視野。10日の彗星を拡大して描いたもので、時刻は20:00と21:10。周囲に目立つ微星があることもあって、15分、30分と覗いていると、彗星の位置変化がはっきり分かります。

 

 12月13日のウィルタネン彗星。スケッチ下の連なった小さな円は25倍の視野を示し、左上に1:20の彗星、右下に19:40の彗星が描かれています。連なった円の左下にある明るい二星は、おうし座ξ星(ξ Tauri)と、おうし座ο星(ο Tauri)。

 スケッチ上の連なった大きな円は50倍の視野で、1:15におけるおうし座ο星とウィルタネン彗星の位置を示します。スケッチ中央右にある大きな単独の円は19:45におけるウィルタネン彗星を50倍の視野でのぞいた様子。

 12日から見始めたものの、日本海側からみぞれと雪が吹き込んでくるあいにくの空模様。それでも雲間からわずかに覗くことができて、位置を確認。時刻は日付が変わって13日の1:15。ウィルタネン彗星はおうし座に入り、おうし座ο星の東、およそ1・5度を移動中。ちなみにおうし座ο星よりも左がくじら座、右側がおうし座です。ちぎれ雲と雪が舞い飛ぶ天気なので、観測には小回りのきく口径125ミリの望遠鏡を使用。このため、これまで口径300ミリでとったスケッチの視野が37・5倍、70倍だったのに対し、視野が25倍、50倍になっています。

 朝と昼が過ぎて夕方に観測をするも、それまで快晴だったのにまたもや雲が湧いてくる。それでもわずかに晴れ間が広がり、その隙に位置を確認。最初の観測から18時間後の19:40までの間に、ウィルタネン彗星は視野二つ分、およそ3度の角度を移動。

 

 15日のウィルタネン彗星。最初にスケッチした星の様子を再度確認したいことなどから、仕上げとアップは12月の27日。この時、ウィルタネン彗星の位置は、赤経がおよそ3時52分。赤緯がおよそ北緯18度30分。この近辺には番号やアルファベットを振られた星がありません。スケッチ中央を左右に連なって並ぶ小さな円は25倍の視野を示し、彗星は右下にあります。ちなみにこの視野の左端は赤経およそ3時30分、赤緯およそ北緯17度に該当します。

 スケッチ右上の単体の円は50倍の視野で22:20のウィルタネン彗星を描いたもの。スケッチ左下の円も50倍の視野で、15日22:43における彗星の位置と、日付変わって16日1:30における彗星の位置を示します。

 

 12月16日、おうし座プレアデス星団の近くを移動するウィルタネン彗星。昼間はよく晴れていたけども、予報では18:00以降は曇り。腹が減ってもはスケッチできないので、夕食の後19:00近くになって見始めたら予報通り、というか途端に曇り出しました。それでも雲が途切れたり、しばらく晴れ間が広がったのでスケッチ自体は可能。ただし、プレアデス星団ごと描こうとするのはかなり無理があったので、2枚スケッチして、それをまとめて清書。

 曇りの合間を縫って観測するので小回りの効く口径125ミリの望遠鏡を使用。連なった小さな円は25倍の視野を示します。スケッチ下にあるのがプレアデス星団。方位は左下斜めが西で、彗星はプレアデスのほぼ東、およそ4度の位置を移動中。時刻は19:05。翌日17日の結果を踏まえると、彗星は画面ほぼ真横右へ移動しています。連なった25倍視野の一番右、画面中央右端にあるのは、おうし座36番星(36 Tauri)。

 スケッチ上の大きな円の連なりは50倍の視野で、18:55の時点におけるウィルタネン彗星の拡大。

 

 12月17日のウィルタネン彗星。連日、昼間は晴れているけど夜になると急に曇りだす。西から雲が湧いてきて東にいくと消える。山を越えて盆地に入ってきた気流が冷えるか、あるいは高度が上がって雲ができるのか。理由はよく分からないけども、とにかく雲が湧く。そこで早めに観察開始。スケッチ左の大きな円の連なりは50倍の視野を示し、左にあるのが17:55の時点におけるウィルタネン彗星の位置。この時点では空は快晴。

 彗星の位置を確認したので、前日、16日のスケッチの清書を兼ねて、プレアデス星団や、前日に彗星があった近辺の星を観察。しかしこの後、空が急に曇りだす。18:55における彗星の位置を確認した後(17:55と位置が近過ぎるので同じ円内には描けず、画面左下の円に記録)スケッチは中断。夕食へ。

 雲に切れ間ができるのを確認して、再び観測するも、この雲、街の西から湧いて、東で消える雲だった。だからどんどん西から東へ雲が移動するものの、頭上の雲自体はずっとそのまま、そのくせ西の地平と東の空は晴れている。そんな状況。それでも上空の気流の変化なのか、空気の配置が変わるのか、20:30以後、一時、雲が切れ切れになり、比較的観察できる状態に。そうして描いたのが20:35における彗星の位置(50倍の視野)。17:55からの2時間40分の間におよそ0・33度を移動。

 その後でスケッチしたのが画面下方の小さな円の連なり。これは25倍の視野を示し、左の星が前日16日のスケッチでも描いた、おうし座36番星(36 Tauri)。そして右側が21:05におけるウィルタネン彗星の位置と、おうし座44番星(44 Tauri)。前日のスケッチと合わせて考えるとウィルタネン彗星は26時間でおよそ4・3度を移動。これ、先ほど示した2時間40分の間に0・33度移動、という話と微妙に整合しません。さて、この誤差は一体?

 

 18日のウィルタネン彗星。相変わらず夜になると雲が湧き出す天気。それでも19:00前後晴れ間が一時広がり、描いたのがこれ。使用口径は125ミリ。連なった小さな円は25倍の視野で、右に18:50の彗星、21:35の彗星、さらには小雨が降る夜半すぎに晴れ間が少し広がった隙の19日、2:15の彗星。時間間隔と移動速度は

 18:50から21:35が2時間45分で0・5度

 21:35から 2:15が4時間40分で0・6度

 これ移動速度がかなり変化していて、遅くなってる。スケッチの誤差や計算違いでないなら、彗星が地球から離れるに従って見かけの速度が遅くなった、ということでしょうか? それにしては遅くなり具合が大きすぎるような。あるいは地球の自転で見かけ上、移動速度が大きく変化して見えるとか、そういうことでしょうか? 25倍視野の左には前日17日の彗星の位置を十字線で示しています。

 なお、25倍視野における比較的明るい星は、中央下がおうし座Ψ(プシー)星。中央左やや下が41番星。その上が44番星。そしてスケッチ中央やや右上がφ(ファイ)星。この星は画面左隣に暗い星が並ぶ二重星です。そしてスケッチ右下の大きな円の連なりは50倍の視野を示します。描かれているのは19:00と21:55の彗星の位置。画面下には19:35と20:25における彗星の位置を、近隣にあった星と比較して描いています。

 

 12月20から21日、ぎょしゃ座1番星(1 Aurigae)の近くを移動するウィルタネン彗星。画面中央の連なった円は25倍の視野を示しますが、一部の視野円が他よりさ小さいのは途中で300ミリの望遠鏡を使ったから。最初は視野の広い125ミリを使っていたけども、ほぼ満月の月がアルデバラン付近にあって視野が明るく、彗星が見えない。そこで途中から300ミリ、37・5倍でスケッチしたので、小さな視野円が混ざっています。

 連なった円の中央にあるのが、ぎょしゃ座1番星(1 Aurigae)。その左上が、ぎょしゃ座2番星(2 Aurigae)。この二つの星と正三角形を作る位置に暗い星がありますが、これは変光星ペルセウス座AW星(AW Persei)。ここはちょうどペルセウス座とぎょしゃ座の境界線で、角になっているところです。日付を書き込み忘れているけども、12月20日、20:10。ウィルタネン彗星はペルセウス座AW星の左下、視野4分の3程度、角度にして1.3度程度のところを移動中。スケッチ左上の大きな円は50倍...と書いているけど70倍の視野で観察した彗星を示し、20:40から21:00までの40分でおよそ0・09度を移動。

 その後、彗星は画面右へ移動。に日付が変わった21日、3:45にはペルセウス座AW星の右下、角度にしてだいたい0・64度の位置に。変則的ですが、この時の彗星を50倍で拡大したのがスケッチ右下の大きな円(3:55)です。ちなみにこの円に隠されるように描かれた背景の大きな円は彗星を見ている途中で印象的な赤い星を見つけたので、それを70倍で描いたもの。見た目は炭素星のように見えますが、実際にそうかは未確認。

 こうして20日から21日へ日付が変わって夜が明けて、日没。そうして21日の夜20:15の彗星が、画面中央左。この21日夜の彗星の動きを70倍で描いたのが、スケッチ左上の様子。1時間35分で0・13度移動。

 

 12月22日から23日、ぎょしゃ座η(エータ)星とζ(ゼータ)星の近くから、カペラへ移動していくウィルタネン彗星。画面下右に描いた小さな円の連なりは25倍の視野で、η星、ζ星からε(イプシロン)星、そして、ぎょしゃ座のα(アルファ)星カペラまでの様子。満月がふたご座にあり、125ミリの25倍視野で彗星は見えません。とはいえ、22日20:25の位置と23日深夜23:50における位置を示しています。この間に角度にして3度あまりを彗星は移動

 スケッチ下左、連なった中くらいの円は37・5倍の視野を示し、η星、ζ星と22日20:25における彗星の位置を示します。そしてその上、スケッチ上部で連なる大きな円は70倍の視野で見たウィルタネン彗星とその様子。22日20:10、21:55、23:55、そして日付が変わった23日2:00における彗星の位置が示されています。

 そして画面上右にある円は23日の深夜23:50におけるウィルタネン彗星の位置。視野は70倍。雨が降る夜、ふと外に出たら少し晴れ間。慌ててスケッチしたので、COMET 46 P WIRTANENとか2018.12.23.2:00とか、そんな書き込み下になる感じで描いています。彗星はカペラからおよそ1度のあたりを移動中。

 

 日付変わって12月24日、0:16のウィルタネン彗星。雲が出たり消えたりする中、ふと見たら晴れ間が広がっていたのでスケッチしたもの。視野は37・5倍。ウィルタネン彗星は角度にしておよそ0・9度の位置にあります。予報にあったカペラ最接近時の角度と同じなので、彗星がカペラに一番近づいたのはこの頃らしい。月が明るいので使用口径は125ミリ。

 

 24日23:00から24:00のウィルタネン彗星。カペラへの最接近から24時間後、カペラから2・36度の位置を移動中。下の円は125ミリ25倍の視野。この視野はカペラと彗星周辺の星の位置を示しただけで、彗星は描かれていません。125ミリでは見えなかった。上の大きな円の連なりは300ミリで37・5倍の視野。上の視野内では23:00、23:30、24:00における彗星を描いています。1時間の間に彗星は0・15度を移動。

 

 25日のウィルタネン彗星。ぎょしゃ座Ο星(Ο Aurigae)に近づき、かすめようとしているところ。右の連なった円は37・5倍の視野を示します。視野内中央の明るい星がΟ(オミクロン)星。彗星の位置は20:35と23:00。

 スケッチ左下の大きな円は70倍の視野。20:45と23:10の位置を示します。1時間30分の間に0・23度移動。

 

 年が変わって2019年1月1日のウィルタネン彗星。年末は天気が悪くてほぼ一週間ぶりの観測。月はなくなり空の条件が良いものの、かなり暗くなっていて、小回りの効く125ミリではもう見えにくい状態。気候も寒く、これをもって観測終了の予定。ウィルタネン彗星はやまねこ座に入っていて、やまねこ座15番星(15 Lyncis)の近くを移動中。15番星はOΣ159星でもあります。スケッチ上の連なった円は25倍の視野を示し、下の大きな円は50倍の視野を示します。彗星は1:35から2:40までの1時間で0・06度を移動。

 

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