さて、恐竜という分野ほど科学以外の何かに荒らされている分野も少ないかも知れません。とはいえ、似たような誤解や事柄はどこにでもあるはずです。例えばその原因は、情報には興味があっても、科学にはまったく興味のない人がいるせいなのでしょう。あるいは、結果は知りたいが、どのようにしてその答えを導き出したのか、それを考えたり検討したりすることに興味がない人が多いからかもしれません。

 実際、情報を集め英語を読む一方で内容を理解していない人は山のようにいます。もちろん私もそういったひとりになるのでしょう。北村は読んだすべての論文を研究者ほど科学的、哲学的に理解できるわけではありません。

 しかしながら、情報を収集する、情報を暗記するということと、科学という哲学なり方法論、あるいは思想に基づいて考えることとはまったく別の動作です。

 

 暗記することと科学を混同している人はいませんか?。そうであれば少し考え直して下さい。

 最新知識の網羅=科学と考えている人はいませんか?。そうでしょうか?。有限の知識から考えることができる仮説は無限にあります。無限の仮説からあなたは一体どれを選ぶのですか?。

 例えば「科学の歴史(上下):岩波書店」を参考にしてください。でもこれちょっと古いのですよね^^;)。いずれ手頃な参考図書を紹介していきます。

 

     

 

 実際、以上に取り上げた誤解、勘違いの共通点には暗記したいのに出来ない、あるいは鵜のみにしてすぐに知識として使えない、という欲求不満が込められているように思えます。実際のところ、科学の仮説は暗記したり、あるいは鵜のみにしたりするものではありません。妥当であるのか、あるいはそうではないのか?、それを絶えず検証するものです。

 

 さて、暗記というと、ちょっと次ぎの事柄を考えることは無駄ではないでしょう。

 先に上げたように、私達は”すべてのもの”に名前をつけます。なぜなら私達人間は認識したものに名前をつけて意思疎通をする生物だからです。

 そのために分類学(Taxonomy)というものがあります。これは生物学で作業をするため、生物のグループを認識して、名前をつけて、皆が利用できるように学術雑誌に記載するというものです(参考として[The Complete Dinosauria ] Indiana University Press pp92~106)。

 当然、皆が利用でき、報告内容を読んでチェックする人がいる雑誌に報告されなければいけません(あるいはそれが非常に望ましい)。

 しかしそうしたルールを無視して、研究者でもない人間が学術雑誌ではないどこか別のメディア上で”新種の記載をした”と主張するケースがあります。もちろん、”研究者でなければ新種の報告はできない”、そんなわけではないようですが、記載された内容は”論文を読んだ人たちが使える”ようなレベルでなければいけないでしょう。そうした条件が満たされていないとそれは使い物になりません。

 

 ようするに皆が使えないような研究をしてどうするの?、ということですね。ついでにいうと、そんな役に立たない研究を引用してどうするの?、という問いかけもできます。

 

     

 

 またもや恐竜を例にしましょう。あなたが例えば、そう、ジョージ・オルシェフスキーという人物の提案した種名を使うのならば、あなたは彼の記載論文と、それが掲載された査読のある学術雑誌(<科学雑誌ではないですよ、言っておきますけど)を引用しなければいけないでしょう。

 そうしたわけで、ヒリヒリでは恐竜に関しては、

nature

Science

Journal of Vertebrate Paleontology

Journal of Paleontology

Canadian Journal of Earth Science

American Museum Novitates

 などで記載された、あるいは

[The Dinosauria ]: University of California Press

で扱われている”種名”だけを扱っていることをお断りしておきます。

 

 なお、分類学では生物を整理するために”分類階級”というものを作りました。これは今の恐竜学や系統学ではほとんど不要のものです。理由は「生物系統学」東京大学出版会、を参考にしてください。

 古い恐竜図鑑には目とか鋼とかいう分類階級が使われていますが、これはあなたやあなたのお子さんにおそらくは有害です。最近の図鑑でもっともよいものは

「New Wide 学研の図鑑 恐竜 」2000年発行

 ではないでしょうか。この図鑑の監修者は国立科学博物館の真鍋研究官で、分類階級は用いていません。 

 以下は北村の勝手な見解ですが、魚類のように系統を反映してなおかつ分類階級にマッチさせた体系を作り続けてきた分野と違い、恐竜学における分類階級はいまや無意味です。もしあなたが北村のこの見解に疑問をもったら近年の恐竜の記載論文を見て下さい。人にもよりますが、分類階級は使われない傾向にあります。それがなぜなのか?、それをすでに上げた文献、あるいは「種の起原 上下 岩波文庫 青912-4,5 」を読んでよく考えてみてください。

 恐竜について書かれた本のなかで、亜目とか下目とかいう言葉がやたら使われていたら警戒した方がよいでしょう。