生命の樹とは何だろう?

 

 

 すべての生物には血縁関係があります。その関係はちょうど家系図のようなもので、枝分かれした図で表わすことができます。

 その図とはちょうど樹木のような形になります。

 さて、私達は生物には”グループがある”と直感的に認識します。グループとは植物とか、動物、シダとか鳥、爬虫類とかいったもののことです。グループという言葉を、類とかカテゴリーと言い換えてもかまいません。

 なぜ私達はこうした類やグループを認識できるのでしょうか?。それは自然界になんらかの構造/秩序があるからです。つまり類とは現実にある構造を人間が漠然と認識したものなのです。

 そして、私達が認識している構造とは系統(生命の樹=生物の血縁関係)です。系統とは、生物がひとつの祖先から進化し、枝分かれしてきた歴史でもあります。それをダーウィンは枝分かれした図で示し、生命の樹と呼びました(「種の起源」上下 岩波文庫 を参考のこと)。

例えば人間はA、B、C、Dの生き物が以下のような系統関係にあった場合、

________A

 |______B

   |____C

     |__D

 1:A、B、C、Dはひとつのグループである

 2:そのグループのなかでもC、DはAやBよりも近いグループである

と感じるというわけです。ようするに私達は生命の樹(=生物の血縁関係)をそれとしらずに眺めていて、ある部分を”植物”とか、また別の部分を”哺乳類”と呼んでいたわけです。

 もし、生物の関係がまったく無秩序だったら、私達は植物とか動物とか鳥なんて単語を思いつかなかったでしょう。構造がない無秩序な状態なんですから・・・。

 このように人間がいう、グループとか類というものは、生命の樹を反映したものなのです。

 ところが、いざ実際に生物の系統関係をながめたり、あるいはこのHPのコンテンツである”身近で見る生命の樹”を眺めると、混乱する人がいるかもしれません。なぜなら硬骨魚類(あるいは硬骨動物)に陸上脊椎動物が含まれていたり、爬虫類に鳥が含まれているからです。

 なぜこうした違和感がある結果が示されているのでしょうか?。

 実はこの問題はある意味では本末転倒です。なぜなら系統関係がなければ人間はグループを作ったり、あるいは分類などできません。

 ですが私達の脳には系統を再現するアルゴリズムなりプログラムなんて搭載されていません。

 ようするに私達が生物を分類できる原因は系統なのに、私達の脳は肝心の系統を再現する方法など持っていなくて、その代わりに別の何かを搭載しているわけです。

 このため、私達が系統を再現できる方法論で生命の樹を作り上げると、私達が思い描いていた分類とは異なるものが出来上がってしまいます。

 このことを以下の系統を見て考えてください。

_______長い長方形

 |_____長方形

  |____正方形

   |___八角形

    |__円

 この生命の樹の枝の末端には、長い長方形、長方形、正方形、八角形、円、がいます。

 ですが普通こういう生き物がいたら私達はそれぞれ四角形と多角形、円に分けて考えるでしょう。いわばこの分類は四角類、多角類、円類といったものでしょう。

 四角類(Quadrilaterals)=(長い長方形、長方形、正方形)

 多角類(Polygons)=(八角形、あるいは円)

 円類(Circles)=(円)

 ですがこれらの生物が以上のような系統であった場合、実際にはこのようにまとめなければ分類の背後にあった系統を正確に再現したことにはなりません。

 四角類

 =(長い長方形、長方形、正方形、八角形、円)

 多角類

 =(八角形、円)

 円類

 =(円)

 このようにこれらの生物たちが以上のような血縁関係にあった場合、私達は四角類に多角類を含まなければいけません。そして、四角類(Quadrilaterals)には”円”が含まれることにも注意してください。

 このように、私達の脳がつくり出す分類と系統を再現するアルゴリズムによって作り上げた生命の樹の間にはギャップが生じる時があります。

 

生命の樹のトップに戻る→