Barnard's Star
全天で一番速く動く恒星 バーナード星
2017年6月20日 2:00のバーナード星
右の大きな円は50倍の視野を示し、その中央にある星が多分、バーナード星
バーナード星は固有運動(proper motion)が全天で一番大きな星として有名です。固有運動とは恒星が天球に対して示す見かけの動きのこと。恒星は常にその配置が変わらず、星座の形も不変であることから”恒なる星”、つまり恒星と呼びます。しかし実際にはごくゆっくり動いています。ただあまりにわずかな動きなので、非常に長い年月を経ないと動いていることが分かりません。でも中には例外的に動きが速い星もあって、望遠鏡で拡大すれば1年、あるいは数年で動いていることが確認できます。
そうした星々の中で一番速いのがこのバーナード星。その動きは角度にして年間に10.29秒。1年で10秒なら6年で60秒、つまり1分。6年の60倍=360年あれば60分、つまり角度にして1度動くことになります。
バーナード星の進行方向はほぼ北で、以上の画面では左となります。
バーナード星は太陽系の近くにある恒星で、その近さはプリキシマ・ケンタウリ、アルファ・ケンタウリに次いで3番目。距離はおよそ6光年。日本の本州では南天にあるプロキシマ・ケンタウリ、アルファ・ケンタウリを見ることが出来ないか、困難です。それを踏まえると、見ることができる星としては、バーナード星が一番近い恒星だとも言えるでしょう。
バーナード星があるのはへびつかい座。星座の巨人の右肩(向かって左)、それを作るβ(ベータ)星、そこから東およそ3度の位置にバーナード星があります。
画面左の連なった円は25倍の視野で、β星からバーナード星までの経路を示したもの。ちなみに25倍ではバーナード星を見ることはできませんでした。赤丸で囲った”ニ”の星が右円の”エ/ニ”の星になります。
バーナード星は赤色矮星で、光度は9.53等。太陽に比べると2500分の1の明るさしかありません。距離6光年と近いにも関わらず、目で見えない暗い星なのはそれが原因です。
ちなみにすぐ近くにまばらな散開星団IC4665が見えているので、それも描いています。